【名言大放出?】森博嗣 スカイ・クロラ 感想
戦闘機乗りの話、という知識のみで手に取った本作。いい意味で騙された。
なんだこの名言大放出。ひとつひとつの言葉が深すぎる。
頭に紹介した言葉もそうだ。大人だって子供の頃があったから子供の気持ちが分かるという人も多いだろうが、大人が知っているのは自分が子供だった頃の子供の気持ちである。
社会が変わり続けていく中で、果たして今の子供達の気持ちを、大人たちは理解できているだろうか。
私は子供と関わる仕事をしているが、頭の文に続く、子供は大人に理解してほしくないと思っている、という意味を指す言葉に頭を殴られたような心地がした。
では、どうしたらいいのか。
登場人物のカンナミは大人びた、大人への期待を捨てているような人である。
物語はカンナミの視点で展開していくが、出来事がどこか他人事のように語られており、フワフワした状態で進んでいく。
ただ場面ごとの、その出来事を整理するように書かれるカンナミの心の中での言葉のセンスがとても良い。小説を読んだ際に比喩表現が使われていることを見かけることがあるが、この作品では「これをこれで例えるかぁ!」と読者を唸らせる表現のなんと多いことか。
言葉のセンスだけではない。登場人物は子どもである。この世界では子どもが戦争をする道具として扱われ、戦場に行くカンナミらは「永遠に死なない命」を持っている。
最終的にはカンナミの本当の正体も明らかになるが、そこにも悲劇が隠されている。
読後にも少しどんよりとした空気が漂うが、同時に忘れてはいけないことを思い出させてくれる。
子どもだって尊ばれるべき1人の人間である。
このことを胸に刻んで日々を送っていきたい。