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春のような温かさがいつもある学校に… 君の勇気の根元にあったものは 〜心の宝物297

🌷給食時間に

山に囲まれた小さな学校
この年、5年生は山あり谷ありの道を歩んでいました。一人一人の個性の豊かさがうまく溶け合わず、学級として一つの願いや値打ちに向かっていくという思いが、中々そろいませんでした。
冬休みが終わり、新学期が始まりました。どの子の胸にも、この期間が最上級生としての助走期間であるという思いは兆しており、少しずつ、学級全体としての調和や折り合いを大切に、よい方向に言動を選び取る雰囲気が醸されつつありました。

そうした方向性を、自覚的にとらえられるようになった背景には、現6年生の存在がありました。幾度か触れたように、6年生には辛い時期がありました。5年生のときのばらつき感は、現5年生の比ではなかったようです。
しかし、彼らは、担任の先生と共に、この一年で大きな山を登りました。決して掛け声だけではない、全下級生から「尊敬され、信頼される」6年生に、一人一人になりました。

上級生へのあこがれを力の源に、彼ら自身の何かが変わりつつある。
そんな手ごたえを、担任はじめ、全校の先生も、そうして、きっと彼ら自身も、感じていました。

🌷君の「最初の一人になる勇気」の根元にあったもの

給食時間。特に配膳の時間を、うまく過ごすことが、5年生は苦手でした。
4時間目の終わり。手洗いを済ませ、当番の児童はエプロンに着替え、仕事にかかる。では、他の児童は。大抵は、「静かに席に着いて配膳してもらうのを待つ」もしくは、コロナ以前であれば「全員で協力して配膳を手伝う」という様相が、合議で決定されたり、ルール化されていたりして、ルーティンとして定着しますが、そこもばらついていました。

そんな中、彼女は一人静かに着席して読書を始めました。
穏やかで、仲間から信頼されています。声高にリーダーシップを発揮するタイプではありませんが、意志が強く、それまでは、一緒におしゃべりしていた子が話しかけても取り合いません。本を読みたくなったからそうしているのでなく、配膳中の過ごし方を自らの姿で提案している気迫が伝わる姿でした。
彼女に追従する子が一人、二人と増え、ほどなく、男子も含めて「着席して静かに配膳を待つ」という習慣が定着しました。
それは、「よき選択」の事実として一人一人の、それを全員で共有できた事実として学級全員の、自信と誇りに繋がりました。

最初の一人になる勇気を発揮するのには、とても大きな心の力が必要になる。ここまでの、5年生の歩みであれば、その難しさはもっと大きなものになる。
「真面目ぶって…」のような反発を想像しないほうがおかしい。

しかし、君は行動に踏み切った。
大きな勇気を奮ったことは間違いないが、その勇気の根元には、仲間を信じる心があったのだと私は思う。一見突き放したように見える君の姿の底に、自分たちへの信頼があることを、これまでの君の言葉や行動から、仲間たちは敏感に感じ取ったのだ。

だから、君をファーストペンギンとして、新しい自分たちの海へ飛び込んだのだ。
君たちが泳ぎ着く、豊穣の大地は、もうすぐそこだ。

かけがえのないあなたへ
素敵なきらめきをありがとう
出会ってくれてありがとう
生まれてきてくれてありがとう
どうか、ありのままで
どうか、幸せで

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