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韓国人がよく間違う日本語④「スタッフ」と「ステップ」한국인이 자주 틀리는 일본어④"스태프" 와 "스텝"

「今日のコンサートのために頑張って準備してくれた"ステップ"の皆さんに大きな拍手を!」

かなり日本語が上手なKPOPアーティストでも、こんな間違いをよくする。
「ステップ」と「スタッフ」、一見似ているようだが、日本語で発音するとかなり違う音だし、表記も「テ」と「タ」で間違いようがないように思うのだが。。。

実は、この間違いは韓国人が日本語を話す時だけでなく、韓国語でも「스텝(ステップ)」と「스태프(スタッフ)」を混同しているところに端を発している。そしてその原因は「エ(ㅔ)」と「ア(ㅐ)」、「p(ㅂ)」と「f(ㅍ)」の境界線の曖昧さにある。

韓国には国(国立国語院)が定めた「外来語表記法(외래어 표기법)」という規則があり、外国語のどの音をどのハングルで書くかが決められている。一般人はともかく、マスメディアや官公庁などはこの表記法に従って書かなければならない。この表記法に従うと、上の2つの単語はそれぞれ

ステップ 스텝 [step]
スタッフ 스태프 [stæpɯ]

[ ]内はハングルの発音を国際音声記号(IPA)で表したもの

と表記することになっている。
ご覧の通り、最初の「스(s)」と「ㅌ(t)」までは同じだが、その後は「ㅔㅂ」と「ㅐ프」とかなり違っているので、なぜこの2つを混同するのか不思議に思うかもしれない。

理由は2つある。

1.韓国語には[f]の音がなく、ハングルでは「ㅂ(p)」や「ㅍ(p')」で表記するため

言うまでもなく「step [step]」は[p]音で、「staff [stæf]」は[f]音で終わる。日本語にも韓国語同様[f]の音はないが、日本語では[p]を「プ」、[f]を「フ」と表記することで区別している。韓国語でも外来語表記法では上のように[p]を「ㅂ」パッチムで、[f]を「프」で区別しているのだが、厄介なことに「ㅍ(p')」は「ㅂ(p)」の激音(強く息を吐きながら「ㅂ」を発音する音)で同系列の音である。さらに、stepの[p]もstaffの[f]も母音を伴わないので、本来ならstaffは「스태프」と母音「ㅡ」を付けずに「스탶」(又は「스탭」)とパッチムで書くのが音に忠実なのだ。(敢えて「프」と書くのはまさに[p]音と[f]音を表記上、無理矢理区別するためだと思われる。)いずれにせよ、韓国人は[p]音も[f]音も「ㅂ(p)」又は「ㅍ(p')」と認識しているので、日本語の「フ」と「プ」ほどの区別がなく、stepの[p]とstaffの[f]の音を混同してしまうというわけだ。

2.現代韓国語では「ㅔ[e]」と「ㅐ[æ]」が同じ音になっているため

外来語表記法ではstepの[e]の音は「ㅔ」で、staffの[æ]の音は「ㅐ」で表記すると定められている。[e]は日本語では「エ」、[æ]は「ア(バット、マットなど)」か「ャ(キャットなど)」で表す。それぞれに違う表記があるので、間違いようがないじゃないか、と思うかもしれないが、実は「ㅔ[e]」と「ㅐ[æ]」は現代の韓国語では同じ音として発音されるため、音を聞いただけでは「ㅔ[e]」なのか「ㅐ[æ]」なのか区別がつかないのだ。[e]と[æ]のように発音記号が違うことからもわかるように、本来「ㅔ[e]」は「pen」の「エ」の音、「ㅐ[æ]」は「man」の「ア」や「can」の「ャ」(正確にはアとエの中間音)の音だった。実際、僕が大学で韓国語を習った時(1980年代後半)は、韓国人の先生に「에, 애, 에, 애, 에, 애…」と「ㅔ[e]」と「ㅐ[æ]」の音の違いを何度も練習させられたものだ。しかし、それから数十年の間に(実際にはそれよりもっと前から)「ㅐ[æ]」の音は「ㅔ[e]」の音に極めて近くなり、現代の韓国人は「에 [e]」も「애 [æ]」も「에 [e]」と発音している。
とはいえ、表記上の区別は勿論そのままなので、例えば「재적(在籍ざいせき)[ʒæʒɔk]」と「제적(除籍じょせき)[ʒeʒɔk]」のように正反対の意味の単語が発音上はどちらも[ʒeʒɔk]となり、耳で聞いただけでは区別がつかないという不便な現象が生まれている。
ちょっと脱線してしまったが、ということで、本来は別々である「스텝(step)の「ㅔ[e]」の音と「스태프(staff)の「ㅐ[æ]」の音がどちらも「ㅔ[e]」の音と認識され、日本語の「エ」と「ア」のように明らかに違う音と認識できずに混同されてしまうのだ。

このように「step」と「staff」は韓国語特有の2つの「悪条件」がたまたま重なり、表記上は「스텝(step)」「스태프(staff)」と区別できても発音上はどちらも「스텝 [step]」になってしまうので、日本語で「スタッフ」と言いたい時もつい「ステップ」と言ってしまうというわけだ。

全く同じ理由で、韓国語では「fan(팬)」と「pen(펜)」の区別が音の上ではできない。日本でもオタク用語で「ペンミ」「ペンサ」と言う時の「ペン」は「ファン」の韓国語発音なのだ。「ファン」と言わずにわざと「ペン」と言うだけで「韓流ファン」であることがわかるという便利さはあるが。。。(笑)

英語の「man [mæn]」とその複数形である「men [men]」の発音の違いは、日本では「マン(正確には「ア」と「エ」の中間音)」「メン」と覚える。韓国語には本来[æ]に相当する「ㅐ」という母音があるので、「man」は「맨 [mæn]」、「men」は「멘 [men]」と書いて日本語よりもよっぽど原音に近い音で覚えられるはずなのだが、「ㅐ[æ]」が「ㅔ[e]」と同音になってしまった今では「man [맨]」も「men [멘]」も「men [멘 [men]]」と聞こえ、またそう発音してしまうので、日本語以上に区別(特に単数形の発音)が難しいのではないか、と勿体なく感じてしまう。

とはいえ、日本語でも昔は「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」、「お」と「を」の音を使い分けていたというから、音というものはどの言語でも変化する運命にあるのだなと思う。

今度、韓国人が「ステップのみなさん」と言ったら、やさしく「スタッフのことですよね (^^)」と直してあげましょう。

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