【読書】角田光代「対岸の彼女」
角田光代さんの「対岸の彼女」という本を読んだ。素晴らしい。かつて仲が良かったのにいまは会えない人を対岸の彼女とした上で、なぜ彼女は対岸にいてもう会えないかもしれないのに我々は川沿いを歩き続けるのかを問う。対岸を歩き続けるのだから相手は自分の経験していないことを経験する。ずっと一緒にいた彼女が自分の知らないことを経験しているのは怖いことだ。歳を重ねれば自分の時間を過ごして自分の殻に籠もる自由も手に入れられるのだから、ずっと会わないという意思決定もできる。しかし主人公は、再び出会うために歳を重ねるのだと結論づける。この会わなくなってしまった誰かとの関係性の描き方が絶妙である。いまはインターネットで名前を検索してしまえば会えるかもしれずそれも便利だけれども、たとえ会えないリスクが多くても会える偶然にかけてリアルな世界を生きたいとも思った。