もっと早く知りたかった!小学生から始められる一生使えるライティングの本3冊
「今日は遠足がありました。友だちとすごく長い滑り台で遊びました。楽しかったです」
ふと自分の小学生時代のアルバムを見つけた時、それを開くまでこのように想像していた。いわゆる「小学生構文」で書かれているだろうと。
実際は上記と全く異なり、この「小学生構文」で書かれてはいなかった。しかしその文は、これを何とか必死に避けたような、奇を衒ったものであった。小学生の私、確かに発想はいい。けれども技術が伴っていないのだ。意味が全くわからない。
実際に書いた文をここで見せたいところだが、恥ずかしいのでやめておく。とにかくその作文は自分本位で、既に当時の記憶を失った一読者の私には、何も伝わってこなかった。
何事も基本が肝心。もちろん幼い私はそんなこと知る術など持ち合わせていなかった。
そもそも日本の小学校でよいとされる作文の定義は曖昧なのだ。気持ちがこもっていて、個性がよく現れていて、それで先生や親が喜ぶ。
これがおそらく”よい作文”なのだろう。
こうして日本の小学生は勘違いしたまま進学する。そして時折要求される作文を嫌々書いては技術的な指導など何も受けずに成長するのだ。
しかしこの作文への評価が一変する時期が皆に訪れる。
それはというと、早い人ならば受験期の小論文であり、遅い人ならば就職活動のエントリーシートである。
私はどちらの道も通った。そして教えられた通り、自分の意志が伝わるように一生懸命書いたつもりだった。先生の添削も受け、事前に必要な知識も頭に入れていたはずだった。
結果はというと、正直どちらも失敗したと思う。大学受験の推薦入試には落ち、就職活動では大企業の面接まで辿り着けなかった。もちろん、これらの文章だけが理由ではないと思う。前者では面接で問題があったのかもしれないし、後者では受けた会社の要求する人材ではなかったのかもしれない。
そうして社会人になった私は、これまでとは違う学びを行う中で気づいてしまったのだ。
文章はいわば数式のように、技術を知っていれば書けるのだと。
現在の学校教育では、文章を書く技術を学ぶことはない。
それゆえ私は文章はセンスがあるかないかの問題だと勘違いしていたのだった。
今回の記事では、まだ若い読者の皆様やお子さんをお持ちの方々に向けて発信したい。私のように、「自分には文を書くセンスがないんだ」と思いこんだまま生活している人もいるかもしれない。特に高校生、大学生にはぜひ紹介する本を読んでほしいと思う。私と同じ失敗を回避できるかもしれない。
1、小学生におすすめの一冊
「めんどくさがりなきみのための文章教室」 はやみねかおる
はやみねかおる氏の名前を聞いたことのない人は少ないだろう。「名探偵夢水清志郎」や「都会のトムソーヤ」といった作品を生み出した児童書作家である。
だからだろうか。非常に簡単な文章と具体的な例でとにかくわかりやすいのだ。著者の小学校教師という経歴からか、原稿用紙の使い方に始まり表現力の磨き方までこの一冊で事足りてしまう。
私が特に感心したのは、文章を楽しく書くための工夫だ。幼いうちはやはり楽しいことでないと取り組めない。この本には、気づけば自発的に考えて書くようになってしまう工夫が記されている。
この本自体は小説を書きたい人に向けて書かれているので、後半は主にその内容となっている。よってこの本に影響を受けて作家を目指すなんてことになる可能性も否定はできない。
絶対に読んでおきたかった本である。
2、高校生におすすめの1冊
「新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング」 唐木 元
この本を紹介する理由は、文章を書くためにまず「準備」が必要なことを教えてくれるからだ。
おそらく中高生くらいの年代では、まず文章はノリで書くものだと思っているはずだ。そもそもなるべく書きたくないものだろうし、とにかく時間を割きたくないはずだ(私はそうだった)。
ゆえに文章を書く前に準備をするなんて思ってもいない受験期の学生に、ぜひこの本を送りたい。
「フレームワーク」、「構成」をこの段階で知る事は、大学時代にも様々な形で必ず生きるだろう。
3、大学生・社会人におすすめの1冊
「入門 考える技術・書く技術」 山﨑 康司
この本を読んでおけばと一番後悔しているのがこの一冊だ。
バーバラ・ミントの同名の名著をわかりやすくまとめたもので、用例がビジネス文章ばかりなので大学生にはやや難しいかもしれない。
しかし読んでほしい!
なぜかというと、とにかく技術(テクニック)ばかりが詰め込まれているからだ。数学の問題を解くためには公式を知っていなければならないだろう。それと同様に、知っていれば書けるようになる公式がこの本には載っているのだ。そんな簡単に行くわけないと思うはずだ。しかしこの本にはとにかく夢のような技ばかりが載っている!
一つ、非常に気に入った技を載せよう。「”しりてが”は使わない」である。例えを挙げると「そんな簡単に行くわけないと思うはずだが、この本にはとにかく夢のような技ばかりが載っている」この二つの文をつなぐ「が」を使わず、なるべく1主部1述部で書くという技だ。書きたい事がたくさんあればあるほど、文章は長く分かりにくくなる。それを防ぐために文を分けることに加え、「ロジカル接続詞」という論理的関係を分かりやすくする接続詞を使うことを紹介している。
文章術の本はみなさんお分かりの通り世に氾濫している。私も手当たり次第様々な本を読んだものの、「読み手の望むものを書け」だの「自分が読みたいものを書け」だの、内容について言及するばかりで、このように技を教えてくれた本はなかった。
よって一番におすすめする!大学生以外にも、プレゼンを控える社会人はぜひ手に取ってほしい。
現在中堅社員の私は、文章術に関してはこの3冊を揃えておけば問題ないと断言する。ぜひこれらの本でライティングの技術を学び、将来に活かしていただければ幸いである。