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塩人(しおんちゅ)【毎週ショートショートnote】

「殿、今川氏真と北条氏康がわが武田領への塩の販売を禁止して、もはやわが領に塩の備蓄は全くなくなってしまいました」

信玄が頭を抱えていると一通の書状が届いた。
長年の宿敵である越後の上杉謙信からのものだった。

「私は弓矢で戦うことこそ本分だと思うので、塩止めには参加しない。だからいくらでも越後から買えばよい。決して高値にしないように商人たちにも厳命しておく」

義に厚い謙信は自分からは決して他国に攻め込まず、たとえ敵国であろうと領民が苦しむことを放ってはおけなかった。

「さすが、わが宿敵上杉謙信…」


「そろそろ、農作業を一服して弁当でも食べるとするか」
甲斐の領民たちは、この一件依頼、ご飯を食べる前に越後の方角に両手を合わせるようになった。

謙信を尊敬し、謙信のことを「塩人しおんちゅ=塩の神様」とあがめた。

久しぶりに食べる塩味の効いたおにぎりは旨かった。
汗を拭いた手ぬぐいの水分が蒸発して白い結晶がキラリと光った。


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