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131.【読書と私】㉟佐々涼子/『エンド・オブ・ライフ』を年の始めに読み、人生のこれからについて考えた
『エンド・オブ・ライフ』いわた書店の一万円選書のリストでよくみかける本。わたしの選書リストにも入ってくるかなと思いましたが、なくて、でも気になってはいました。地域の図書館の年始の企画で2冊セットの「お楽しみ袋」(中身は見えています)があり、そこにこの本があったので借りてみました。
借りる以前にネットであれこれ見ていたら、佐々涼子さんは56歳で昨年2024年9月に亡くなられていたのを知りました。読む時はついつい、この時点で佐々さんは体調に何か感じることあったのだろうか、その後の自分の運命は思いも依らぬことだったろうかと、考えつつでした。
◇◇◇
佐々涼子さんの主な著書
2012『エンジェルフライト国際霊柩送還士』
2014
『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』
2020『エンド・オブ・ライフ』
2022『ボーダー 移民と難民』
2023『夜明けを待つ』
こうして並べて書いてみたのは、『エンド・オブ・ライフ』は主に、2013-2014年、佐々さんの母親の在宅介護(父親が担っている)と、2018-2019年取材の中で知り合った訪問看護師のこと、またその訪問看護先で出会った患者さん達の話からなっている。佐々さん自身の心の状態について書かれている部分もあり、その仕事の過程にも思いを馳せたくなったから。
私が印象的だったのは、
「身体が変わったら、自分自身も変わってしまったんですよ」
というのと、 スピリチュアル・ペイン に関した話。痛みについては、身体的な痛み、精神的な痛み、社会的な痛み、そしてスピリチュアル・ペイン(「魂の痛み」「霊的な痛み」)があるということ。その痛みに関して、身体の痛みを取ると人間はスピリチュアルな痛みに耐えられないという考えもあるということ。
父が母との昔の話をした際に、「仲がよかったんだね」と返す佐々さんに
「世の中の誰もがそうじゃない。でも、お前はそれが当然だと思うから社会の見方が甘い」
これは、どこか私にも通じるところがあるようで、うっ!となったところ。
そして、献身的に介護を続けた佐々さんの父の、妻が亡くなった後の過ごし方。驚きとともに、心境を考えてそういうのもありかと思ったこと。
著書中出てくる方々の“エンド・オブ・ライフ”については、その瞬間に対して拍手を送る美しい部分もあるし、凄惨な部分もあった。多分、大変な部分については、個別には書けず抽象的に留まってしまったようにも思う。在宅介護の是非というのが一つテーマにあったように思うが、さり気なく、病院の杜撰(と成らざるを得ない?)な対応や、鎮静剤の使用について、安楽死に関わるような部分も触れられている。ジャーナリストとしてでも柔らかく触れられてるような。
ノンフィクションではあるのだけど、著者は何かをまっすぐに訴える、伝える目的のために冷静に距離をとって眺めている感じではなく、その舞台の一員として溶け込んでいる。著者自身も迷いの中にいる。そんなありのままが伝わる作品だった。ノンフィクションとしては(私そんなに読んでいるわけでないですが)異色な感じもする。
だからだろうか、その前後の作品含めて、佐々涼子さんの“エンド・オブ・ライフ”はどうだったのだろうと、著書を読んで追悼したい気がしてきた。
そして、自分の行く末も考える。その時の体の状態がどうなのかわからないけど、どうやって心穏やかに迎えられるか、何歳まで働くにもよるのだが、仕事するのはあと……年くらいかと最近考えることがあった。そのことも含めて、身の回りの整理や、仕事の中でまとめていきたいことなど、あらためて考えたい。それはゆっくりでもいいから、噛みしめて行っていいのかなとも思った。
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余談ですが、図書館の「お楽しみ袋」のもう一冊は、山口恵以子さんの『いつでも母と 自宅でママを看取るまで』でした。こちらも在宅介護の看取りの話ですが、癌と痴呆という病気の違いもあるし、親子像も含めて、どこか佐々さんとは真逆でもあるところのある本で、この二冊が組み合わされて入っていたのはよかったです。こちらは、また別記事で書きたいと思います。