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【H】トランプ流の「選挙は盗まれた!」は日本では左派のお家芸となるのか?—兵庫県知事選斎藤元彦再選後の情報アップデート

斎藤元彦の再選で終わった兵庫県知事選だが、選挙後もこの話題はいまだ収束の気配を見せない。このブログでもかなり話題にしてきたことなので、本記事では現時点(12/6)の状況について情報のアップデートを行うことにしたい。

第1節は本記事の要約、第2節はこれまで書いた記事を振り返る。そして第3節では、今の状況を「マスメディアの反応」「公職選挙法違反疑惑」「公用PCの中身と疑惑の真相のゆくえ」という三つの点でアップデートする。


1、本記事の要約

(第2節)2024年をネット選挙の新時代と位置づける私は、ネットの風を掴んだ石丸・高市・玉木の流れで兵庫県知事選に注目し始めた。私は、斎藤知事の善悪を現時点では判断せず、斎藤知事のもとで百条委員会や第三者委員会の調査を通じて客観的な結論をまずは得るべきという「中間派」の立場を基本的にはとりつつ、斎藤擁護派の情報や考察は大いに参考にする、いわば「斎藤擁護派よりの中間派」の立場をとってきた。

(第2節)その立場から、これまで選挙日前日には斎藤知事の善悪に関する論点整理と自分なりの事実認定を行い、斎藤知事を「白よりのグレー」と判断して、斎藤知事が勝利すべきことを主張した。その後、斎藤知事の勝利を受けて、マスメディアが自らの文書問題報道が結果的に偏向報道だったことを「反省」して信頼の回復を努めるべきことを論じた。

(第3節)だが、私の期待する「反省」はほとんどなく、マスメディアの大勢は放送法や公選法を盾にした「言い訳」や、ネットのデマや誹謗中傷で斎藤知事が勝利したとでも言わんばかりの「自己正当化」に走った。この欲望は、マスメディアが斎藤知事の公選法違反疑惑に飛びついたことに見て取れるが、斎藤知事の勝利がお金の力による「金権選挙」の結果でないことは明らかであるから、公選法違反の成立の可能性は低いだろう。

(第3節)公選法違反疑惑が盛り上がる中、反対側からは立花孝志によって公用PCの中身が暴露された。NHK党関係者の丸山穂高氏の詳細な解説と見立てによれば、局長の不倫相手は一人であると見られ、複数人との不同意性交の可能性は低そうである。ただ、私としては、この点は事実認定していなかったため、特に立場に変更を加えるつもりはない。文書問題をめぐる疑惑は、公用PCの中身から分かる疑惑の背景事情、あるいはパワハラアンケートや局長の妻からのメールなどの背後にほの見える百条委員会にまつわる政治的な力の蠢きに移りつつある。今後の更なる解明が待たれるところである。

2、これまでの3本の記事の振り返り

兵庫県知事選というテーマで、私はこれまでに以下の3本の記事を書いてきた。

1本目は、兵庫県知事選を巡る特異な状況を説明し、選挙前日の時点で、斎藤前知事が「白か黒か」を私なりに論点整理し事実認定をしたうえで、「白よりのグレー」と判定し、斎藤元彦が勝利すべきことを論じた記事である。

2本目は、斎藤元彦再選を受けて、この結果をマスメディアの偏向報道に対してネットのカウンター的な情報や考察が勝利したものと評価したうえで、マスメディアに自らの偏向報道の検証を通じた信頼回復を試みるよう呼びかけた記事である。そのように呼びかけた理由は、マスメディアが信頼されなければ、社会的に共有される事実が消滅し、各々がネット上で見たい事実を見るというような状況になり、有意義な政治的議論が成り立たちにくくなることにある。

また記事内では選挙期間中に参考になったネット上の情報のソースも紹介した。

3本目は、石丸現象から高市・玉木・斎藤とつづいたネット発のブームに、ネット選挙の新時代を見る日本政治観察期のシリーズの最終章として、斎藤現象を扱った記事である。ここでは斎藤知事に対するスタンスを反斎藤派・斎藤擁護派・中間派と区別した上で、私自身を「斎藤擁護派よりの中間派」として規定した。

