小野田紀美先生には、このツイートを『撤回』して欲しい
もう5年も前のものですが、ずっと当方の心に引っかかってモヤモヤしているのが、小野田議員のこのツイートなんです。
特に小野田先生は、2020年9月18日から2021年10月6日にかけて、菅内閣で法務大臣政務官という、日本の法務行政の顔ともいうべきお立場にあった。そういう方が(就任前のものとはいえ)このようなツイートを公開したまま、政務官の任期中、ずっと放置していた。今はすでに政務官を退任されているとはいえ、このままでいいのでしょうか?
誰の話ですか?
このツイート自体は、当時の蓮舫さんの国籍問題を意識したものでしょう。ただ国籍法に関する部分「国会議員たるもの、こうあるべき」と言うような、対象を政治家に限った書きぶりではない。つまり「かつての蓮舫さん」と同じ立場の一般人に対しても直接降りかかってくる言葉です。その中で
ここまで言われちゃうと、もはや一線超えちゃっていて、スルーできないのです。蓮舫さんに対する個人攻撃にとどまらなくて一般の日台複数籍者(台湾当局に籍を有する日本国民)をも、ひっくるめて向こうに回しちゃっていることになります。
「(小野田先生がばらまいた)いわれなき火の粉」を被る一般人の立場に気づいてください。
そして、日台複数籍者についての日本政府側での実際の扱いを確認して、ご自身で納得した上で、このツイートを撤回、あるいは補足説明をしていただきたいのです。
小野田先生、前提がおかしい
失礼ながら、これ、前提がおかしいです。
もし、仮に安倍晋三先生や菅義偉先生の戸籍謄本が公開されたとして、それを眺めたところで「国籍の選択日」なんて書いてやしないでしょう?
そうしたら元首相、前首相は、国籍法に違反していることになるんですか?
「バカなことを言いなさんな。安倍さんや菅さんはそもそも重国籍じゃないんだから関係ないでしょ」
きっとそうおっしゃいますよね。
さて、それじゃあ、
「安倍さんや菅さんは重国籍じゃない」けど「蓮舫さんは重国籍だった」
って何をもって判断したんですか?
「そんなの常識でしょ」って?
いやいや、そこのところが曖昧じゃ困ります。
これは、小野田先生の言葉では「国籍法に違反しているかどうか」「合法か違法か」の話なんですよね? そうツイートされていました。
これは「法律」の話なんですよね?
そうである以上、
「(安倍晋三先生や菅義偉先生の戸籍謄本に国籍の選択日が記載されていなくとも問題ではないが)蓮舫先生の戸籍謄本に国籍の選択日が記載されていなければ問題だ」とおっしゃるのであれば、その法律義務発生の根拠の説明責任は、義務適用を主張する側にあるはずです。
「法律の話をしている」のでしたら、法律を適用する上での前提となる要件をはっきりさせてもらわなければ、一般人が困るのです。
選択義務の対象者になる要件
国籍法14条の条文では「外国の国籍を有する日本国民」は「(中略)いずれかの国籍を選択しなければならない。」
となっています。選択義務の対象者は「外国の国籍を有する日本国民」です。
じゃあ、ここでいう、外国の国籍って何なのか?
どういう状態のときに国籍法上の「外国の国籍を有する日本国民」に「該当する」と『日本政府側は扱っている』のか?
日弁連は、2020年3月に、法務省民事局に対して問い合わせを行い、回答を公開しています。
上のリンク先にある「調査報告書」のp3-4から、筆者が特に重要だと思った箇所に赤線を引いたものを以下掲載します。
法務省民事局は
・「重国籍かどうかは『当該外国政府側の証明書で判断』する。」
(日本以外のいかなる国の国籍を保有しているかは,当該外国政府の発行する証明書によって判断することとなる。)
・・・とする一方で
・「台湾(政府)は外国(政府)扱いしていない」
(ここでいう外国とは,国際法上,ある地域が国として承認されていること又はその地域がある国に属していることを承認されていることを要し,かつ,日本が独立国として承認する国家であることを要する)
・・・との内容を書いています。
さらにご丁寧に、
「台湾当局発行の証明書は、これ(=外国政府発行の証明書)にあたらない」と言う念押しまでしています。
こうなると、「台湾当局に籍を持つこと」だけでは、「(国籍法14条の)外国の国籍を持つ」と言う判断は導けませんよね。
選択させる以前の話として、重国籍者の要件にあたるとする根拠が無い。
日台複数籍者への選択押しつけは中国への忖度
ここに至って、なおもどうにかして「義務」に、こじつけようとしたら、
この箇所を目いっぱい拡大解釈するしかなさそうです。
というような意味合いなのだとすれば、日台複数籍の当事者の多くは、ますます国籍選択宣言などできません。選択宣言の手続きをすることは、前提として「台湾を中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとする中華人民共和国政府の立場」を認めさせられる、踏み絵のようなものになってしまうわけですから。
落としどころ
もちろん、日本政府の立場
「我が国は,台湾を中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとする中華人民共和国政府の立場を尊重する立場にある」
・・という立場は、日本側としては、やむを得ないことでしょう。この立場を撤回してくれるようお願いするのは無理でしょう。それも仕方ありません。
ただ、日台複数籍の当事者を欺くような真似はしないでほしい。
日弁連の調査報告書p7-8には
とあります。ここで日弁連が整理してみせた通り、
「日本政府の立場としては,日台複数籍者であり,中華人民共和国政府発行の国籍証明書を所持しない者は,「外国の国籍を有する日本国民」として認識,把握することが認められないから,国籍法14条1項の国籍選択義務は課されない。」
この扱いを法務省から、日台複数籍の当事者はじめ、日本社会一般に対し、はっきり理解されるように説明・周知していただければよいだけです。
これで、
「我が国は,台湾を中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとする中華人民共和国政府の立場を尊重する立場にある」
という日本政府の基本的立場を損なうことなく、そのうえで、(中華人民共和国政府発行の国籍証明書など持ち合わせているはずもない)一般の日台複数籍者に義務の不安や負担を与えない絶妙な「落としどころ」になるはずです。
だから撤回をお願いします
この折角の「落としどころ」を、小野田先生のツイートは台無しにしてしまうのです。先生のツイートを読んだ日台複数籍の当事者、特に成人年齢引き下げにより、20歳に満たない若者が、先生の
こうした一言一言に恐怖を感じて、本来しなくてもよい心配をさせられるわけで、これは不幸なことです。このツイートを取り下げ、
ということを周知してください。
「過ちては改むるに憚ること勿れ」です。これをやっていただければ、政権与党、責任政党としての自民党への信頼感は、より一層高まるはずです。
これは、結果として多くの人の安心につながることです。野党政治家一人を貶めることなどよりも、はるかに価値があることです。
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