見出し画像

相手の感情を動かし、行動に駆り立てる一言

今日、クライアント先で行ったロープレのフィードバックが、私の中で一つの確信を強めました。それは、営業において言葉の選び方が、相手の感情に与える影響の大きさです。私は長年、さまざまな営業マンにコンサルティングを行ってきましたが、言葉の使い方ひとつで商談の結果が大きく変わることを何度も目の当たりにしてきました。

営業の現場では、新人営業マンからベテラン営業マンまで、多くの人がロープレを軽視しています。ロープレとは、文字通り実際の商談を想定して行う「ロールプレイング」です。スポーツに例えるなら、プロ野球選手が試合前に行うバッティング練習やピッチング練習と同じです。

試合に勝つためには練習が不可欠であり、日々の積み重ねがその成果となります。それにもかかわらず、営業の世界では、多くの営業マンがこの「練習」を軽んじています。これが、営業マンとしての成長を妨げている最大の要因です。

今日のフィードバックでは、特に若手営業マンが使っていた「もしよかったら」というフレーズに焦点を当てました。この「もしよかったら」という言葉、一見すると相手に配慮しているように感じられます。ですが、実際のところはどうでしょうか?

「もしよかったら、資料をお読みください」「もしよかったら、デモをご覧ください」といったフレーズを使うことで、営業マンは自らの提案に対して曖昧な姿勢を取ってしまっています。裏を返せば、読んでも読まなくても、見ても見なくてもいいということになりかねません。これでは、相手に強い印象を残すことは難しく、商談が成立する可能性も低くなります。

ここで、私が強調したいのは「ぜひ」という言葉の力です。

心理学的にいうと、「強い確信を示す表現」は、影響力の武器として知られる「コミットメントと一貫性の法則」(ロバート・チャルディーニ)に基づいています。人間は、他者が強く自信を持って勧めるものに対して、自分の行動を一致させたいという心理が働きます。これにより、相手は「そこまで言うなら試してみよう」「この人が自信を持っているなら、自分もそれを信じてみよう」と感じることが多いのです。

例えば、あなたが何か商品を提案しているとしましょう。
「ぜひ、資料をお読みください」「ぜひ、デモをご覧ください」と自信を持って言った場合、相手にどう映るでしょうか?「ぜひ」という言葉は、ただの言葉以上の効果を持っています。相手の心に響き、自信が伝わり、そして信頼が生まれます。

人は、自信を持って提案されると、その提案に対して自然と信頼を寄せるものです。「そこまで言うなら試してみよう」と感じる瞬間を作り出すのが、「ぜひ」という言葉の魔法です。

ここで一つ、私の過去の経験をご紹介します。
ある商談の席で、私は商品に対して強い自信を持っていました。そして、相手がまだ迷っている段階で「ぜひお試しください」と自信を持って言いました。結果はどうなったでしょうか?その商談は見事に成立し、その後も継続的な取引につながりました。このとき、「ぜひ」という言葉を使ったことで、相手に「この商品は本当に自分に必要なのだ」という確信を与えたのです。

ところが、ここで一つ気をつけなければならないことがあります。
それは、「ぜひ」を多用しすぎると、逆効果になる可能性があるということです。実際に私が目にしてきた例の中には、「ぜひ」を頻繁に使いすぎた結果、相手が「押し売り」と感じてしまい、逆に信頼を失ってしまったケースがあります。

例えば、ある営業マンが商談の最初から最後まで何度も「ぜひ、ぜひ」と連呼していました。すると、相手はその言葉に対して疑念を抱き始め、「この人は本当に自分のために提案しているのか?それとも自分の成績のためだけに話しているのか?」と感じてしまったのです。これは明らかに逆効果です。「ぜひ」という言葉には強力な力があるからこそ、その使い方には細心の注意が必要です。

ここで参考にしたいのが、ピーク・エンドの法則(ダニエル・カーネマン)の理論です。この法則では、人々は経験の最も感情が高まった瞬間(ピーク)と終わりの瞬間(エンド)を特に記憶するというものです。商談でも同じです。「ぜひ」という強い言葉を使うタイミングがピークになるように工夫することが、相手の印象に残る強い一手となります。

では、どうすればよいのでしょうか?
答えはシンプルです。「ぜひ」を多用するのではなく、慎重に使うことです。普段は相手に寄り添い、相手の立場に立った提案を心がける。そして、最も効果的なタイミングが訪れたとき、初めて「ぜひ」を使うのです。

例えば、商談の終盤で相手が最終的な判断を迷っていると感じた瞬間です。その瞬間に「ぜひお試しください」と一言発することで、その言葉が一気に相手の心を突き動かすのです。

さらに、心理学的には「スカーフモデル」(デビッド・ロック)も役立ちます。人間は、信頼や安心感が高まると決定を下しやすくなる傾向があります。このモデルでは、地位(Status)、確実性(Certainty)、自主性(Autonomy)、関係性(Relatedness)、公平性(Fairness)の5つの要素が重要だとされます。営業において「ぜひ」を使うタイミングは、相手の自主性を尊重しつつ、確実性を高めていくプロセスが重要です。相手に安心感と信頼を与えた上で、強い言葉を使うことで効果が最大化されるのです。

ここで重要なのは、「ぜひ」の重みを保つことです。
頻繁に使えばその重みは薄れ、相手にとっても単なる営業トークの一部として聞き流されてしまいます。しかし、必要なときにだけ使うことで、その一言は特別な意味を持つようになります。まるで、重要な場面で発せられるプロポーズの言葉のように、その瞬間が訪れるまでじっくりと温め、最後に力強く伝えるのです。

次に商談の場に立つとき、ぜひ試してみてください。
あえて「ぜひ」という言葉を温存し、最も効果的なタイミングに備えておく。その瞬間、あなたの「ぜひ」はかつてないほど輝き、相手の心を動かし、行動を促すでしょう。営業における成功は、こうした小さな言葉の選び方にかかっています。

最後に「ぜひ」を使った商談のスクリプト使用例を20個紹介します。
ぜひ、ご購入していただき、顧客の信用を高め、受注率を高くしてください。

【注意事項】
・このコンテツは初公開です。
・いつも通り、売れたら値上げします。
 5部まで200円、6~10部は300円、11部~は500円です。
 早めにお買い求めください。
・購入後は早めに実行して元を取ってください。

ここから先は

1,697字

¥ 200

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?