3、斎藤元彦再選後の展開

斎藤元彦再選後の展開については、三つに分けて情報をアップデートしたい。すなわち、1、マスメディアの反応、2、公選法違反問題、3、公用PCの中身と「疑惑」の真相のゆくえ、である。

3-1、マスメディアの反応―「反省」「言い訳」「自己正当化」

斎藤元彦再選はマスメディアの完敗ともいうべき結果だった。選挙前に斎藤元彦の悪玉イメージを散々広めたのに、その後のネットでのカウンター情報や考察の広がりに(質的かつ)量的に敗北したからである。

私は「斎藤擁護派よりの中間派」であり、斎藤悪玉・善玉のいずれのイメージが正しいかは断定せず、疑惑について結論が出ていない以上は斎藤知事が再選されて、第三者委員会や百条委員会での疑惑の真相究明が完遂されるべきという立場を基本としつつも、反斎藤派のイメージを解体した斎藤擁護派のカウンター情報や考察に多くの示唆を得ている。

私はネット上の情報にはデマや誹謗中傷もあったが、マスメディア以上に事実に迫るものもあり、その情報は「質的」にも、マスメディアを凌駕していたと考えている。

この立場から見ると、選挙後のマスメディアの望ましい反応は、自らの文書問題報道が結果として偏っていたことを批判的に検証し、現時点での情報や考察を総合して、その時点で正しいと考えられることを公平中立に報道しなおすことだった。

そうしてマスメディアが信頼を回復することは、社会的に共有された事実や意見の存在が維持されるために必須だと思われる。ネットやSNSではどうしても見たい事実や意見を見るということになって、社会の分断が加速し、民主主義に不可欠な生産的な議論が難しくなっていくからである。

しかるに実際のマスメディアの反応はどうだったのか。極一部には斎藤知事と局長の死を安易に結びつけた文書問題報道の偏りへの「反省」があったが、大半のマスメディアは、マスメディアは放送法と公職選挙法に縛られて公正中立な当たり障りのない報道しかできないこと、裏どりができていない内容は報道できないことを「言い訳」がましく述べることに終始していた。

さらに悪いのは、一部のマスメディアで見られた論調で、上記の「言い訳」を、公正中立で事実に基づくマスメディアと、デマと誹謗中傷の渦巻くネット・SNSとの二項対立へと高め、斎藤勝利はネットで広まったデマ・誹謗中傷・陰謀論の結果に他ならず、兵庫県民はネットのデマに騙されて斎藤知事を再選させたとでも言わんばかりのものである。

それはデマまみれのネットに対して、テレビはあくまで真実を伝えているという「自己正当化」に他ならない。TBSの報道特集などは、この方向性とみなしてよいだろう。

以上をまとめれば、マスメディアの態度には「反省」「言い訳」「自己正当化」の三つがあったということになる。

「自己正当化」まで来ると、もはや呆れてものが言えないというレベルなのだが、おそらくマスメディアの本音というか重心はこちら側にあったのだろう。

そのことはマスメディアが斎藤知事の公選法疑惑に喜んで飛びついたことに見て取れる。斎藤知事の当選は不正であって欲しいという願望が見え見えなのである。

3-2、公選法違反疑惑―「選挙は盗まれた!」は日本では左派のお家芸になるのか

このようにマスメディアの選挙結果への反応がさまざま出てくる中で降って湧いたように現れたのが、斎藤陣営の公職選挙法違反疑惑であった。

PR会社である株式会社merchuの折田楓社長が、noteで斎藤陣営の選挙運動の舞台裏を明かしたのだが、そのなかで自らが斎藤陣営の選挙運動の広報全般を取り仕切り、仕事としてSNS運用などを請け負ったかのような内容を記載していたのである。

ここに斎藤知事の再選は不正であると自己正当化したいマスメディアや、選挙に敗れた稲村氏を支援していた左派陣営の一部が飛びつき、公職選挙法違反の可能性があると大騒ぎをすることになる。

