喜多村先生の気になる論考
こちらのnoteは読んで非常に気になりました。
経歴を拝見したら、こちらのnoteの著者の方(喜多村先生)は、元官僚で、法律の専門家で、大学教授でもいらした本物の有識者の方のようです。果たして、先生にこちらの書いたものを見ていただけるかどうかわかりませんが、私のような法律素人一般人の疑問にも、怒らず馬鹿にせず突き放さず、優しく説明していただけたら嬉しいなと思いつつ、疑問点を書きだしてみます。
国籍法上の「二重国籍」の定義
そもそもどうして、くだんの人物(台湾当局の籍を残していた日本国民)の立場を日本の国籍法上の「二重国籍(外国の国籍を有する日本国民)」だとする前提に立てるのでしょう?
昭和50年8月19日 京都地方法務局による説明
昭和50年8月19日に、京都地方法務局では(日本国民が外国の国籍を有するかどうかの判断場面で)
・国籍法の「外国」とは、「日本が承認している国を指すものと解される」と説明し。
また
・「外国の国籍を有するかどうか」についても、日本が承認している国の法規に照らして、その有無が審査されるべきであると説明していたようです。
これを読むと、日本国籍者が、日本が承認していない「台湾当局」の籍を保有していたところで、この法務局の示した解釈では、二重国籍者扱いにはならないのでは?と素人の私は思ってしまいます。
平成8年4月9日 金沢地方法務局の説明
こちらは、もっと具体的に台湾当局の籍の扱いについて説明したものです。日本国民が、中華民国政府(台湾当局)から発行された国籍証明を示しても、「外国の国籍を有する日本国民」が要件である「日本国籍離脱」の届を受理できない、と説明しています。
この扱いも昭和49年12月26日付民5第6674号法務省民事局長回答がおおもとになっているようですが、台湾籍を外国籍扱いしていない⇒台湾籍を取得しても外国籍を取得した扱い(二重国籍扱い)にしていない、と言うことではないのでしょうか?
憲法の問題
こちらは、台湾の扱いの特殊性の話から離れて一般論です。
>現行憲法下においては二重国籍は概念的にあり得ない
とのことですが、明治憲法下なら「あり得た」のですよね?
というのも、明治憲法下の旧国籍法では、
第二十條 自己ノ志望ニ依リテ外國ノ國籍ヲ取得シタル者ハ日本ノ國籍ヲ失フ
として外国の国籍を志望取得した者は日本国籍を喪失するとされているものの、26条の国籍回復の規定では
第二十六條 第二十條又ハ第二十一條ノ規定ニ依リテ日本ノ國籍ヲ失ヒタル者カ日本ニ住所ヲ有スルトキハ内務大臣ノ許可ヲ得テ日本ノ國籍ヲ囘復スルコトヲ得但第十六條ニ掲ケタル者カ日本ノ國籍ヲ失ヒタル場合ハ此限ニ在ラス
となっています。志望取得した外国の国籍を放棄・喪失することなく、日本における住所要件と内務大臣の許可を満たせば、日本国籍を回復して二重国籍状態になることができた、と読めるように思います。
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