学会遠征編ショート版 第43話 チェックアウト
ホテルからの旅立ち
CRAZY、奴はもう日本行きの飛行機に乗ってしまったことだろう。
2024年3月19日火曜日、時刻は午前9時。今日は少しゆっくり起きた。僕は大学の学会出張でバンコクまで来ているが、取り決めの都合上、学会開催日の翌日の便に乗らないといけない。そこで今日は飛行機に乗るのだが、帰りの時間は現地時刻で22:05の他は朝一番の便しか直行便はなかった。僕はその夜の便で帰るのだが、CRAZYはなぜか朝に帰るようである。一緒に予約する段階では同じく夜で予約していたはずなのに、なんとも不思議な現象が起きてしまったようだ。ただ、残された僕にはまだ時間的な猶予がある。ラスト1日思いっきり楽しもう!!
とはいうものの、昨日に引き続きお金が無いという課題はクリアしていない。結局この問題は、電車1線路分歩くことによって解決することにした。マップで調べたら7kmあるそうだが、今のハイな自分にとっては大した問題ではない。昨日は10km歩いた。大阪を、和歌山を、果てには徳島のよくわからん場所を、ただひたすらに遊牧民のように歩き続けた自分にとっては、7kmなど徒歩圏内である。そこの心配は全然なかった。むしろ、歩きながら街並みを楽しめるのでうれしいまである。デッドラインは空港に21時。この時間には荷物検査も出国の手続きも全て済ませておきたい。18時に空港につけば夕ご飯も余裕を持っていただけるだろう。タイムリミットは9時間。そう考えれば全然余裕だった。とはいえ空港まで歩くとなると40kmもあるのでさすがに苦行である。スーツケースもあるのでそんなに身軽ではないのだ。
まずは準備運動だ。名残惜しいので、チェックアウト前にもう一度ホテルのプールとジムを見てきた。見るだけ、とはいっても記念に25kgのダンベルを両手に1つずつもって前や後などに動かしてみた。それだけなのでそんなに時間はかからなかったが、スタッフからすれば利用時間が短すぎると驚いたようだったが、最高の笑顔で僕をジムから見送ってくれた。さすが微笑みの国。あのスタッフの笑顔は今まで生きてきた中で最高の笑顔だった。次来るときはみっちりワークアウトしたい。
部屋に戻って荷物の支度をした。こういうところでよく忘れ物をするのが自分なので、冷蔵庫に、ロッカーに、ベッドの下。部屋の中をくまなく確認し、忘れ物なしで脱出できた。ちなみに、例の500mlのビンは2本をスーツケースに、もうあと2本をリュックに入れて、飲みながら歩く作戦を実行することにした。キャップもコルク栓もないのでどうしても開けたビンは片手で持ち歩くことになるが、それでも喉が渇くよりは全然いい。水2Lとビン4本分でけっこう重くなったが、道半ばで干からびるより全然いい。飲み干したら適宜ごみ箱を見つけて便を捨てていけば問題ない。こうして熱帯の町を練り歩く冒険が再開されたのだ。
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