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トラウマから生じる症状を相談する

令和6年度の診療報酬制度改訂では、通院・在宅精神療法における公認心理師による心理支援加算が創設されました。外傷体験があり、心的外傷に伴う症状を経験しているクライエントに対して精神科医が心理支援が必要であると判断し、公認心理師が30分以上の心理支援を行った場合に取ることのできる加算です。この加算の創設からわかるように、精神科医療においてトラウマを理解する重要性は増してきています。

そこで今日はトラウマについて基本的な考え方をお伝えしようと思います。

トラウマとは?

自分たちの人生を思い返した時に、傷つく体験をしていない方はいないと思います。しかし過去の辛くて苦しい経験も、「あれがあったから今の自分がある」というふうに意味づけられると受け入れることができますよね。

しかしあまりに衝撃的すぎると、そのように処理することが出来ません。例えば、事故、災害、死の目撃、レイプ、殺人などの出来事に会うことや、虐待やDV、ハラスメント、ストーカー、いじめなどの複雑で繰り返し体験するものがその代表でしょう。

トラウマはもともとギリシャ語で”τραῦμα”、「からだの傷」を意味する言葉が語源です。こうした衝撃的な経験は、冷凍保存されたように心の怪我になって残り続けます。そしてその怪我はただ保存されているだけではなく、色々なところに影響を及ぼします。

トラウマの症状

例えば・・・

  • 身体面

動悸、頭痛、筋肉痛、吐き気、過呼吸、手足のだるさ、発汗、喉のしこり、胸の痛み、下痢、食欲不振、呼吸困難、悪寒、のぼせ、冷え、震え、めまい、しびれ

  • 思考面

自己嫌悪、集中力の低下、記憶力の低下、仕事の満足度の喪失、自己喪失、周囲に対する嫌気

  • 感情面

怒り、ショック、混乱、驚き、抑うつ、不安、孤立感、恐怖、悲しみ、罪悪感、圧倒された感じ

  • 行動面

決断を下すのが難しい、イライラする、トラブルを起こしやすくなる、お酒や煙草が増える、食べ過ぎる、食べられない、仕事のパフォーマンス低下、口数が減る、周囲との接触を拒絶する、身なりにかまわなくなる


トラウマといえばPTSDですが、「自分にはトラウマはあるけど、PTSDというほどではない」という方や「学生の頃のことだから今にはきっと関係ない」と思われて相談されていない方もいらっしゃると思います。

しかしこのようにトラウマは多くの反応を私達に及ぼします。また殆どの場合はすぐに反応が出るのですが、後に時間が経ってから現れる場合もあります。

もしこのような症状に困っていて、自分にはトラウマがあるという方は、無理にとはいいません。話せるタイミングが来た時に、ぜひ相談してみてくださいね。

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