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春のような温かさがいつもある学校に…「係決め」という活動の難しさと奥深さ 〜心の宝物233〜244

🌸自分たちで自分たちを幸せにすることにチャレンジしよう

コロナ機の学校
10月のある日、4年生の学級活動で、後期の係決めの話し合いがなされていました。この会に先立って、後期のリーダー会議が行わました。6つの班の班長、副班長の計12名が参加。学級の生活をより円滑にするための、その活動を通して、一人一人が成長するための、役割の在り方を検討し、原案をもって学級活動に臨みました。
班長グループが、掃除の分担と、学級の一人一役の見直し、副班長グループが、給食当番の役の見直しの提案と司会をするという分担でした。

以下は、「そのときの一人一人が、ほんとうに前向きできらきらしていたので、ぜひ『心の宝物で賞』をあげてください!」と担任の先生が伝えてくださったエピソードです。

まずは班長グループです。

勇気をもって「チャレンジしよう」と発言した仲間を強力に支えたのが彼女でした。どの子にも区別なく、優しく接する穏やかさの内に、休日に進んで公園の掃除をする強靭さを秘めています。それを改めて示しました。


彼は、その役に立候補した思いを、その子からとにかく丁寧に聞き取りました。それを話し合いにフィードバックしたことで、その役に希望者が重複しても、安易な多数決に頼らない、全員が納得する結論を導きました。


彼女は、ともすると「楽そうだからその係に」という安易さに向きそうな仲間の思いを、頭ごなしに否定しないで受け止めつつ、「私はチャレンジしたい」と発言しました。その声は仲間の心に届き、
「難しくても値打ちあることはやってみよう」という空気を学級に生み出しました。


 そういう意識で、今度は難度の高い役にチャレンジしようとする子が重なりました。係決めと言うのは、本当に難しく、それだけにチャンスに満ちています。彼女はその子たち一人一人の思いをよく聞き、よりその役を頼みたい人を「自分を含めて話し合ってください」と提言し、その子たち自身が折り合いを生み出すことができるように支えました。


 優しく穏やかで、仲間の心に迫るような問いかけをするタイプではなかった彼が「やりたいことより チャレンジしてみたいことはなに?」と問いかけた姿には、説得力がありました。それが彼自身のチャレンジであることを、全員が深く悟ったからです。学級全員の心が大きく動きました。


 「思いはわかりました。次に何をしたらいいと思いますか」
彼女の問い返しは、役割の選択を、より自分事として考える方向へ仲間の思考を誘いました。穏やかですが強いリーダーシップがあり、仲間の笑顔と成長を大切にして、「今よりもっと温かいクラスに、学校に」という願いと行動力は、その頃も、その後も一貫していました。後年、最上級生となった彼女は、稀有なリーダーとして、春のような温かさがいつもある学校づくりの中心となります。


続いて副班長グループです。

「楽な役の取り合いはやめよう」という彼女の投げかけで、全員の意識の方向性が定まりました。勇気を要する発言です。日頃の彼女がそういう言葉で全体に話しかけることはほとんどありませんでした。それだけに、彼女の勇気は、他の子供たちの心に届きました。


どんなときも、誰が見ていても、見ていなくても、よりよい言動を選択しようとする彼女の挑戦を全員が知っていました。それだけに「難しい仕事にチャレンジしよう」という呼びかけは説得力を持ち、話し合いの雰囲気を前進的で清新なものにしました。


明朗で快活な彼ですが、それまでの学級の中での立ち位置は、どちらかと言えばフォロワーで、ときに調子に乗りすぎてたしなめられるような一面もありました。後期、一念発起して副班長に立候補し、新しい自分に挑戦している彼が発した「後期だから難しいことをしよう」という言葉は正に有言実行でした。


おとなしく、それまでは、日常の仲間との関わりの中でも多くを語らなかった彼も、後期、副班長に立候補しました。元気な子にからかわれても、激したりすることは決してなく、苦笑いでかわす温厚な彼が語りかけた「難しいことをしてみよう」という言葉は、彼らの心にすうっと入り、役の難易度ではないところで、互いに折り合いながら、最適な解決策を見つける営みを導きました。


豊かな発想力がありますが、興味や関心の薄い部分に対して一定時間集中することや、そのときの感情のコントロールが、それまでの彼はあまり得意ではありませんでした。そんな自分を理解し受け止め、副班長という役割に挑戦し、選出されました。コロナ機の給食当番の仕事の重要性を力説し、配膳作業の厳格さを高めることをあえて提案した姿は、仲間の感動を呼びました。


彼女が副班長に立候補したときに、戸惑いを感じた子が実は多くいました。おとなしく、前面に出ることはほとんどなかったからです。大きな挑戦を、しかし学級の仲間たちは肯定的に受け止め、役割を託しました。「一回難しいことをしてみましょう」という語りかけは、切実な響きで仲間の胸に届きました。

🌷「係決め」という活動の難しさと奥深さ


君たちももう4年生で、しかも後期なのだから「学級の係決め」という時間を何度も経験してきているだろう。その中で、「仕事を選び取る」という時間ほど、その人の内側が表に出るときはないことを、身に染みて実感してきたのではないだろうか。
話し合いがエゴイズムの雰囲気に支配されれば、気まずさや悲しみしか残らない。その後の学級生活もおそらくは、温もりや、安心といった、互いの笑顔や成長を支え合う空気とは距離のある、厳しいものになるだろう。

この日の話し合いには、そんな経験を生かし、学級全体の幸せを向上させるという共通の目標に向かって、自分の生き方を問いながら、自分の仕事を選び取るという雰囲気が、無理なく、半ば約束事として、一人一人の胸の内に成立していた。

より困難なことに、挑戦しよう、4年生なのだから、後期なのだから。

そんな思いを全員が共有しているという安心感があるから、彼も彼女も、思い切った語りかけができた。それを互いが温かく受け止め合った。

一人一人の挑戦と、学校再開以来、ここまで担任の先生と共にたどった君たちの歩みに、心から敬意を表します。

そんな思いでお伝えしました。

かけがえのないあなたへ
素敵なきらめきをありがとう
出会ってくれてありがとう
生まれてきてくれてありがとう
どうか、ありのままで
どうか、幸せで

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