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【映画鑑賞】『ホワイトバード はじまりのワンダー』観ました。

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秋を通り越してだんだんと冬が見えてきたように感じる、黒木りりあです。

先日、ずっと行きたいと思っていた東京国際映画祭に、はじめて参加しました。都合が合わなかったり、見たい作品のチケットがいつも瞬殺で売り切れてしまったりで、行くことがかなっていなかったのですが、今年ようやく観に行くことができました!
私が大好きな映画作品の一つに、『ワンダー 君は太陽』という作品があるのですが、この映画の続編『ホワイトバード はじまりのワンダー』が日本で初めて公開される上に、なんと監督とエグゼクティブ・プロデューサーのQ&Aセッションまであるということで、「この貴重な機会を逃すわけにはいかない!」と飛びついた次第です。
結果として、とても素晴らしい映画体験をすることができ、とても満足しております。監督からも本作のすばらしさを広めるようにと何度も伝えられましたので、今日は『ホワイトバード はじまりのワンダー』についてお話していきます。


映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』とは?

映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』("White Bird")は、2018年に劇場公開された映画『ワンダー 君は太陽』(”Wonder”)の続編です。『ワンダー 君は太陽』自体もR・J・パラシオ(R. J. Palacio)のベストセラー小説を映画化した作品ですが、本作も同作者によるグラフィックノベルを原作としています。
本作のメガホンを取ったのは、マーク・フォースター(Marc Forster)です。ジョニー・デップ主演の映画『ネバーランド』("Finding Neverland"、2004)や『007/慰めの報酬』("Quantum of Solace"、2008)などといった対策を数々送り出している監督が、2020年に原作を読みいたく共感したことから実現したといいます。
本作の主人公サラ・ブラムを演じたアリエラ・グレイザー(Ariella Glaser)とジュリアン・ボーミエ役を演じたオーランド・シュワート(Orlando Schwerdt)は、まだ目立った演技経験がないながらも、本作で抜群の存在感を見せていて、見ている人々の関心を大いに引きました。そんな皿が成長した姿を演じるのは、『クィーン』("The Queen"、2006)でアカデミー賞主演女優賞を受賞しているヘレン・ミレン(Helen Mirren)。さらに、ジュリアン・ボー見えの母親役には、『セックス・エデュケーション』("Sex Education"、2019-2023)や『ザ・クラウン』("The Crown"、2020)での活躍が記憶に新しいジリアン・アンダーソン(Gillian Anderson)が起用されています。
R・J・パラシオの小説を映画化した『ワンダー 君は太陽』
ジュリアン(ブライス・ガイザー)のもとへ、祖母のサラ(ヘレン・ミレン)がパリから訪れる。
1942年
アリエラ・グレイザー、オーランド・シュワート

映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』あらすじ

同級生へのいじめが原因で退学処分となったジュリアンは、新しい学校でも社会とどう接するべきか分からない。なるべく波風を立てず、人に意地悪もしなければ優しくもしないで生きて行こう、と人と距離を取って過ごそうとしていた。そんな彼の暮らすニューヨークに、祖母のサラがパリからやって来た。彼女はアーティストで、ニューヨークの美術館で展覧会があるらしい。人々から距離を置こうとするジュリアンに、サラは自身の過去について語り始める。
1942年のフランスは、ナチスの占領下に置かれていた。そんな中でも、比較的裕福なユダヤ人家庭に育ったサラの関心事は、おしゃれと男の子のことだった。しかし、サラでも無視できないほどにユダヤ人を迫害する動きが強くなり、とうとう彼女の学校にもナチスがやってくる。他のユダヤ人生徒たちが連行されていく中、なんとか難を逃れたサラを救ってくれたのは、クラスメイトのトゥルトーと呼ばれる少年だった。彼は学校でいじめられていて、サラは彼の名前すら知らないほど彼に関心を払ってこなかった。にもかかわらず、彼は彼女を納屋で匿ってくれたのだった。彼の名前は、ジュリアン。そこから二人のかけがえのない絆が芽生えていくが、ナチスの支配はどんどんと強くなっていき……。

