涙鉛筆【#毎週ショートショートnote】
ボクの筆箱には1本だけ特別な鉛筆が入っていた。えび茶色のボディに金色の文字でMITSU-BISHI / Hi-Uni と印字され鉛筆の後ろの方は黒地に金色のリングが高級感を醸し出し、まさに鉛筆界の王者という風格だった。
学級委員のケイコが席替えでボクの隣に座った時、ケイコがプラスチック製の専用ケースに入っていた12本の中から1本だけボクにくれた。ケイコの家はお父さんが会社経営をしているお金持ちだった。
ボクの家は両親が小さな大衆食堂をやっていて、そんなに裕福ではなかった。ケイコからもらった Hi-Uni はもったいなくて、削らずに新品のまま筆箱に入れていた。
夏休みが終わって9月1日に学校へ行くと先生からケイコが夏休み中に転校したという話を聞いた。 お父さんの会社が倒産し、田舎の方へ引っ越したらしい。
…
「みなさん、きょうから転校してきたケイコちゃんです。みんな仲良くしてあげてくださいね。」
ケイコのプラスチック製の専用ケースの中に1本だけ緑色の安っぽい鉛筆が入っていた。 ボクが運動会の徒競走でもらった1等賞の景品だった。
『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』
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