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心の内が分かれば分かるほどミステリーが深まる女の横顔〜ザンドラ・ヒュラー〜

ACTORS PROFILE Vol. 16

ザンドラ・ヒュラー
「落下の解剖学」
「関心領域」


長後の都知事が選ぶ代表作
「ありがとう、トニ・エルドマン」

1978年東ドイツ生まれ。心の内が分かれば分かるほどミステリーが深まる女の横顔。

 ドイツ人作家のサンドラはフランスの雪山にある山荘で家族と暮らしていた。ある日、夫が亡くなっているのを発見するも、警察から殺人の容疑で逮捕されてしまう。唯一の証人は盲目の息子のみ。彼女は何とかして無罪を勝ち取ろうとする。

「落下の解剖学」より。

 ▲ナチスドイツのアウシュビッツ強制収容所の司令官の妻ヘドウィグは、収容所そばの豪邸に暮らしている。美しい庭園を造ったり、子供たちと過ごして、幸せな毎日を送ろうとする。

「関心領域」より。

 ▲今年のカンヌ国際映画祭でパルムドール、グランプリにそれぞれ輝いた二つの作品に出演した一人の俳優がいた。ザンドラ・ヒュラーだ。2006年の「レクイエム~ミカエラの肖像」で精神病に苦しむミカエラを演じ、ベルリン国際映画祭で女優賞に選ばれたこともある実力派である。彼女の出演作の中で特に有名な作品は、オスカー外国語映画賞候補にも挙がった「ありがとう、トニ・エルドマン」だろう。トニ・エルドマンなる奇妙な人物に扮して、悪戯を仕掛ける変わり者の父親を持つ娘イネスを演じた。働きづめだった彼女の前に現れた、疎遠だった父親との交流は繊細で鋭くて、ユニークで、心温まるものだった。彼女がホイットニー・ヒューストンの"The Greatest Love of All"を歌い上げる様は鳥肌そのものだ。

「ありがとう、トニ・エルドマン」より。変わり者な父に振り回される。

スーパーマーケットを舞台にしたドラマ「希望の灯り」では、ヒュラーは主人公が心を寄せる店員マリオンを演じた。心に何か抱えたミステリアスな人物を演じさせると味わい深さが倍増するのがヒュラーの魅力なのだ。

 ▲今年のカンヌ国際映画祭を騒がせた2作品もそれに当てはまる。「落下の解剖学」では無実を主張しながらも、観る者を惑わせる絶妙なパフォーマンスをみせる。ある意味、裁判は舞台を思わせる要素があり、演技というものを考えさせられる。演技の中の演技。その凄みが立体感を持って立ち上がる。また「関心領域」はナチスドイツの将校一家を一定距離を置きながら観察する。残酷な人物の心情を観る者に考えさせる。ミステリアスであればあるほど、迫力のあるビュラーだけにその振舞いに見入る。

華麗であればあるほど残酷

 ▲今年のカンヌでは女優賞を逃したが、間違いなく二つの作品でビュラーは見事な存在感をみせた。それには誰も異議はないだろう。


ザンドラ・ヒュラーの関連動画

・ザンドラ・ヒュラーが参加したロサンゼルス・タイムス紙のラウンドテーブル女優編

・ザンドラ・ヒュラーのインタビュー

・「ありがとう、トニ・エルドマン」より。歌唱シーン。


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