シェア
ノベル学園祭
2024年6月23日 09:21
「……っ、何でも金で解決しようとすんなよ……っ!」「カナくんっ!」 俺には高級すぎる家の白いドアを乱雑に開け、ここは日本か? と疑いたくなるほどの豪邸を飛び出した。 俺は年齢だけ高校生の叶冬(かなと)。そして俺の足元で呑気に食いモンを食ってるのが野良猫のジジ。 なぁんて、宅配業を営む魔女風に言ったって、今の状況はなんにも変わらない。「はぁ……。どうすっかな。これから」 数週
2024年6月22日 17:32
まだカーテンを閉めていないリビングの窓から、家の前の道路を走っていく車の光が差し込んで、私たちを包み込む。こっちは暗い気持ちになっているというのに全く理不尽なものだ。「ごめんなさい、私が弱かったせいで」私は、彼の肩を掴む手の力を無意識に強めながらさっき水族館であったことをまた思い出す。彼よりも生きた年数が多いのだから、私が守るべき立場なのに、彼になにかあったら、私が助けてあげられるって思って
2024年6月22日 15:57
夕日の光が差す車内に流れる、ラジオのゆったりとしたテンポが、私の不安を和らげる。彼が心配そうな表情で、助手席の私を覗き込んだ。「少しは、落ち着いたかな……?」 私はこくりと頷いた。それでも怖かった。急に声をかけられた不安から解放されたけれど、声が出ない。忘れようとしても、休憩スペースでの出来事がフラッシュバックする。「怖かった……!」 私は、声を何とか絞り出すので精いっぱいだった。その後
2024年6月22日 14:33
ただただ怖かった。彼氏よりも背の高い男の人に腕を掴まれるなんて、急な出来事だったから。彼に手を掴まれて逃げて少し、やっと喉がきつく震え始めた。寒いはずなのに、缶よりも温かいその手と頭の先から喉までの一直線が酷い風邪の様だった。 「ここまで来れば大丈夫でしょ」 息切れと恐怖であがった呼吸から、視界の端も耳もぼやけている。彼のその言葉も私には遠かった。 「大丈夫?」 何も返事出来なかった。彼
2024年6月22日 13:25
やはりイルカショーは水族館の中でも人気のイベントなだけあって、前を歩いている人や後ろから聞こえる話し声はどれも、イルカショーを楽しみにしているものだった。「イルカショーってなんだかんだ言ってはじめてかも。俺」「うそ~!」「修学旅行で一回来たことあるんだけど、人がいっぱいで入れなかったんだよ」「あー、確かに。じゃあ今日は私とたくさん思い出作ろっ!」 私は彼の手を引いて屋外の入り口に入り、
2024年6月22日 11:26
「こっちこっち!」静かな水族館の中、キャッキャッと子供たちが騒ぐのと同じくらいのテンションで私は彼の手を引く。今日は、久しぶりのデートでしかも私の好きな水族館に来ることになった。何度も来ているが彼とくるたびにわくわくするし、テンションが上がる。「分かったから、落ち着けって」彼にたしなめられると、やっと私は落ち着き、「えへへ、ごめん、君とくるとなんかテンション上がっちゃって」てへへと頬をか