コネなしポスドク就活記② 研究室探し編
僕は国内で博士号を取得し、現在は北欧でポスドクをしています。
コネなしで海外ポスドクの就活をした経験を記録に残しておこうと思います。
あくまで僕の体験であり、n=1での話であるということを記憶にとどめながら見ていただけると幸いです。また、僕の経験はヨーロッパ、とくに北欧に限ります。さらに言うと、生命科学系のウェット系の経験談です。他の地域、分野のことは詳しくないのであしからず。
前回の記事ではポスドクを目指した経緯について紹介しました。ぜひご覧ください。
学術分野の絞り込み
僕はポスドク先の学術分野の絞り込みと研究室探しを同時並行で行いました。博士3年の9月~11月頃です。
なぜこの時期だったかというと、何を最終的に知りたいか、根本的な問いは何かきちんと言語化できたのがこの時期だったからです。
ここら辺は正直なんとな~くでいいと思います。ラボによっては○○の分野やってるのにPIは案外××の分野も経験あるんか、とか、結構メンバー学際的だなあ、みたいなことは起きうるので。自分がそこで何ができるか、ビビッとくる所に行けばいいんだと思います。
僕の場合は細胞の形や大きさと組織再生に興味があり、基礎研究をしたかったので、生化学/分子生物学/細胞生物学に強いラボかつ発生生物学のバックグラウンドがしっかりしている環境、というのを軸に考えました。
ラボ探し
探す媒体について
コネなしでダイレクトに行く場合、ほぼネットかなと思います。
ネットサーフィン気分で探すといいです。
僕が見ていたのは
・X (Twitter)
・所属学会のウェブサイト (結構海外ポスドク募集してる)
・Nature等ジャーナルの人員募集ページ
・学術論文
などです。
面白そうなラボをまとめる
次に、これらの媒体をくまなく見ていって、少しでも面白いものをエクセルにまとめました。
PIの名前、研究機関、国、何で知ったかを記録しました。
そして、これが結構重要だったんですが、ここ最近募集をした/しているかをマークしました。ヨーロッパのラボは、Twitterでオープンポジションをアピールするところが多いです。そして、それは他の研究者により拡散されます。論文やネット上で見つけたラボをTwitterや他の媒体とリンクさせることで、こういった空きポジションがあるラボとの遭遇確率が上がります。
こういった募集はすぐに締め切られてしまうので運要素が強いですが、数か月余裕を見ておくと、気になってたラボが募集をかけることもあります。
僕の場合は、マークしていた論文の共著者のラボが気になり注意していたところ、12月になってオープンポジションを公開したのをTwitterで見かけたパターンです。公募していたのはバイオマテリアル分野に経験のある人だったので、自分は対象じゃないなと思いながらも、自分の強みを明かにしたうえで空きポジションはないかと連絡した感じです。
他でアプライしたのも、今思えば割と論文から入ったパターンが多かったです。レビューアーティクルの著者、かっこいいと思った論文のPIなどで、公募をラボのウェブサイトなどネット上で公開していた所にメールしました。
(2024/9 追記)
オープンポジションが用意できてそこそこの規模があるラボは潤沢な予算がある可能性が高いです。ヨーロッパだとERCグラントや国ごとのCoEに採択されているようなケースです。大学やその他のメディアでプレスリリースされてるので見つけられるかも。そのような場合、公募枠以外にもボスの意向によっては枠がある可能性もあります。積極的にメールを送ってみればいいと思います。
ラボのウェブサイトを見る (重要)
ここいいなあ、公募出してるのか~みたいなことが分かったら、とりあえずラボのウェブサイトに行ってみて下さい。研究内容や業績だけでなく、サイトの作りからも得られる情報はあります。
巷でよく言うのは、ビッグラボかどうか、フェローシップ取得済みのポスドクが多いか、メンバーによって業績に偏りがないか、ラボ出身者のその後のキャリアはどうか、などです。もちろん、ここら辺はきちんと確認するべきです。
僕はこれらに加えて、以下を必ず確認しました。
・ラボの集合写真がある
・集合写真が笑顔 or ふざけている or 活気ありそう
・各メンバーの自己紹介と連絡先が書かれている
・専属のラボマネージャーが最低1人はいる
なんだそんなこと、と言われそうですが、前情報なしでインタビューに突撃しようとしているコネなし民にとってこれらは非常に重要な情報です。
まずもってウェブサイトを作りこんでいるということは、ラボがオープンな環境かつ、そこにリソースを割く人的 and/or 金銭的余裕があるという事でしょう。それに、和気あいあいとしていて活気がある雰囲気であれば、インタビューもしやすいですし、雇われたときにスムーズに適応できるはず (少なくとも疎外感はなさそう) です。
日本と比べ、ヨーロッパのラボではルーティンワークの実験やコラボレーションはラボマネージャー、コラボレーター、経験のあるポスドクが分担してシステマティックに行う傾向が高いです。また、そのような運営をしているラボは少人数であっても組織的に成熟しており、人間関係や事務的なことに煩わされる心配が少ないです。ラボの前情報が業績くらいしかないからこそ、こういった情報は価値があると思います。
僕が最終的にインタビューをしたラボは上記をすべて満たしている、将来的に自分の研究がどう発展していくかイメージできる、将来を考えるとわくわくする、という所でした。また、実際に訪問してもみんなオープンで素晴らしい研究環境でした。
最後に
コネなしはリスクありと言いますが、いろんなラボのウェブサイト、論文などをくまなくじっくりと見る機会が多いのは良いことです。また、自分がそこで働いた際にどんな仕事ができるか、成長できるかを自分視点で考えながら、納得できるラボを探すのもありなんじゃないでしょうか。
ぜひ、わくわく感を楽しみながらやってみて下さい。
ではまた。Moi moi!
<2024年8月25日追記>
ポスドク就活記①~⑥を公開しました。ぜひ他の記事もご覧ください。
研究室選びから現地での面接に至るまでの体験をシェアしています。
何かの参考になりますと幸いです。