その後、斎藤知事側が折田氏側への支払いは71万5千円のみで、その内訳はポスターデザイン等、公職選挙法で認められた支出にとどまり、SNS運用などはボランティアとしてやってもらったという主張を展開し、騒動は沈静化に向かいつつあるようにも見える。

疑惑の内容を整理しよう。反斎藤派の主張によれば、選挙運動の一部としてのSNS運用にお金を払っていれば「運動員買収」お金を払っていなければ、merchuという会社が無料で業務を実行したことになり「寄付」となるのだという。

ただし、「寄付」が違法となるのは、その会社が行政に対して、額がとりわけ大きかったり利益率がとくに高かったりする「特別の利益」を得る関係にある場合であり、折田氏の兵庫県との関係(3年で15万円)は、それには当てはまらないだろう。

一方の「買収」はどうか。斎藤陣営は請求書を示して内訳を説明し、支払いはポスター代など公職選挙法に認められる範囲に限られていると主張している。SNS運用まで有償で依頼したのではないというわけだ。

これに対して、この件で刑事告発をした郷原信郎氏は、「請求書や契約書の費目が絶対ではない。そんなことを言ったら、実質的には有償で選挙運動をさせて運動員買収をしながら、請求書や契約書の費目を適法なものにすることで、不正をなかったことにできてしまうことになる。実質が重要だ」というような主張を展開している。

確かにその通りだが、実質の判断をどうするかといえば、金額でするしかないのではないだろうか。71万5千円は、請求書の内訳として書かれていたポスター等のデザイン費用として、妥当な金額であるようだし、また実際にそのようなデザイン等の業務は行われている。とすると、選挙運動期間中のSNS運用に充てられた費用は71万5千円のごく一部となるが、それは安すぎるだろう。そこはボランティアでやったとみなす方が自然ではないだろうか。

そもそも、公職選挙法の買収等の条文の趣旨は、お金持ちだけが選挙に勝てるというような、いわば投入したお金の量で勝利する「金権選挙」を防止することにあるのだから、71万5千円程度の少額の支出では違反とするには当たらないだろう。よって、これ以上の多額の支払いが実はあったとか、支払いの約束があったとかが今後明らかにならない限り、公職選挙法違反は考えにくいだろう。斎藤知事の勝利は「金の力」ではないこと、このことは私には明らかであるように思われる。

現段階でやたらと騒ぎ立てる左派には、以下のように皮肉をいいたくなる。「あなた方はトランプを嫌っていそうですが、いまの振る舞いは不気味なほどトランプに似ています。「選挙は盗まれた!」は日本では左派のお家芸になるのでしょうか」と。

3-3、公用PCの中身と「疑惑」の真相のゆくえ

反斎藤派が公職選挙法疑惑で盛り上がるというか息を吹き返す最中に、反対側から投下された材料が、立花孝志による局長の公用PCの中身の暴露である。

これはNHK党関係者の一人である丸山穂高のYouTubeにおいて最も詳細かつフラットな仕方で紹介されている。私は今回初めて丸山氏が話すのをじっくり聞いたが、元官僚らしいスマートさと慎重さが感じられる話ぶりで、好感した。酒によって問題発言などを多数してきたようだが、元来は優秀な方なのだろうと思う。

さて、私は公用PCの中身については、百条委員会秘密会での片山前副知事の証言を基本としていた。百条委員会での偽証は罪に問われる以上、信頼度が高いと考えるからだ。

その証言では、公用PC内には、第一に、クーデターを相談するメール、また中傷ビラの配布などクーデター計画を一部実行してきたことが分かる記録、第二に、斎藤政権の人事批判やクーデター後の人事案など局長の動機を示す資料、第三に十年にも及ぶ複数の女性との不倫日記があるとされていた。

今回の公用PCの内容の暴露で修正が必要となったのは最後の「複数人との不倫」という点だ。丸山氏によれば、公用PCの現に見られる部分においては不倫日記の相手は一人であり、その内容を詳しく閲覧した丸山氏の肌感覚では、その一人との不倫日記の内容は極めて純愛的で複数の女性と関係があるようには見えないのだという。

