シチリア旅行記② 古代史オタクによる街歩きツアー後編
先日、出張で南イタリアに行ってきました。仕事の日程を消化した後、シチリア島を2日間観光してきました。
今回はシチリア第ニの都市、カターニアでの思い出を綴ります。
前回分も読んでくださると嬉しいです。
旅先で知り合った方に古代遺跡巡りに付き合ってもらった思い出を書いています。
2世紀頃の古代ローマ時代の面影を辿れるカターニアの街並み。
古代ローマ都市はいくつかのテンプレがあるために、例え埋もれていたとしても発掘調査の知見をもとに机上で街並みを再現できることを前編で指摘しました。
今回は、それらの下調べをもとに訪れた場所の中から特に印象的だったスポットを紹介したいと思います。
印象的だった場所たち
フォルム (広場)
現代ヨーロッパの都市の中心には必ず広場があります。同じように、古代ローマ都市の中心地は広場でした。
この広場は古代ラテン語で"Foro"と呼ばれていました。
英語の"Forum (フォーラム)"は「討論の場」として使用される単語ですが、これは古代ローマの"Foro"に由来する単語です。
今でも、イタリアの首都ローマへ行けばローマのフォルム、すなわち"Foro Romano"が観光客を出迎えてくれます。
残念ながらカターニアのフォルムはアパートの一角になってしまっており、現在は路地裏にひっそりとその痕跡が残るのみです。
治安が心配なくらい奥まったところにありました。2000年前、ここがカターニアの中心地だったというのは地元の人も知らないのではないでしょうか。
バシリカ (多目的の回廊施設)
バシリカはフォルムに隣接されていることが多い、回廊型の多目的ホールです。当時は裁判所、議事堂、市場、学校など様々な目的で使用されていたそうです。
残念ながら、こちらも痕跡のみ。
今はフォルムと同じく街に埋もれてしまっています。
回廊に使われていた資材は修道院などの建造物に使いまわされてしまったようです。
ただ、一部の柱が元の土地に近い場所で再利用されているようです。修道院の建立に一度は流用された柱が、さらに時代が下りスペイン統治時代に広場の建設のために再流用されて今に至るようです。
2000年前の柱が何度も使いまわされていることが、古代ローマ建築の優れたデザイン性や強度を証明していますね。
ローマ劇場
ローマ劇場は古代ギリシャの劇場にインスパイアされて古代ローマ全土に作られた半円状の屋外施設で、演奏や演劇が行われていました。
カターニアの劇場には7000人が収容できたそうです。今は街に埋もれ、すぐ隣にアパートや大通りになっている様子が印象的でした。
発見された美術品や大理石の柱が施設内に展示されており、こちらも見どころでした。
当時のままの通路や歩道を歩くことができます。円形の通路から座席に出る仕組みは今のスタジアムに通じるところがあります。おそらく当時の市民は現地の有力者が主催する演劇にタダで参加できたのでしょう。毎年夏になると演劇を催すローマ劇場もあるようなので、いつか行けたらなあと思います。
円形闘技場
剣闘士が戦わせられた場所として有名な円形闘技場。
こちらは一部が露出しているものの、大部分は現代の街に埋もれてしまっていました。
地上から見ただけでは何のことやらですが、敷地内に入ると復元図が今の街並みに当てはめて展示されていました。
実際の闘技場にも立てるほか、かつて闘技場の外にあった古代ローマ時代の歩道も歩けました。つまり、剣闘士と観客のどちらの目線にもなれるってことです。
実はシチリアは剣闘士による反乱が起きた場所として有名です。もし自分が同時代人だったら反乱に参加してローマ兵と戦っていたかもしれません(たぶんあっけなく鎮圧される)。
チケット売り場の外に復元された当時の門とレリーフには古代ラテン語で「AMPHITHEATRVM INSIGNE」、つまり「卓越した円形闘技場」と記されていました。
カターニアの各時代の建築物に共通していることは、エトナ山の火山灰や溶岩をうまく利用していることです。建造物の黒ずんだ外観は決して汚らしいのではなく、火山との共存を試みてきた結果ということです。
自然やその土地の風土に合わせたスタイルの建築や都市計画は調和がとれていて素敵です。
大満足の半日
カターニアの観光は出張の合間をぬって行ってきたので、実質半日の街歩きでした。
当時の街の様子を想像しながら観光できたので下調べのかいがありました。
本当はもっと古代ラテン語の碑文を読めればなと思っていたのですが、それらは博物館にあるようです。とはいえカターニアは古代ギリシャ語が話されていたはずなのでラテン語資料はほとんど無いと思われますが。
一緒に回ってくれたAさんには「本を1冊読んだ気分」と言ってもらえてよかったです。
他にもシチリアでは古代遺跡を巡ったので、特によかった場所を書ければなあと思います。
長々とここまで読んでいただきありがとうございます。それでは。