戦争のある時代に、本作を観るということ

本来は2022年9月に劇場公開される予定だった映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』。さまざまな事情で公開が先延ばしになり、紆余曲折を経てようやく公開されたものの、決して良い形で人々に届けられたわけではありませんでした。そのため、あまり話題になっていないのが悲しいことですが、監督とエグゼクティブプロデューサーは「むしろ良い時期に公開された」と考えているようでした。その理由に挙げられているのが、世界の複数カ所で起きている戦争です。本作を観ていて、私もすぐに現在起こっている戦争のことを考えました。ただ、個人的には「難しい時期に公開したな」という印象も抱きました。
本作で描かれている大きな出来事は、ナチスによるユダヤ人の排斥です。「ユダヤ人である」というだけで差別され、排斥され、迫害され、殺戮される。人として扱わない。これは、絶対にあってはならないことです。本作では、それがサラの目線から描かれていて、より胸を締め付けられました。
ただ好きなパンを食べたいだけなのに、店員から差別を受ける。ただかわいい靴を履きたいだけなのに、それが命取りになる。ただ家族と一緒にいたいだけなのに、引き離される。生き続けるためには、息を殺して隠れ、屋外には出ず、学校にも行かず、誰にも存在がばれてはいけない。それは、なんて酷なことなのでしょう。しかも、サラがこうして生き延びられたケースは、幸運なことだった。それがより、私の心に影を落としました。このようなことは、絶対に二度と起こってはならない。けれども、その思いが悪い方向に進んでほしくないな、とも映画を見ながら思いました。どのような歴史があっても、戦争を行っていい理由には、ならないと考えているからです。
同時に、戦地に思いを馳せることしかない私には、一体何ができるのだろうか、とも考えました。絶対にあってはならないことが、現実で起きている。それなのに、私たちはそれを止められない。やるせなさを感じました。
映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』はこのタイミングだからこそより多くのことを考えさせてくれる作品でありながら、やはりどの時代でも難しいテーマだな、とつくづく痛感しました。

親切という名の、勇気を持ちたい

この映画を見て私にできることといったら、可能な限り人に親切にするという勇気を持つことぐらいでしょうか。
人に親切にすることや、優しくすることは、単純に思えてとても難しくて勇気のいることです。本作では、現代を生きるジュリアンが「人をいじめないし、優しくもしない」と言い切ったことで、サラの心が動かされます。サラが世界
で最も勇敢だと思っている人の名前を引き継いだ孫が、そのような発言をしたことでひどく失望しだのでしょう。
確かに、サラの特別な人だったジュリアンは、とても勇敢な人でした。自分だけでなく、家族の命をも危険にさらすかもしれない状況で、ただの同級生を救うのは勇気のいることです。しかも、彼がいじめられているのを見ても、何もしなかった少女に対して。ジュリアンにはジュリアンなりにサラを気にかけた理由がありましたが、それでもティーンエイジャーが簡単にできることではありません。自分のプライドだとか、自分の身の安全だとか、そういったものをかなぐり捨ててでも誰かのために尽くす。無謀にも思えますが、とても勇敢だったと思います。
そんな彼の物語をよく知っているはずなのに、どうしてサラの息子=ジュリアンの父親はあんな人物なのかな、と疑問に思ってしまったのはひとまず置いておいて、現代のジュリアンが社会と再び交わり、人に親切にする勇気を持ったのは良かったと思います。映画『ワンダー 君は太陽』のラストで、ジュリアンは変われるかもしれなかった。それなのに、両親にその芽を潰されてしまった。そのことがずっと気にかかっていたので、本作でその物語がようやく循環して真の意味で帰結したように感じました。さらに、1940年代のジュリアンほど大きなことでなくとも良い。小さなことからでも、自分のペースで少しずつ人に親切にすれば、それで良い。現代のジュリアンの最後の場面は、そう思わせてもくれました。それがより、見た人の心にメッセージとして残る形になっていたように感じました。
人に親切にすることは、とても勇気がいります。例えば、電車やバスで誰かに席を譲るだけでも、私は毎回緊張するし、毎回勇気を振り絞っています。でも、その勇気で誰かが少しでも幸せになれるのであれば。そして、それで世の中が少しでも良くなるのであれば。そんな勇気を持ち続けていきたいと、強く思わされました。それが、私にできる数少ない行動の一つだから。

映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』は、2024年12月6日(金)より全国ロードショーです。寒くなる季節ですが、優しい勇敢さ、新設という名の勇気で心を温めてみませんか? プレミアでは私を含め多くの人が涙を流し鼻をすする状況でしたので、ハンカチとティッシュを劇場に持っていくのをお忘れなく。ぜひ、現在の世界を見つめるためにも一人でも多くの方が劇場に足を運んでくださることを願っています。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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