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『にんじん』
『にんじん』
ジュール・ルナール
高野優 訳
新潮文庫
母親に意地悪をされながらも強く生きる少年のお話。自伝的小説。
胸が苦しかった。読むのがつらかった。そもそも元気な少年の楽しい少年時代のお話かと思って読んでしまったからその落差に吐きそうだった。
現在、根強い3歳児神話がある一方、早くから保育園に預けていた方が発達にいいのではないかという議論もあったりして、子どもと母親の距離感というのは未だ決着を見ない。
子どもの命と心の健康が一番だからそれを守るためなら誰がそばにいたっていいと思う。でもそれが母親であったらいいな、と母親である私は思った。
にんじんを抱きしめたい。いっしょにご飯をたらふく食べて、一日中遊びたい。ぐっすり眠りたい。大丈夫だよって守りたい。そんな気持ちになる。
終盤、にんじんは父親の本心に少し触れる。ほっとしたことだろう。ただ私はなんだか絶望した。
私は100%にんじんの味方だし、100%母親が悪いと思っている。そして大人の事情は100%子どもには無関係であるとも思っている。
そのことを大前提として、「てゆーかそもそもあんた(父親)が出張少ない仕事に転職したらええんちゃうんかい!!!」という気持ちがなきにしもあらず、だからだ。
この母親には3人を育てるだけのキャパがないのだろう。それなのに、父親であるあんたがそんなこと言うんかい。とモヤモヤしてしまう。
でもまぁそれははっきり言ってにんじんには関係ないことである。
父親の子どもとの関わり方にも大いに疑問は残るが時代的なことなのかもしれないしそこはよくわからない。
親になるとどうしても子どもの気持ちを忘れがちになる。私は今のタイミングでこの本に出会えてよかったなと思った。