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儒林外史 第一章 序にかえて (3)

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ある日、秦さんと話をしていると、外から一人の男が入ってきた。頭に三角屋根の帽子をかぶり、真っ黒な服を着ている。秦さんは出迎え、椅子を勧めた。この人は翟という人で、諸暨県役場の庶務課を仕切ったり、資材調達をしている。秦さんの息子さんが彼にお世話になっていて、ここにはよく来るらしい。秦さんは息子にお茶をお出ししなさいと声をかけ、鶏をつぶして煮物を作った。その間、王冕が翟さんの相手をすることになった。バイヤーの翟さんは言った。
「こちらが没骨画で有名な王さんですか。」
秦さんは言った
「そうなんですよ。よくご存知ですね。」
調達役の翟は言った。
「県内に知らない者などいるものですか。先日、県知事が上司に、二十四副の花の画集を贈りたいと言いましてね。それでこちらに参ったんです。王さんのご高名は伺っておりましたから、まずはこうして友人の家で尋ねようかと思いましたら、なんという奇遇! 偶然にも王さんがいらっしゃるとは! それでは引き受けていただけますね? 半月後にまた取りに伺いますから。県知事どののことだ。謝礼は十両は期待できますよ。まるっとお渡ししましょう。
秦さんが横でよかったなあと喜ぶので、王冕は断るに断れず、引き受けるしかなかった。家に帰ると、心を込めて二十四副、花を描き、上部に詩も書き添えた。翟庶務課長は県知事の時仁から二十四両の銀貨を受け取り、十二両を懐に入れると、十二両を王冕に渡し、画集を引き取っていった。時仁知事はいくつかの贈り物とともに、危素先生に差し上げた。

危素は贈り物を受け取ると、特に画集だけは何度も繰り返し鑑賞し、手元から離さなかった。後日、酒宴の席をととのえて、時知事に返礼のパーティを開いた。挨拶が終わり、乾杯が数巡すると、危素が切り出した。
「先日いただきました花の画集、古人の作なのでしょうか、それとも現代の方なのでしょうか。」
時知県は特に隠し建てはせずにいった。
「これは我が県の村落に住んでおります王冕という農民が描いたものです。まだ画家としては駆け出しの若者でして、ひょっとして先生のお目汚しになりはしまいかと心配しておりましたが。」
危素が言う。
「ここを離れ研究に没頭する間に、故郷にこのような賢者が現れていたとはつゆ知らず、お恥ずかしい限りです。この方は才能があるだけでなく、相当な見識をお持ちと推察します。将来は名を挙げるに違いありません。一度お会いすることはできないでしょうか。」
時知事は答えた。
「お安いご用です。お任せください。すぐに使いをやって、お呼びしましょう。先生のご希望とあらば、喜んで参るに違いありません。」
そう言って危素の家を出ると、早速、調達役の翟に王冕の招待を命じた。

第一章 序にかえて (4)

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