2023年6月【Wakanaの本キロク】
こんにちは、毎朝寝起きが汗だくで萎えているWakanaです。
6月の読書記録をお届けします。
楽しんでいただけますように!
今月読んだ本
今月読んだのは全部で11冊。
④は再読中です、再読したら読書記録を書こうと思っています!
①温又柔『私のものではない国で』
②高野悦子『二十歳の原点』
③イリナ・グリゴレ『優しい地獄』
④蒼井ブルー『僕の隣で勝手に幸せになってください』
⑤小川糸『サーカスの夜に』
⑥竹田ダニエル『世界と私のA to Z』
⑦砂村かいり『アパートたまゆら』
⑧グレゴリー・ケズナジャット『鴨川ランナー』
⑨河野裕『昨日星を探した言い訳』
⑩波木銅『万事快調(オール・グリーンズ)』
⑪小川糸『針と糸』
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①温又柔『私のものではない国で』
台湾で生まれ、日本で育った温又柔さんの、自身の生い立ちによって日々感じることをどうやって文学へ落とし込んで表現しているか、その人となりが分かる散文集だった。単純に、自分の生まれた国ではない言葉で表現をしているだけでも並大抵のことではないのに、日本の状況についても一定の考えを持っているのが本当にすごいと思う...私ももっと日本を巡る国際情勢にアンテナを立てなければならないと感じさせてくれた本。
本の内容とはぜんぜん違うけど、少しだけ中国語を勉強したので、文中に出てくる簡体字が読めるのがうれしかった。こうやって学びって生きるんだって思えて、もっと勉強したいと思えた。
「何となく違う、とか、らしくない、とは言っても、外国人の家族がいるなんて「国際的」だと羨ましがられることもあれば、流暢な英語(ほかの外国語の場合もあるが)を話せてカッコいいね、と賞賛されたりと一見ポジティブな反応もある。しかし、「ふつうじゃないよね」と線を引かれていることに変わりはない。
どうやら、日本にいる日本人の大多数は、自分たちのような日本人以外の日本人は、ふつうの日本人じゃない、となるらしい。」
「日本社会では『民族だの、国家だの流行らない』と口では言いながらも、『日本人』と言えば、日本国籍を持ち、流暢に日本語を使いこなし、人生の大半を日本列島内で過ごし、日本文化を十分に会得し、そして日本人以外の血が一滴も流れていない者のことを思い浮かべる人は非常に多い。こうした人々は、今ここで挙げた条件がわずか一つでも相手に欠けていたら、なんだ普通の日本人ではないのか、とほとんど無意識のうちに考えてしまうのだ。」
「『書く』こととは、複数あるうちの、たった一つの可能性のみを選び取るということ。ありとあらゆる他の可能性のことごとくを、いったん、背後に押しのけること。なぜなら、私(たち)は常に、そうであったかもしれない可能性とそうではなかった可能性と隣り合わせの状態で、この可能性を生きている。書くことによって写し取られる『現実』とは、たまたま選ばれてしまった一つの可能性のあらわれでしかない。しかも、『現実』そのものとのずれを必ず孕みながら。」
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②高野悦子『二十歳の原点』
本のタイトルは「二十歳の原点」。「はたち」ではなく「にじゅっさい」と読むのだと奥付を見て知った。
「はたち」と言うと、子どもと大人の狭間、特に「大人になった」というイメージが強いけれど、「にじゅっさい」と言うと、本当に純粋に20年の年を経たという実感が伴っているように思えた。どこまでも純粋に誠実で、少し穿った見方をしている日記だった。学生運動が行われていた渦中で、内省によってひたすら自分を見つめている姿勢が気高さを感じさせた。
高野さんよりも2年多く生きている私、高野さんと同じ大学、専攻の私。当時の彼女がどんなに苦しくてもどかしい思いをしたのか、完全に理解することはできないけれど、
私が今通っている大学で、過去にこういうことがあったということは、この大学に通う一学生、日本史を学んでいる大学生として知っておかなければならないと思った。この本を読んだことで、それが少しでも追体験できたんじゃないかと思っている。
「旅に出よう
テントとシュラフの入ったザックをしょい
ポケットには一箱の煙草と笛をもち
旅に出よう
出発の日は雨がよい
霧のようにやわらかい春の雨の日がよい
萌え出でた若芽がしっとりとぬれながら
そして富士の山にあるという
原始林の中にゆこう
ゆっくりとあせることなく」
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③イリナ・グリゴレ『優しい地獄』
夢や映画の話と絡めた文章が多い印象。今の話と昔の話の境界線が曖昧に描かれていて、どこか違う世界に飛ばされた感覚になった。掴み所のない文章で、それが特有の奥深さを出していて、今までにしたことのない不思議な読書体験ができたと思っている。
「人間の身体に詰まっている感覚、感動、愛情の塊は『言葉』だけでは伝えにくい。私たちの日常の中では、『言いつくせないもの』でお互いの『コミュニケーション』の壁が破けない日々を生きている。」
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⑤小川糸『サーカスの夜に』
サーカスに導かれた少年が、個性豊かな人々と触れ合いながら成長していく物語。
児童文学っぽい雰囲気があって、どこか懐かしい気持ちになっていた、『モモ』を読んでいたときの気持ちに似ている。表現とか描写に小難しいのが無くて簡潔だったからかも。自分の中にある(はずの)純粋な感覚を思い出させてくれるような、やさしく触れる機会をくれた1冊。
「結局、いくら願っても否定してもじたばたしても、事実は事実として変わらない。自分の意思で変えることができるのは、心だけだ。体が変わらないのなら、心を変えていくしかない。」
