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社長の想いは言葉にできるのか?【社長ブランディング】

たかしのもとに、一本のメールが届いた。送り主は経営コンサルタントの早川という人物だった。メールは簡潔で、丁寧な文面だった。

件名: 業務提携のご相談
本文:
吉免様

初めまして、経営コンサルタントをしております早川と申します。突然のご連絡、失礼いたします。
実は、私が支援しているクライアント企業のブランディングプロジェクトにおいて、御社の力をお借りしたいと考えております。特に、言葉の力で社長の思いを発信し、企業の価値をより高めることが目標です。

たかし様のご実績やアプローチに大変興味を持ち、ご相談させていただければ幸いです。一度お時間をいただき、詳しくお話をさせていただけないでしょうか?

どうぞよろしくお願いいたします。

早川

たかしはメールを読み終え、少し興味をそそられた。商品のネーミングや企業広告のキャッチコピーは数多く手がけてきたが、「社長自身をブランディングする」というテーマは初めてだった。企業の顔ともいえる社長の思いをどう言葉にして人々に伝えるのか――それは彼にとって新しい挑戦だった。

「面白そうだな」とつぶやきながら、たかしは返信メールを打ち始めた。

件名: ご相談の件について
本文:
早川様

初めまして、吉免高志です。ご連絡いただき、ありがとうございます。
貴社クライアントのブランディングについて、ぜひお話を伺いたいと思います。
お手数ですが、ご都合の良い日時をいくつかご教示いただけますでしょうか?

お力になれるよう努めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

吉免高志

こうして、たかしと早川のやり取りが始まった。後日、早川との打ち合わせが設定され、たかしは指定されたコンサルティングオフィスを訪れた。早川は快活な男性で、ビジネスの最前線を熟知している雰囲気を持っていた。

「ご多忙のところ、ありがとうございます」と早川は挨拶した後、本題に入った。「今回ご相談したいのは、ある製造業の社長のブランディングについてです。その会社は地方の工場からスタートし、今では全国的な規模に成長しました。ただ、社長自身が非常に優れた技術者である一方、ビジネスの中心に立つリーダーとしての印象が薄いんです」

たかしは興味深そうに頷いた。「社長の技術者としての側面と、リーダーとしての側面をどう融合させるか、という課題ですね」

「その通りです」と早川は続けた。「社員や取引先、さらには顧客に対して、社長の思いや価値観をしっかり伝えることで、企業のブランド力を高めたいと考えています。ただ、社長自身が自己表現が得意ではなく、言葉にするのが難しいとのこと。そこで、たかしさんにお力を借りたいんです」

たかしは少し考え込んだ後、尋ねた。「その社長が、一番大事にしていることは何ですか?」

「それが明確なんです」と早川は嬉しそうに答えた。「社長は『ものづくりで人を幸せにする』という信念をずっと掲げているんです。ただ、それをどう言葉にして発信するかで困っています」

数日後、たかしは早川の調整によって社長の小林と顔を合わせる機会を得た。面談の日、小林は控えめだが、真摯な態度が印象的な人物だった。

「早川さんからお話を伺いました」とたかしが言うと、小林は少し照れたように微笑んだ。「私は言葉にするのが苦手で…でも、私の思いを伝えたいというのは本当です」

たかしは、小林がものづくりを通じて何を大切にしているのかをじっくりと聞いていった。家族のような職場環境を作りたいこと、製品が人々の生活を豊かにする姿を想像できること、そして若い世代に技術を伝えることへの思い――そのどれもが小林の真摯な心から来るものだった。

数日後、たかしは早川と小林に、一枚の紙を差し出した。その紙には、こう書かれていた。

「もう一度、ものづくりで豊かに」

「この言葉には、小林さんのものづくりへの情熱と、人を幸せにしたいという思いを込めました。技術者そしてリーダーとしての視点を表現しています」とたかしは説明した。

小林はその言葉をじっと見つめ、やがて深く頷いた。「この一言で、自分のやりたいことがすべて伝わる気がします」

早川も満足げに「これなら社員や顧客にも響きますね」と言葉を添えた。

後日、小林のブランディングは社内外で広まり、企業としての信頼感がより高まった。社員からは「社長の思いが言葉になって伝わってきた」という声が聞かれ、取引先や顧客からも「この言葉に共感した」との反応が相次いだ。

たかしは、その成功を静かに見守りながら、新たな依頼に向けて手帳を開いた。言葉の力で人と企業をつなぐ仕事――それこそが、たかしの信念だった。

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