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春のような温かさがいつもある学校に… 自分に誠実に 黙々と自分を生きる 〜心の宝物345

🌷物静かに

コロナ機の学校
6年生の彼女は、いつも静かなたたずまいの人でした。
授業中も、グラウンドで遊んでいるときも、休み時間の教室でも、大きな声ではしゃいだり、何かを主張したりすることはありません。よくも悪くも、喜怒哀楽を、感情のままに表現することはほとんどありませんでした。

彼女のお父さんとは、彼の中学時代を、担任として、部活動の顧問として共にしました。口数は多くありませんでしたが、にぎやかなことが好きで、多くの仲間から親しまれていた人でした。当時は細身だったのが嘘のように、今や見上げるような偉丈夫ですが、
「(娘は)ちょっとおとなしすぎて」
と苦笑いする笑顔はあの頃のままです。
「それが今の彼女のありのままだと思えばそれでいいじゃないか。あの物静かさこそが自己表現だと思おうや」
等と話したものでした。

🌷自分に誠実に 黙々と自分を生きる

冬休み明けの、ある日の掃除時間、6年生のフロアにいました。
彼女がワークスペースを掃除していました。「ワークスペース」とはいうものの、児童数の減少に伴い、どこかのタイミングで普通教室の壁を取り払い、廊下と一続きにして、集会や展示等に使用できるようにした空間です。児童が直に腰を下ろすことができるよう、クロスが張ってありましたが、そのクロスも、長い年月の使用で、縁のあたりはめくれてしまっています。毛羽立ちや汚れもずいぶん目立っていました。

彼女は、ペアの男子が、掃除機で大まかにほこりを取った後、使用済みの歯ブラシや、ガムテープを使い、クロスを丁寧に掃除していました。毛羽立ちの間にからみついたほこりを、歯ブラシでこそげ、紙テープに付着させる。中々はかどらないので、一度の掃除で全面をきれいにすることはできません。今日はここからここまで、次の日はそこからあそこまで。
来る日も来る日も、根気強く、作業を繰り返してくれていることが、それまで彼女が取り組んでくれた部分の清らかさから一目瞭然に伝わりました。

「ありがとう。きれいになったことが一目でわかりますよ」
敬意を伝えますが、彼女はさほど表情を変えません。しかし、小さく会釈を返してくれました。

「おとなしすぎる」という言葉は君にはあたらない。
なぜなら、その言葉自体、他との、例えば君の仲間や兄弟との比較を前提としているからだ。
君は誰とも比べられる必要はない。
黙々と、誠実に、自分を生きている。その生き方の表現が、君の物静かなたたずまいであり、このワークスペースの掃除の姿なのだ。

ありのままの君をとても素敵に思う。
そのことを、今度こっそりと、お父さんに伝えるよ。

かけがえのないあなたへ
素敵なきらめきをありがとう
出会ってくれてありがとう
生まれてきてくれてありがとう
どうか、ありのままで
どうか、幸せで

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