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『外地の三人姉妹』チェーホフ、ソン・ギウン、多田淳之介(KAAT)
日本による植民地支配下の朝鮮半島を舞台に、軍人の父を亡くした日本人の3人姉妹とその周囲の人々の生き方を描く。1935~1942年の日本、朝鮮、世界の情勢を盛り込んでいる。
2020年初演作品の再演。上演時間は約3時間(15分の休憩含む)。
舞台中央上部にスクリーンがあり、時代背景や物語の設定を文字で伝える。時に、舞台上の様子を撮影した動画も投影されていた。
ロシアのチェーホフの『三人姉妹』を巧みに翻案しているが、韓流スターや韓国ドラマを利用した「笑い」のシーンは空回りしているように見えた。演技や演出も詰め切れていないというか、テンポなどに違和感があり、まだ完成形に至っていない印象を受けた。
朝鮮の人や朝鮮と日本の親がいる人に対する差別の言葉は強烈だが、言っている本人にはその自覚がないという登場人物が大半というのが怖いところ。
チェーホフ(を基にした)演劇は、大概そうなのだが、今回のラストも暗い気持ちになる。しかし、実際に日本による植民地支配は「暗い」(という言葉では済まされない)歴史だ。
見ていて・聞いていていらいらさせられる人物がいるのもチェーホフの特徴。
朝鮮の人が話す日本語が揶揄される一方、揶揄する側の日本人も日本語の方言を話す。日本語を話す朝鮮の人が、方言について、訛りがきつくてわからないと言う場面もある。
韓国語(朝鮮語)のアクセントが強い方言のせりふもあり、スクリーンにはその日本語訳が方言(風?)で表される。
ラストでは朝鮮側の登場人物たちが韓国語(朝鮮語)の歌で朝鮮の踊り(と思われる)を踊る。朝鮮人の下女カンナン役を演じた鄭亜美さんのダンスが美しかった。しかし、一緒に踊っていた一人は決闘で殺された人で、カンナンもほかの2人も日本人と結婚したり日本人の家に勤めた人なので、終戦後まで生き延びたとしても、終戦後にどんな扱いを受けただろうか、と思うと、非常に悲しいダンスである。でも、少なくとも、日本人たちは舞台から去り、いなくなった。朝鮮の地を取り戻すかのように4人が踊る。
「ラストの舞踊の曲は朝鮮北部の民謡です」(多田淳之介さんのX投稿)とのこと。
作品情報
KAAT×東京デスロック×第12言語演劇スタジオ『外地の三人姉妹』
2023年11月29日(水)~12月10日(日)
KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ
原作:アントン・チェーホフ『三人姉妹』
翻案・脚本:ソン・ギウン
演出:多田淳之介
翻訳:石川樹里
出演:
伊東沙保 李そじん 亀島一徳 原田つむぎ アン・タジョン 夏目慎也
佐藤誓 大竹直 田中佑弥 波佐谷聡 松﨑義邦 イ・ソンウォン 佐山和泉 鄭亜美