ダンス『ランボー詩集 ー地獄の季節からイリュミナシオンへー』勅使川原三郎(東京芸術劇場)
「芸劇dance」シリーズとして上演。
最初から最後まで吸い込まれ、終盤泣きそうになる。
舞台中央に置かれた、開いて縦置きした巨大な本のセット。そこをダンサーが出入りしたり、本が最後はページを繰られ閉じられて神殿や扉のように見えたり。
音楽の急激な変化や照明の切り替えなど、一部の隙もなく観客を引き付ける演出。聖なる調べの歌声から激しい電子的な音へ。舞台セット・美術が変化したくらいのインパクトを与える照明の使い方が見事だ。
使われた音楽やランボーを熟知していたら本作を存分に楽しめるのだろうけど、音楽が初耳でフランスの詩人ランボーについては聞きかじったことがあるだけでも、ダンス・舞台に入り込める。
若さ・未熟さと賢明さ・老成、欲望・衝動と静かな思考、創作への意欲と絶望などを勝手に感じた。
勅使川原三郎さんのダンスは、もちろん鍛えた身体で技術を駆使して上手に踊っているのだが、「踊っている」という作為を忘れさせる。勅使川原さんが客席を向いて、客電がついて客席が短い間明るくなるシーンでは、勅使川原さんに観客の姿が見えたはずで、勅使川原さんと観客が一瞬直接的につながった気がした。
勅使川原さんのソロは(ほかの作品でもそうだが)見ていて胸が締めつけられるよう。勅使川原さんと佐東利穂子さんのデュオは流れるようで美しい。外国から出演している2人のダンサー、アレクサンドル・リアブコ(ハンブルク・バレエ団)さんとハビエル・アラ・サウコさんの出番は思っていたよりも少なかった。
舞台全体として完成度が高いと感じた。そして浄化されるような感覚に陥る。陶酔感ほど甘ったるくはないがそういう作用もある。踊りの根源的要素にはそういう作用が入っているのだと思う。
作品情報
日程:2023年8月11日 (金・祝) ~8月13日 (日)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
振付・演出・構成・美術/照明/衣装デザイン・音楽構成:勅使川原三郎
アーティスティック・コラボレーター:佐東利穂子
出演:勅使川原三郎、佐東利穂子、アレクサンドル・リアブコ(ハンブルク・バレエ団)、ハビエル・アラ・サウコ
チケット料金(全席指定・税込):
S席 7,000円
A席 5,000円
25歳以下(S席) 4,000円
高校生以下 1,000円