音楽ができたなら
ニックドレイクの3枚目のアルバム『Pink Moon』を聴いた。このアルバムはニックドレイクの最後のアルバムになる。使われている楽器はギターとピアノだけで(僕はどこにピアノの音があるのか分からなかった)非情に素朴なアルバムになっている。ニックドレイクの精神状態が非常に悪かったらしく、もう余計な装飾はいらないといって、弾き語りになっている。このアルバムを聴くと、ニックドレイクの曲には余計な装飾はいらないと思った。ギターと歌声だけで成立しているのだ。他の音はむしろ邪魔になる。
僕は今うつ状態にあるのだが、やかましい音楽が聴けない。また、音楽を聴くにしても楽器が色々使われている曲より、ピアノだけとかギターだけとかの方が良い。だからニックドレイクの気持ちがよく分かる。僕が英語圏の人間ならもっとニックドレイクの弾き語りの良さが分かったかもしれない。彼が歌う詩の繊細さも理解できたかもしれない。悲しいが僕は英語がサッパリ分からないので、歌詞カードを読むしかない。ただ、歌声やギターの音色から彼がとても繊細なのが伝わってくる。
ニックドレイクもうつ状態だったらしい。このアルバムの時点で喋れないレベルになったり、精神科病院に入院したりしていたらしい。結局は抗うつ薬を大量に飲んで26歳の時に亡くなっている。また、ニックドレイクは死後評価されたらしい。レコードというかCDで復刻され、現代の僕にまでニックドレイクの音楽が届いているのが不思議だ。ニックドレイクも平成生まれのうつ状態の日本人が自分の音楽を聴いているとは思わなかっただろう。
僕も音楽が出来たなら、自分の精神状態を音楽にしたいと思う。ただ悲しいことに僕には音楽の才能がない。一応ギターは弾けるが、弾き語り譜を見てジャカジャカ弾ける程度だ。作曲なんてできやしない。いや、もしかすると本気になればできるかもしれない。ただ、そんなやる気が起きない。ギターを弾きたいと思えない。
僕がニックドレイクを知ったのは、10代後半の頃にアコギの名盤を探していた時に知ったのだと思う。そして、ファーストアルバムだけ持っていた。特に良さが分からなかったが、一応ずっと持っていた。ニックドレイクの音楽は秋とか冬に聴きたくなるので、たまに聴いていたのかもしれない。後に彼がうつ病だったと知り、2枚目と3枚目のアルバムを買った。個人的には1枚目のアルバムが好きだ。ギターとピアノ、ベースにストリングスといったシンプルな構成だ。2枚目はややオシャレな感じがあり、3枚目は弾き語りだ。
僕にとってニックドレイクは何だったのだろうか。皮肉にも僕も鬱になってしまって、鬱状態の中ニックドレイクの音楽を聴いている。ああ僕も音楽ができたらな。