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春のような温かさがいつもある学校に… こうすれば 調理員さんが少しでも助かると思うから 〜心の宝物223

🌷給食の後で


コロナ機の学校
この学校には給食の調理室があり、子どもたちの給食は自校で賄っていました。一定以上の規模の自治体では、今では珍しくなったかもしれません。

長い目で見たときのコストの問題や、食物アレルギーその他の、食に関する個別のニーズへの配慮を、できるだけ効率的に推進するために、全国的には新しい設備を備えた、共同調理上の運用へとシフトが進んでいます。

おかげで、この学校では、昼近くになると、調理室からおいしそうな香りが漂ってきます。無論メニューは周知済みですが、カレーの香りが漂い始めると、子どもたちはもうそわそわ。
そんなタイミングで教室を訪れると、検食で、私が一足早く給食を頂くことを知っている子どもたちから、「今日はカレーだよ」「校長先生だけ早く食べてずるい」などと責められたものでした。

こうして、作ってくださる方が身近におられることを含めて、五感で食を感じられることは、子どもたちの心身の育ちと学びにとって非常にありがたい環境でした。

🌷こうすれば 調理員さんが少しでも助かると思うから


賑やかに、と言いたいところですがこの時期は黙食でした。それでも、仲間と食べられる給食はかけがえのない時間。多く子が食べ終えた、5年生の廊下では、食器の片付けがたけなわでした。

子どもたちが食べた後の食器は、この時期は、少し強い言い方ですが危険物です。それまでは、例えばグループでまとめて食器を返していましたが、一人一人が、順番を待って、食器かごに自分の物を返していくというオペレーションをとっていました。

掃除のないこの日は、給食の後すぐ昼休み。気もそぞろの子供たちは、できるだけ早く、グラウンドへ出たくて、片付けもぞんざいになりがちです。

彼女は、この日の食器当番でした。
そうして、急ぐ仲間たちから、ゴム手袋をはめた手で、その日サラダが盛り付けられていたお皿だけを受け取り、お皿に残ったわずかなドレッシングを、食缶にもどし、汁気を切ってから食器かごに入れていました。
担任の先生がねぎらいつつ、そうしている思いを問いました。

「お皿の上にも下にもドレッシングがついていたら大変。こうした方が、調理員さんが、少しでも助かると思うから」

すらりとした長身を折り曲げるように、ドレッシングを食缶に移しながら、笑顔で彼女は答えました。周りの子たちは、グラウンドへ急ごうとしていた足を止め、口々に彼女にお礼を伝えました。

もちろん、みんなも意識しているから、そのまま返しても、失礼という状態ではなかった。
それでも、あなたがそうしてくれたおかげで、それを手に取り、洗浄するときの調理員さんの負担はきっと小さくなっただろう。
何より、心に、あなたの思いが確実に届いたことだろう。

異物の混入、食材の変質など、どれだけ慎重に取り組んだとしても、いつ何時何があってもおかしくない。それが、調理という仕事の、逃れられない本質の一つだと思う。
そうであるにもかかわらず、「何もないことが当たり前」という前提を、とりわけ学校給食で実現し続けている調理員さんたちの、毎日の緊張と努力は、私たちの想像をはるかに超える。

きっと、あなたは、そのことを、心の深いところで理解しているのだろう。そうして、自分にできる精一杯の行動で、感謝を伝えようとしたのだろう。
あなたの行動は、今、このコロナ機という時代に、たとえ小さくとも、人とよく生き合うための一歩を踏み出すことが、どれほど多くの人に幸いをもたらすかを教えてくれた。

だからコロナは「機」ともなりえることを示してくれた。
ありがとう。

そんな思いでお伝えしました。

かけがえのないあなたへ
素敵なきらめきをありがとう
出会ってくれてありがとう
生まれてきてくれてありがとう
どうか、ありのままで
どうか、幸せで

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