もちろん、他にも資料が出てくる可能性はゼロではないにせよ、現時点では、立花孝志の言っていた、十年で十人との不倫があり、この数の多さは人事権を背景にした不同意性交の可能性を示唆するといった話は、結果的にデマだった可能性が高いということになるだろう。立花氏自身もこの点は認め始めているようだ。

片山氏の百条委員会の証言をもう一度聞き直してみると、「当人の不倫日記です。過去十年に渡ります複数の女性との…」で奥谷委員長に遮られる。丸山氏は、これに関して、「複数の」は「女性」ではなく、「…」の部分で発されたかもしれない「日記」に掛かるのではないかとの解釈を提示している。現状ではそう考えるのが妥当だろう。

私はこれまでこの片山氏の「複数の女性」という言葉に依拠して、立花孝志の「複数人(7人?10人?)との不倫」論、そしてその数の多さから推測される「不同意性交」論にも、自分の事実認定には含めなかったものの、一理あるのではないかと思っていた。片山副知事が最後まで喋り切っていたら、ひょっとするとこの誤解と立花の論の信憑性は生じなかったかもしれない。情報の隠蔽が逆効果となった興味深い一例と言えるだろう。しばしば陰謀論は情報の隠蔽から生じると言われるのも故なきことではない。

それにしても、奥谷委員長が片山氏の不倫日記証言を遮り、その後の囲み取材でもNHK・朝日・読売の記者たちが片山氏の発言を封殺・糾弾した理由はなんなのだろうか。マスメディアの普段の報道姿勢に照らしてみれば、不倫はプライバシーなどというのは建前に過ぎないことは明らかだろう。他方で、局長の死の理由に関する対抗的な仮説を封殺することで、局長の死を斎藤知事のパワハラと直結させたいという偏向報道的な意図があったという説については、「そこまで記者クラブは酷いのだろうか?」「そこまで記者クラブは共謀しているのだろうか?」とも感じてしまう。

一つ考えられることとしては、以下のようなことがある。これも丸山氏によればであるが、局長は非常に筆まめで、電話で誰それがこう言った、飲み会で誰それがこう言ったといったことを膨大に書き留めているらしい。局長は基本的に井戸派・反斎藤派の立場から記述しているらしく、「ある幹部が斎藤知事は在日との噂があると言った」等の多くの人の反斎藤的言説が記録されているようである。これが公開されると非常に気まずいだろう。長い井戸政権で育った幹部の多くが改革派の斎藤に対してアンチの立場を取り、その層にかなりの程度まで反斎藤的な言動が広がっていたのではないか。これが公開されないことは、県職員の上層部のかなりの人々の共通利益なのではないか。そのことが公開されないような圧力がかかっている背景にあるのではないか。

憶測はこれくらいにしておこう。いずれにしても、最初の記事に書いた私なりの事実認定は、片山発言に基づく不倫相手の複数性以外の点では変更の必要はないし、斎藤知事は現時点では文書問題に端を発する疑惑に関して「白よりのグレー」だとの結論も変える必要はないように思う。

あえて斎藤知事に問題を見出すとするなら、このようなクーデター紛いの事件を引き起こすに至った背景に推定できる、人心掌握や根回しの不十分さや、問題が大きくなっていく過程で、それを収拾できなかった対応能力や説明能力の不十分さということになろう。

ただ、この騒動全体がどれほど斎藤知事の能力不足に帰せられるべきか、相手方(井戸前知事派・職員OB・マスメディア…)の偏った立場に帰せられるべきかは、今後の事実解明の結果に依存するだろう。人心掌握や根回しにしたって万能ではなく、最初から敵対的な人には通用しないし、ハナから納得する気のない人にはどんな説明能力も無力なのである。

現在、この一連の「疑惑」の解明に向けた独自の分析を行っている人々のうち、有力なのが「賢者の人事」というYouTubeチャンネルである。パワハラアンケートや、局長の妻からのメールなどについて独自の分析を進めており、教えられることが多い。

公用PCの中身・パワハラアンケート・局長の妻のメールや局長の陳述書等を通じて、文書問題騒動の背後にあるかもしれない様々な政治的な力の蠢きに関して、いろいろな観点から今後も解明が進むことを期待したい。


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