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春のような温かさがいつもある学校に… 誰にもころんでほしくないから 〜心の宝物251〜253

🌷給食の終わりの廊下で

コロナ機の学校
この時期、配膳や食事中の教室にも、できるだけ足を運ぶようにしていました。子どもたちと先生方が、感染予防と楽しい給食の両立のために工夫し、懸命に取り組んでいる姿と、その過程できっと生まれる一人一人のきらめきを目に焼き付ける願いでした。

この日、少し長くなってしまったお昼の放送を終え、4年生のフロアに上がったのは、給食も終盤の頃でした。早い子は、すでに給食を食べ終え、自分の食器を片づけ始めている時間です。
廊下の90度の角を曲がってすぐのところには手洗い場があります。私が通りかかったとき、そこと周辺の床を、3人の男子が、懸命に磨いていました。

🌷誰にも転んでほしくないから

経緯を尋ねました。
片付けを終え、3人のうちの一人の彼が手を洗いにきました。そこで、手洗いの周辺に水が飛び散っているのに足を滑らせ、転びそうになりました。そこで彼は雑巾を手に取り、拭き始めます。次に来た彼が続き、更に3人目の彼も手伝いを始めたところに、私が通りかかったのでした。

元気で外遊びが大好き。興味の対象が次から次へと移っていく。思い立ったらためらいなく行動する。ときにブレーキが利かず、たしなめられることもある彼ですが、その鋭敏で生き生きした感性は、誰かの困り感に対してもいかんなく発揮されました。
「僕も前に、濡れた廊下で滑って転んだことがある。痛かったから、誰かにそうなってほしくなかった」
例え視野の片隅であっても、誰かが何かに対して困っていることに気づいたら、あっという間に飛んでいきます。そうして、その人の困り感に対して最善と判断した行動を選択します。それが例え授業中であっても、彼は行動します。それを否定しない学校でありたいと願いました。

次の彼も、同様な俊敏性と行動律をもっていました。小柄ですが内なるパワーは抜群。明るい笑顔で学級の雰囲気を変える力をもっています。
「〇〇君がやっていたから、手伝わなければいけないと思ったから」
後年、コロナ機の野外研修のキャンプファイヤーを、黒子に徹しつつも、確かな気配りと、齟齬を即座に補う俊敏な行動で大成功に導きました。

3人目の彼は、学級が違いましたが、たまたま同じように手を洗いに来て、二人が床を磨く姿を見て、ためらいなく加わりました。
「(そのままだったら)掃除の前にめちゃくちゃ汚れると思ったから」
一見ぶっきらぼうな彼ですが、そんな表情で、しかし、そのタイミングは決して逃さず挨拶を届けることを選択する人です。彼の内にある、人とよくつながり、関わることを大切に思う気持ちが、彼をこの行動に駆り立てました。

最初の一人となる勇気、その人の手助けをする勇気、既に活動している人たちの中に、あえて身を投じる勇気。

場面はちがうけれど、それぞれが直面した状況は、誰かの困り感や、そのままだったらもっとよくない方向へ状況が変化することが、容易に想像できる場面だった。

それでも、そこで、それを改善する方向の言葉や行動を想像できる人、そして、それを実行できる人の数は決して多くない。道に落ちているごみに手を伸ばすことが簡単であれば、道にごみは落ちていない。

そのごみを拾ったところで、世の中が劇的によくなるわけではない。また誰かが捨てるだけ。そんな無駄な努力を、頼まれもしないで、報酬も受け取らないで、どうして自分がしなければならないのか。

私たちは、そんな思いをいつも心に抱えながら生きているのだと思う。

ただ、一つ間違いないのは、行動しなければ、変わる可能性はないことだ。

誰も拾わなければ、ごみは決してなくならない。あれだけ散らかっていたごみが、いつの間にかなくなっているのは、そうしてそこに、さわやかな風が吹いているのは、それを拾った誰かがいるからだ。

君たちが成し遂げたのは、正にこのことだ。
君たちの行動で、たちまち世界が変わることはないだろう。
しかし、それを知った仲間の心は動くだろう。そうして、学校は、今よりさらに、温かい方向へ、少し動いていくだろう。

いつか世界が変わるかもしれない。
その可能性を、君たちは、少しだけ、しかし、確実に高めてくれたのだ。

そんな思いでお伝えしました。

かけがえのないあなたへ
素敵なきらめきをありがとう
出会ってくれてありがとう
生まれてきてくれてありがとう
どうか、ありのままで
どうか、幸せで

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