愛をあらわせ
食べさせたいって、愛だなぁと思う。
食べることが好きでしょうがなくて、1日中食べ物のことばかり考えている。
母は毎朝5時に起きて6時過ぎに家を出て仕事へ向かう。そしてお昼頃帰ってくる。
去年の夏に帰省した時、わたしが到着するその日はいつもよりさらに30分も早く起きて、4年ぶりに一緒に食べるご飯の下準備をしてから仕事に向かったそう。おかげで久しぶりの実家に着いて早々のお昼ご飯は味しみしみの夏野菜マリネのお蕎麦が食べられた。あれはおいしかったなぁー。
どうして前夜に準備しないのか不思議で聞いてみたところ、
『前の晩から漬け込んだら味が濃すぎるねん。だから朝やってん!ほんまは1〜2時間で充分なんやけどね。』
ほう。おいしく食べさせたいからか。
それは愛だな。
夫に晩ご飯がいらない時、ちょっと嬉しい。
サボりつつ自由に食べられるから。
食べることが大好きだし、作ることも嫌いじゃない。けれど、自分のためだけに下準備や工程の多いメニューを作るのはめんどくさい。
ご飯を炊くことすらしない。
一緒に暮らす人がいなければ、めんどくさがりのわたしはきっと同じようなメニューで、ご飯や麺におかずを全のっけして洗い物は最低限、食材も偏るに違いないなぁ。
目覚ましの必要のない生活はもうすぐ2か月。
目が覚めるのは8時くらい。
暖かいベッドの中でぐずぐずする贅沢を堪能して、
よしっ!と気合いで起きるのが9時過ぎ。
起きたらまず洗濯をして、終わるまでの小一時間茶をしばく。干して、軽く掃除機をかける。
その間何食べようかとずっと考えている。あるものでちゃっと食べたり、あれが食べたいとひらめいたら買い物に出かけたり。
そんな風にしてありがたい午前中が過ぎる。
昨日の朝はかき揚げ丼が食べたかった。
朝から?朝っていうてもほぼ昼になるやん。
野菜何があったっけ?
きのこたくさんある。あ、ブロッコリーもある。ふふふ。いけるんじゃねーか。
そう思ったらいつもよりも早くベッドから出て、まさか朝から自分のためにだけにかき揚げ丼を作って食べるなんて…。やればできるのだなぁ。
自分のために手間をかけてご飯を作るのも楽しい。1人分のかき揚げってそこまで手間じゃないかも。
小さな達成感も味わう。ラッキー。
午後には、母から届いた冷たい雨の中京都に買いに行ったと言うカステラでたっぷりのお茶をすする。
そして晩ご飯は夫の好きなグラタンにした。
一緒に暮らして20年。(20年!)
夫がいまでもおいしいと言葉にして食べてくれるから、料理が日常だし、食べることは生きることだし。何食べようって冷蔵庫の中を思い出しながら買い物をして、丁寧とは言い難いけれど、わたしにとって心地よい暮らしがここにある。
それは家で食べることが当たり前においしくて楽しいっていうことをずっと見せてくれた母や、なんでも好きなようにさせてくれる夫、自分のご機嫌を伺う方法をいくつも身につけたわたしのおかげなのだ。
夫は闘病中だし、わたしは今無職だし、将来の不安はちゃんと感じればとても大きいけれど、小さな幸せをたくさん集めて、笑って食べてそうやって健やかに過ごすのが大得意なのだ。
このまま、すすめすすめ。
きっとなるようになる。
今朝は愛して愛してやまないパンドミのトーストを食べつつ、今更ながらスキップとローファーを見てちょっと泣いた。
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