Natural Dahliaを立ち上げる
3年間従事した「地域おこし協力隊」
いよいよ任期終了にあたり、個人事業主として無肥料・無農薬でのダリア生産者になることを決めました。
ダリア園でメインの作業員をやることも考えましたが、地域活性化について学ぶうちに、町の将来を考えるなら就職するよりも「個人事業主」として独立し、
「小鹿野町で起業する人が増えてるみたいよ!」
という話題や流れができた方がいいなという考えに至りました。
それに実際に商売をやってみないと、見えないことも沢山あるかなと。
正直、記事を書いている2021年1月時点では町に対しての愛着はありません。
ですが、こんな私を受け入れ、チャレンジする際に背中を押し続けてくれた人がいる町です。
「このまま衰退させたくない」という想いがあります。
「チャレンジ半分、恩返し半分。」
誰かのために頑張る、でも「自己犠牲」にならない範囲で。
このバランスが自分にはポジティブとモチベーションを保てる範囲っぽい。
屋号は色々悩みましたが「Natural Dahlia」というのが栽培するダリアのイメージとしても分かりやすいかなと考えた次第です。
Q.プロフィールを教えて下さい。
神奈川県大和市で生まれ、育ちました。
中学、高校と陸上部に在籍し、大学には陸上部が無かったので、選択科目の体育の授業を1年生で履修後は残り3年間アシスタントとして授業に参加してました。
ちなみに大学の学部は社会科学部でした。
当時映画などで使われるGCに感激し、そこに使われるパソコンにも興味を持ったのですが、自宅のパソコンはWindowsMEでブルーバック頻発。
就職前にWindowsXPとPCをパーツ一式で購入し、組み上げるもトラブルでうまくいかず。
そんなとき相談に行ったお店の店員さんが神のようにドンピシャで原因を言い当ててくれ、感動してその会社に就職を決意。
「私のようにパソコンというブラックBOXのトラブルで、困っている人が大勢いるに違いない!私が勉強してサポートできれば役に立てるかも」という思いで入社。
入社後は、パソコン・周辺機器、スマートフォンの販売、インターネットの契約、設定や使い方のサポートを行いながら12年間務めさせていただきました。
そんな折、たまたまテレビで「今地方が高齢化で元気がない」というニュースを見て、私がその場所に入っていったら何かできるんじゃないかと何故か思い立ち、移住先を探す際に「地域おこし協力隊」という制度を知り、いくつかの募集自治体を回り埼玉県秩父郡小鹿野町に決めました。
農業経験なし、「ダリア」という花もどんな花か知らない、好きなのは手間のかからない多肉植物(笑)
振り返ってみて、先頭に立ってガンガンというよりは、物事が円滑に穏便に進むようにサポートをする方が性に合っているのではと思います。
矢面に立つときは立つのですが、基本は平和が一番。
そんな私がなぜ無肥料・無農薬でダリアを栽培することになったのかは、以下の記事をご参照ください。
Q.なぜ無肥料・無農薬のダリア生産者で独立しようと思ったのですか?
いくつか理由がありますが、一番大きな理由は「無肥料でダリアが咲いちゃった!」これです。
ダリア園の作業支援1年目、ダリアは肥料喰いの花と聞かされていました。
実際に園地では牛糞堆肥に化成肥料、ぼかし肥料をやり、途中で追肥も入れています。
肥料をあげればあげるだけ、いい花が咲く。
当たり前に思われるかもしれませんが、農業を一度もかじっていない私、鵜呑みにしませんでした。
ダリア園のオフシーズンに入り、ダリアについて学び始めました。
それこそ窒素・リン酸・カリウムってどんな役割?というところから。
そして図書館で「不耕起栽培」の本をたまたま手に取って読みました。
ただ書物だけでは足りないので、土づくりの勉強をしに福島県塙町に地域おこし協力隊を頼りに伺い、そこで「ダリアは岩場でも咲く花」という衝撃発言を聞くことになります。
福島県塙町は竹パウダーを使ったバイケミ農法を実践していて、「はなわのダリア」はブランドとしても評価が高く、役場の方の知識量が半端じゃないです。
また、塙町に伺ったちょうどその日、「自然栽培」で有名な石川県羽咋市のJAはくいの担当者と連絡が取れ、後日自然栽培実践地の圃場の視察に伺います。
羽咋市を選んだのは、地域おこしって何ぞやと勉強するなかで知った高野誠鮮さんの著書「ローマ法王に米を食べさせた男」その中に木村秋則さんの自然栽培を羽咋市で取り入れていると書いてあったから。
あくまでも概論ではありましたが、羽咋式自然栽培のお話と生産者の畑にも連れて行っていただき、可能性を感じました。
