「2匹のおぞましく恐ろしいブタ」!
2022年2月21日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナ東部の領土を「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」として国家承認し、さらにロシア軍をその地域に派遣すると発表した。プーチンは、このロシア軍隊派遣は、親ロシア派住民を守るための「平和維持活動」だと宣言した。
2月22日、このプーチンの発表をテレビで見たアメリカ合衆国前大統領のドナルド・トランプ氏は、「これは天才だ(This is genius)」と叫び、プーチンがその地域の「独立」を承認したことについて、「それは実にすばらしい(Oh, that’s wonderful)」「なんて頭がいいんだ(How smart is that?)」と賞賛し、さらに「彼は平和維持活動を行い、平和維持者になる(he’s gonna go in and be a peacekeeper)」とプーチンを褒め讃えている。
『ワシントン・ポスト』に掲載されたトランプの実際の発言は、次のとおりである。
“I went in yesterday and there was a television screen, and I said, ‘This is genius,’ ” Trump continued. “Putin declares a big portion of the Ukraine — of Ukraine. Putin declares it as independent. Oh, that’s wonderful. So, Putin is now saying, ‘It’s independent,’ a large section of Ukraine. I said, ‘How smart is that?’ And he’s gonna go in and be a peacekeeper. That’s strongest peace force … We could use that on our southern border.”
プーチンとトランプの本質
さて、一般に国際法では、ある国の軍隊が他国の承認を得ることなく他国の領土に入ることを「侵略」と定義する。もちろんプーチンの「平和維持活動」という美辞麗句は、相手国や世界を欺くためのフェイクにすぎない。
2月24日午前4時、そのことを十分認識しているプーチン大統領は「ウクライナの領土を占領する計画はない」と演説で述べた。ところが、その直後、ウクライナの東部・北部・南部から一斉にロシア軍の戦闘機と戦車による侵攻を開始し、ウクライナ国境警備隊やウクライナ軍と戦闘状態になった。
この戦闘は今も継続し、ウクライナとロシアの軍人ばかりでなく、一般市民にも多くの犠牲者が出ている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、全土に戒厳令を敷いて、18歳から60歳の男性を徴兵し、国民に「徹底抗戦」を呼びかけた。彼は、国際社会にも大きな支援を求めている。
先進7カ国(アメリカ合衆国、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、日本、フランス)をはじめとする世界各国は、ロシアによるウクライナへの全面侵攻を「国際法に違反する侵略」と認定し、プーチンを非難している。
プーチンを賞賛したトランプに対して、呆れ果てたという識者も多い。ジョー・バイデン大統領の副補佐官を務めるアンドリュー・ベイツは、プーチンとトランプのことを、最大限の侮辱を込めて「2匹のおぞましく恐ろしいブタ(Two nauseating, fearful pigs)」と表現している。
ベイツによれば、この2匹のブタの行動は「彼ら自身の弱さと不安に支配」されていて、彼らはアメリカが基盤とするもの(つまり「民主主義」)を嫌っている。さらにベイツは、この2匹は「ブタの鼻を一緒に擦り合わせながら、罪のない人々が命を失うことを祝っている」とまで言う。
"Two nauseating, fearful pigs who hate what America stands for and whose every action is driven by their their [sic] own weakness and insecurity, rubbing their snouts together and celebrating as innocent people lose their lives," Bates tweeted.
ロシア国民にプーチンを引き摺り下ろしてほしい
なぜバイデン政権のスポークスマンの立場にいるベイツが、ここまで最大限の侮辱を込めてプーチンとトランプを非難したのか、よく考えてみる必要があるだろう。
プーチンとトランプに共通するものは何か? 「武力」や「権力」や「金」で他者を押さえつける威圧的な態度、弱者の「見解」も「人生」も「命」も尊重しない思いあがった姿勢、結果的に「勝ちさえすればよい」・「儲りさえすればよい」・「得さえすればよい」という行き過ぎた功利主義……。
ベイツは、このような思想で結び付いている2匹の「おぞましく恐ろしいブタ」が、人類の命運を左右する権力を持つべきではないと強く主張しているわけである。
人類の歴史を振り返ると明白にわかることは、多くの独裁者が、実際には「彼ら自身の弱さと不安に支配」され、巨大な権力を掌握すればするほど認知バイアスに強く左右されるようになり、最終的に、とても理性的とは思えないバカげた行動を取って、多くの犠牲者を生み出してしまうことだ。
アメリカ合衆国の国民がトランプを見限ったように、ロシアの国民もプーチンを見限って、権力の座から引き摺り下ろしてほしい。そうでなければ、この美しい人類の世界が「おぞましく恐ろしいブタ」によって、滅亡させられてしまうかもしれない!
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