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⑥竹田ダニエル『世界と私のA to Z』
残しておきたい、大切にしたい言葉がありすぎた。自分がZ世代だからこそ、共感できることがたくさんあって、なんか分かる気がする、確かにそうかも、と思ったり、竹田さんが住むアメリカでの動きには「そうなんだ!」と知らないことだらけで不勉強だなと思ったり。
今の世の中って、生きやすいと捉えることもできるし生きづらいと捉えることもできるんだなって感じた。だからこそ、竹田さんが「終わりに」の末尾に書かれていた言葉にぐっときたのです。
「Z世代にとって、『個性』とは『他人と違うこと』では必ずしもなく、自分が本当に好きなものや価値観を認識し、表現する行為の先にある。」
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⑦砂村かいり『アパートたまゆら』
王道の恋愛小説、久しぶりに、本当に久しぶりに読んだから単純に楽しかった!きゅんきゅんしたなあ良かった。
砂村さんの本、2冊目なのだけど、とにかく読みやすい。『炭酸水と犬』を読んだときは爽やかさを感じたけど、今回は軽やかさを感じた。総じてすいすい読めてしまう。
あとは、人と人との関わり方や繋がり方が緻密に構成されている印象を受けた。それでいて、その中に意外性も織り交ぜられていて、単に「うまく行き過すぎている」感が無いのがすごいと思った。
個人的には、番外編でアフターストーリー的な内容のものを読めたのが良かった!
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⑧グレゴリー・ケズナジャット『鴨川ランナー』
2つ目のお話が特に印象的だった。
日本語にとっての英語、英語にとっての日本語、という意味の「異言(タングズ)」。
教会での、宗教的な意味での「異言」。
日本にいるならば日本語で話をしたいと思う。百合子とも日本語で会話を交わしたいと思う。
でも百合子からは「英語を話しているあなたが格好良い」と言われる。結婚式の牧師のバイトでは、拙い英語を話すのが一種のパフォーマンスとされる。これに主人公は困惑する。
言葉に「溶け込もう」とする主人公の思いがいとも簡単に打ち砕かれ、言葉をただ「羽織る」ことへ、自身に暗示をかけるさまは、なんだかぞっとした。
二言語の狭間で揺れ動く主人公の感情の機微が丁寧に描かれていて、それでいて不穏。静かな物語だけれど、心に残った。
「きみが初めて自分の言葉と文化の外へ出て、海外へ渡ったのはもう十五年前のことだ。あの頃は確か、いつかこちらの言葉と文化の全体像をものにすることを望んでいた。努力さえすれば、この世界は自分に開くと思っていた。自分の物語はまっすぐに、すべてに意味を与える壮大な結末に向かって進んでいると信じていた。だが現実はずっと複雑で、ちぐはぐなものだった。」
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⑨河野裕『昨日星を探した言い訳』
ドラマチックでファンタジック。現実に起こりそうなシチュエーションだけれど、出てくる言葉やモノがファンタジー要素を出していた。
坂口と茅森。まったく違う2人が、自身の譲れないものを固持しながらも繰り広げる話が哲学的だった。
大多数の人の中でいちばん卑怯なのは、自分が大多数という安全圏内にいることが分かっていて少数派の気持ちになろうとすること。少数派を囲い込もうとすること。
正しさで傷つく。
周りからは理解されないけれど、張りたい意地がある。
大人になってから考えてみればもしかしたらつまらないことにこだわっていたと思うようなことでも、そのときの自分にとってはそれを守りたくて、それを誇りにしたくて時に素直に、時に卑屈になる。子どもながらに考えること、思うことがあるっていうのはすごく共感できるなと感じた。
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⑩波木銅『万事快調(オール・グリーンズ)』
スリル満点!!はらはらしながら読んだ。
そもそも大麻を手に入れるなんて普通ありえないし、それを今度は学校の屋上で育てるっていう主人公・朴の根性がすごいと思った。学校側にばれてしまって終わるのかと思ったらえぇそっち?!ってなる最後で、おおお...すごい...と圧倒された。
自分が置かれた環境を「最悪」だと思い、最悪ながらもそれに抗うようにフリースタイルラップを紡ぎ、大麻ビジネスをやり、という朴に爽快感さえ感じる。
あとは、とにかく出てくる登場人物のキャラが濃い!!人の濃さで言えば面白さと癖の強さは最強だと思う。
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⑪小川糸『針と糸』
装丁に惚れた1冊。明るく穏やかで、健康的な(?)文章が心地よかった。
自身のベルリンと日本を行き来する生活、ベルリンでの日々、小川さんのお母さんのこと、作品を生み出すことについて。
小川さんの人となりが垣間見えるエッセイばかりでやさしい気持ちになった。すごくベルリンに行きたくなった。
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キロク後記
絶賛積ん読消化中です。消化中と言いながら、ちょこちょこ買ってます。
来月はゼミのレポートを書いていくのでどこまで読めるか分かりませんが楽しんでいこうと思います。
7月は上半期芥川賞発表!お祭りです、楽しみ。芥川賞候補作は、図書館にある文芸誌でできるだけ読みたい。
最後までお読みいただきありがとうございました!☀
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