「生産者の話は聞かないけど、無肥料・無農薬でダリアを栽培できそう!もし失敗してもダリアは無理だったと分かる!」とやってみることにしました。
「○○で当たり前」という固定概念がないのが、かえって良かったかもしれません。
そしてもしダリアが咲かなかったら、無肥料・無農薬でダリアを栽培の可能性を閉じていました。
二つ目の理由は競争です。
ダリア園の会長からの勧めで日本ダリア会の勉強会に参加させていただいたのですが、秋田の生産者の耕作面積や畑が平らである事、出荷体制が整っていることなど、初めてのダリア生産者の畑を回ってみてカルチャーショック。
塙町をはじめ、全国にはブランド力がある生産地がいくつもあります。
慣行栽培でやる場合、その生産地のダリアと戦うわけですから、規模・出荷体制・品質ではどう考えても勝てません。
勉強を兼ねて無肥料・無農薬で栽培を始めましたが、やってる人がいないからこそ可能性もあるかなと考えるようになりました。
そこで栽培2年目は作付け前に営業をしてみることに。
おかげ様で喜んでくださる方がいることが分かり、無肥料・無農薬で栽培することに対して徐々に覚悟が固まってきました。
三つ目の理由は百姓という幅の広さです。
自然栽培きっかけで知り合った「自然栽培で地球温暖化と闘うエネルギー管理士」の石野さんは自身のホームページ「百姓ひろばオズランド」でこんな事を書いています。
百姓とは「百の姓を持つ=百の仕事」という意味。
作物、土壌、気象、虫や草や動物のこと、いろんなことを知ってこそ一人前の百姓!とよく言われますが、まさにスーパーマン!
百姓=農家と思い込んでいた私には目からウロコ!!!
「あ、そうか、百姓を仕事にすればダリアだけに固執しなくていいんだ。野菜を作って販売しても、山の手入れをしても、町内のIT人材の育成をしても。」
地域おこし協力隊二年目に実際に会いに行きました。
1シーズン無肥料・無農薬でダリアの栽培を終えた後だったので、学んだことが実際にどういうことだったのか理解が1段階深まったうえで圃場を見させていただくと、見えるものも多かったです。
何かに偏らずバランスと調和のとれた畑は、居心地の良いものですね。
(これはとても大事なイメージです)
そして「実際食べていけるの?」というのも聞いてみたかったこと。
石野さんは米と野菜の自然栽培で自分の食べる分は確保していて、さらに生産物の販売とアルバイトでやっていけるとのこと。
8時間がっつり拘束されるとダリア栽培はほぼ無理、かといってダリア栽培だけでもすぐには無理ですが、畑仕事とそれ以外の仕事の時間をきちっと分けてしまえば、ある程度の収入を確保しつつ何とかなりそう。
まさに百姓だからこそできる仕事のスタイルです。
そう気づけたのは、生産者スタートするうえで非常にメンタル面の後押しになりました。
あと小鹿野町両神地区が意外とダリア栽培には適していたというのはあります。
ダリア生育の適温は概ね15℃~25℃と言われていますが、秩父エリアは寒暖差が大きく、夏の暑い時期でも夜には涼しくなり適正温度に入ります。
そして地質ですが日本シームレス地質図V2で見てみると海成層の礫岩。
つまり泥や砂よりも大きい礫(粒径2㎜以上の砕屑物)を多く含む堆積岩が海底で形成された地質ということで、粒の大きい石がゴロゴロして水はけのよい土地であることが推測されます。
実際に令和台風19号による大雨でもダリア園は水没せず、ダリアも無事だったことを考えると水はけは良好。
ダリア原産地の雨季は東京よりも降雨量があるみたいですし、水はけのよさは重要です。
Q.ダリアが好きなんですね。
気が付いたらいつの間にか(笑)
花の咲き方が沢山あって、えっこれもダリアなの?というのもあります。
また色の豊富さもすごいですね。
単色のバリエーションだけでなく、2色でも花弁の先端や裏、絞りなど色の出方が違ったり、光が当たるとラメ加工されたようにキラキラと見えたり、夏場と秋で色が異なるのもあります。
花の大きさもピンポン玉から顔の大きさを超えるものまで幅広く、
「あなたのオススメはどれですか?」という質問にはいつも困ります(笑)
どの花も素敵なので。
Q.無肥料・無農薬栽培のダリアの何が良いのですか?
実践2年の経験ですが、花の大きさは慣行栽培と比べ一回り小さくなります。
日持ちに関しては慣行栽培と同程度です。
でも考えてみて欲しいのですが、肥料喰いといわれたダリアが無肥料で、大地に根を張り花を咲かせているんです。
これってすごいことだと思いませんか?
