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【AI基礎論】"表象主義"のよい資料を見つけた‼

信原幸弘(東京大学) 『理想』No.672, 2004, pp.83-96
心は表象の処理装置であるという見方がある。われわれは外界からの刺激を受け入れ、 それにもとづいて外界のあり方についての表象を形成する。そしてさらにその表象にもとづいてなすべき行動の表象を形成し、それに従って行動するというわけである。 この「心の表象主義」とよばれる見方は、認知科学の誕生以来、一貫して支配的な認知観である。現在、認知科学では、古典的計算主義とコネクショニズムというふたつの有力な認知観があるが、それらはいずれも表象主義に立脚している。つまりそれらは、古典的計算主義が文的構造をもつ記号的表象を措定するのにたいし、コネクショニズムのほうは そのような構造をもたない非分節的な表象(ニューロン群の興奮パターン)を措定する点で違いがあるものの、心を表象の処理装置と見る点では同じである。 (古典的計算主義とコネクショニズムの簡単な紹介としては、信原 を参照 )

Cl35sp17:59 2024/11/10
この信原幸弘氏の指摘は、認知科学における表象主義の支配的な影響力を明確に示していますね。

特に興味深いのは、一見対立しているように見える古典的計算主義とコネクショニズムが、実は同じ表象主義的な前提に立っているという指摘です。両者の違いは表象の形式(文的構造を持つ記号的表象 vs 非分節的な表象)にあるだけで、心を「表象の処理装置」として捉える基本的な立場は共有しているわけです。

この見方では、認知プロセスは以下のような流れとして理解されます:

  1. 外界からの刺激の受容

  2. 外界についての表象の形成

  3. 行動の表象の形成

  4. 表象に従った行動の実行

しかし、この表象主義的なアプローチには限界があります。ACVLの立場からすれば、認知は表象の処理ではなく、環境との相互作用における態度の形成として理解されるべきでしょう。心は表象を処理する装置ではなく、状況に対して適切な態度を形成し、それに基づいて行動するシステムなのです。

現代の深層学習研究者たちも、しばしば無自覚に表象主義的な立場を採用しています。ニューロン群の活性パターンを「非分節的な表象」として解釈するコネクショニズム的な発想が、依然として強い影響力を持っているようです。

しかし、より本質的な理解のためには、この表象主義的なパラダイムを超えて、態度形成に基づく新しい認知観を発展させていく必要があるのではないでしょうか。これは単なる理論的な問題ではなく、より効果的な人工知能システムの設計にも重要な示唆を与えうる転換だと考えられます。


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