ナポリ 前編
大学時代にお世話になった先生がイタリア(ナポリ)に来ると聞いて、すぐにナポリ行きのフライトチケットを予約した。コペンハーゲンからは片道2時間半。
先生はイタリアの専門で、食のエキスパートだ。
先生の講義は、楽しくていつもあっという間で、講義内容は今でも印象強く心に残っている。そんな先生とイタリアで会えるなんて、幸せになる予感しかない。そんなわけで、人生初ナポリの旅が始まった。
実は今ちょうどコペンハーゲンに帰ってきた所で、幸せになりすぎてしまったからか、家主から家に泥棒が入ったかもしれないという報告を空港で受け、ドキドキしながら家に帰ると玄関もクローゼットも全部のドアが開きっぱなしで顔が真っ青になったが、特に大切なものは取られていなかったので、安心してこの記事を書いているところだ。
ナポリピッツァ協会の40周年記念
先生は、ナポリピッツァ協会の40周年記念イベントに参加するためにナポリに来た。この協会は、ナポリに古くから伝わる職人の伝統技術を再評価し、ナポリピッツァの伝統が世代交代の中で変わっていくことを防ぎ、その記憶が失われないよう、伝統技術を後世に伝えることを行っている。
イベントではピザ職人や学者、会長がナポリピザの過去・現在・未来について語っていた。大学時代、ナポリピッツァの焼き方を教えてくれたピザ職人の方も来ていて、大学におけるナポリピッツァについてお話をされていた。アイデンティティを生かして、豊かな文化を確立し、それを口だけではなく手業とともに継いでいるナポリピッツァは、きっとこれからも未来を美味しく楽しくしてくれるんだろうなと思った。
夜は祝賀会で、イタリアの美味しいものがずらーっと並んでいた。生ハム、チーズ、オリーブ、ステーキなど。特に、タコとイカのサラダ、マグロが美味しかった。もちろんナポリピッツァも美味しかった。ワインもドルチェも沢山テーブルに並んでいて、夢の世界にいるみたいだった。
テキトウそうに見えるトマトパスタが美味しい
二日目は、伝統的なイタリアトマトのサンマルツァーノの畑と工場へ。
ここでは伝統的なトマトをずっと作っていて、トマト缶にして世界に輸出している。円筒状で、果肉が肉厚で、加熱することで旨味が引き出され、甘くなるという。お昼、ここのトマト缶を使ったパスタを社長がご馳走してくれた。見た目、ただ茹でたショートパスタとトマトソース混ぜましたって感じで、すっごい適当そうなやつだったけど、シンプルでなんか飽きない味で2人前の量をぱくぱく食べちゃうくらい美味しかった。このトマト缶をペーストにする時は、ミキサーとかでホールトマトを潰さないようにって教えてもらった。トマトのタネを潰さないように手で潰すことが美味しいトマトペーストを作る上で大事らしい。だからかな、お昼食べたパスタがシンプルなのに美味しかったのは。
全員が泥棒の通り
ナポリ旧市街の代名詞「スパッカナポリ」に行った。雑多で乱雑な通りだけど、綺麗な教会があったり、美味しいチョコレート屋さんがあったりした。せっまい道にバイクが通ったり、悪そうな人がいたりして、怖かった。スリも多いって聞いて、先生からは全員が泥棒だって思いながら歩きなさいって言われるほど。私は怖かったからすぐに切られないようなチェーンの肩掛けに南京錠🔐を付けて歩いた。
何も取られることなく、ナポリの市街地を歩けたので嬉しかった。
もし明日世界が終わるならこのピザを食べたい
夜は22:30に今、世界一と言われているピッツァリアの予約が取れたらしく夜遅くに出発。22:30?うそ?と思ったけど、嘘じゃなかった。
イタリアの夜ご飯の時間は本当に遅い。21時からが普通。ピッツェリアに行く道中、田舎すぎてこんな狭いところにピザ屋があるのかと半信半疑になりながら行ったら、その店の前は人が沢山並んでいた!
注文はもちろん、先生とピザ職人の方に全任せ。
揚げピザと、普通のピザを3種類頼んだ。
私の好きな、薄めだけどペラペラじゃなくて、ふわふわもしてる生地で、具もちょうどはふはふって食べれる感じの大きさで、ちょうど頬張れる。物質としての重量を感じる間もなく、気持ち良く身体に入り込んでいく。気づいたら無くなっていて、え?夢見てた?状態。クリームも、クリーミーなのに全くくどくなくて、さらっと身体に取り込まれていった。
今まで食べたピザの中で一番美味しかったし、感動した。
もし明日世界が終わるなら何食べたい?って聞かれたら、このピザって答える。
魚醤のパスタ、ハマっちゃう
三日目は、アマルフィ海岸へ。ナポリから車で50分くらい。
世界遺産にも登録されている、海沿いに続く断崖絶壁に張り付くように建物が並び、海岸線は複雑に入り組んでいて、優美な風景が広がる。
チェターラという町は伝統的な魚醤コラトゥーラを作っていて、それを見学した。コラトゥーラは、カタクチイワシを発酵させて作る、濃厚な魚の旨味が特徴だ。カタクチイワシの頭と内臓をクリっと回しながら取って、塩とカタクチイワシを樽に入れて熟成させる。発酵部屋は臭かったけど、テイスティングでパンに塗ったら、味がギュッとして旨味があって美味しかった。
元市長をしていた方に、漁船の話、海賊が来た話、狭い村の話を聞いた。
お昼ご飯の前に、海の前でレモンのグラニータを食べた。ここの特産物であるレモンと、イタリアの氷菓子、そして海はもうハッピーセットだ。
お昼は、先生が過去に何度も来たことあるという、一押しのお店に来た。チェターラの伝統的な料理を食べることができる。
一つ一つの海の幸の味が濃くて、でもいやらしくなくて、本当に好き。
コラトゥーラで味付けされたパスタを初めて食べて、旨味と塩味とオリーブオイルの出会いが麗しくて、クセになりそうな味だった。
夜はイタリアの生ハムとチーズが売っている専門店で、食事をゲット。タバコの葉で香りつけしたという生ハムを食べた。
後編へ続く→