休耕農地をお借りしてますが3年は耕作されていない土地、肥料の成分は完全に抜けています。
堆肥も入れていませんから、土中にあるのは自然の循環でつくられるもののみ。
ちなみに水もやりません。
決して恵まれた条件の元ではありませんが、それでも自らの力で何とかベストを尽くして花を咲かせ、球根を残す。
そのことに思いを馳せながら愛でていただけると、ダリアも喜ぶと思います。
花を咲かせている姿を見ると私も勇気を貰えますし、送った相手が笑顔になってくれるのがやっぱり嬉しいですね。
また完全無農薬なので、肌に触れても安全ですし花を食べることもできます。(エディブルフラワーとして)
実際に花冠を作ってかぶってもらったり、町内の旅館でお風呂に浮かべてもらったり、料理に添えてもらったりもしました。
農薬がかかっているからと諦めていた利用法には、実現できる可能性がまだまだあると思います。
Q.苦労はありますか?
無肥料・無農薬栽培とは言っても、ほったらかし栽培ではありません。
ダリアがある程度大きくなるまでは、周囲の植物に負けないように草を刈り取ったり、芽摘みや葉摘みなどの手入れは必要です。
あえて草刈りと書いたのは、根こそぎ抜くと根が張っていた空間が埋まり土が固くなるため、根を残して鎌で刈り取っているからです。(刈り取った草は畝の上に被せてマルチにするか、畝間に敷いて土に還元します。)
ダリアは50㎝間隔で植えていますが、草刈り機ではダリアも一緒に刈り取ってしまいますし、跳ねた石がダリアに当たれば傷にもなります。
電動系の道具は使えないので、手仕事になります。
また重機は土を踏み固めるので使いません。
それと虫です。
昨年は暖冬の影響からかカメムシの大量発生でした。
写真は控えますが、まるで住居のよう何匹も並んでいたり(汗)
粘着性のある虫取り紙をぶら下げてみましたが、引っかかったのは蛾だけ・・・。
捕まえて都度退治するのはメンタル的に大変なので、ペットボトルに入れて捕殺しています。
飛び去ることもあるんですが、一度落下してから逃げる修正があるようで、ペットボトルの口を下から当てるとコロリと中に入ってくれます。
放っておくと栄養を吸われてしまい、健全に育たないなどの影響がある為、気が抜けません。
他にもネキリムシやウリハムシ、テントウムシダマシや蝶や蛾の幼虫も。
消毒の力は偉大だなと思いますね(笑)
決して使いませんが、あまりにも大変なので。
忘れてならないのが鳥獣害対策です。
全国どこでも被害の声が聞こえるようになりましたね。
栽培1年目、鹿とカモシカ出現で半壊しました。
新芽を食べられ、球根が引きずり出され、畝は足跡だらけ。
山に食料が少ないと花まで食べることも分かりました。
興味のある方向けにダリア園の動画のリンクはこちら。
3回におよんだ対策と被害のいたちごっこの末、畑の周りは鹿よけのネットを張りました。
その後は一度突破されるも被害がほぼ無いため、有効な手段だと考えています。
栽培エリアには猿がいないのが救いです。
Q.どこで買えますか?
・球根:直売所店頭/インターネット販売
・切り花:直接お問い合わせいただいて発送/インターネット販売/事前予約の上、畑で直接
4月に入るとお世話になっていたダリア園の球根が「道の駅 両神温泉薬師の湯の農林産物直売所」に並びます。
それ以降、5月の中旬くらいまでの間、土日に限り栽培相談をしながら、球根を店頭販売をする予定です。(オンライン栽培相談も実施中!)
新型コロナの影響や遠方で来られない方向けには、インターネット販売をご利用ください。(令和4年度の球根販売はオンラインのみです。)
BASE:https://naturald.base.shop
Twitter:https://twitter.com/NaturalDahlia
Instagram:https://www.instagram.com/naturaldahlia/
facebook:https://www.facebook.com/NaturalDahlia
オンライン栽培相談:https://coubic.com/natural-dahlia/855937
ホームページ開設:https://www.natural-dahlia.space/
Q.興味を持ってくださった方にお伝えしたいことがあれば。
ダリアの現状ですが、お花屋さんで販売されている種類はごく僅かです。
生産者も花屋にも持続のためには利益が必要ですから、日持ちの良いものや輸送の際にダメージの出にくいもの、人気のある品種にどうしても集中します。
それは商売の原則としては正しいことでもあるわけですが、皆さんの目に触れていないダリアはもっともっと沢山あります。
全国各地にダリア園がありますので、ぜひお近くのダリア園に足を運び、色々なダリアを知ってくれると嬉しいです。
私のお借りしている畑は両神山麓花の郷ダリア園に向かう途中にあります。
注文が入れば切り花として納品しているため、ときにスカスカで全然見ごたえは無いかもしれませんが、「本当に無肥料で育つの?」と疑っている方はその目でお確かめ頂ければ。
また、開花がダリア次第なので「2週間後、何を、何本」みたいなご要望は受けかねますが、「何色と何色がが何本くらい用意できそう」という情報は都度発信します。
お届けするダリアが、笑顔や、勇気や、やりたかったことの実現に繋がれば幸いです。