
春のような温かさがいつもある学校に… 人が嫌がるけれど大切な場所 〜心の宝物364〜367
🌷そこに膝をつき 雑巾で磨く
山に囲まれた小さな学校
1年間の縦割り掃除も最終盤に入りました。少人数の学校なので、そうでなくとも、子どもたち同士の気心は知れていますが、やはり、願いと活動を共にすることで、絆の質と強靭さはどんどんと高まっていきます。
この日の掃除にも、そんな姿が表れていました。
トイレ掃除をのぞき込んで、廊下掃除の児童が目を丸くしています。彼らの視線の先には、廊下から続きのトイレの床に、膝をついて全力で磨く仲間の姿がありました。
衛生面での配慮からでしょう。これまで、そこを雑巾で拭くというミッションはありませんでした。しかし、縦割りグループで話し合い、そのほうがきれいになると結論付けて、水拭きすることを決しました。
今まで、自身がそうしたことも、仲間がそうする姿を見たこともイメージしたこともなかった他の児童が驚いたのは当然の成り行きでした。
🌷根を張り 芽吹き始めた 新たな文化
言い出したのは、4年生の彼でした。
体格に恵まれた彼は外遊びが大好き。何事にもファイトをもって取り組む人でした。周囲を見る目も温かく、高い頻度で「黄色い紙」を届けてくれました。私にまで「いつもげんかんで、みんなのなまえをよんであいさつをしてくれてありがとう」と、書いてくれた紙は、10年後の今も、自宅の壁に貼ってあります。玄関の土間を水拭きしている仲間の姿を見て、ここも雑巾で拭いた方がよいと思いついたということでした。
「いいね、やろう」とすかさず賛同したのは6年生の彼でした。
小柄で優しく、いつもおだやかな笑顔を離さない人でした。体格でいえば、自分より大きな4年生の先の彼からも、敬意をもたれていました。年長者だからではありません。どんなときも、誰かを責めたり、たしなめたりせず、まず自分が行動する。背中で語る、優しく、強靭なリーダーシップが、同じ掃除場所の子に浸透していたからです。
3年生の彼女も、丁寧に床を磨いていました。
多くを語らず、喜怒哀楽をあまり表面に出さない人でした。学校では、そんな静かな存在感を醸す人でしたが、地域では、バレーボールや、和太鼓のチームに入って活躍しています。このときの掃除をはじめ、彼女が黙々と物事に取り組む姿は美しく、表面の静けさに透けて、内面の強靭さが伝わりました。
同じく、3年生の彼も全力で取り組んでいました。
ほんとうのこと、よいこと、うつくしいことに感動する豊かな感性をもった人でした。自分が苦心していることを、乗り越えていく仲間の姿を拍手で讃えられる、そんな素直さと強靭さをもった人でした。彼がトイレの床を、心から楽し気に、全力で磨く姿は、仲間たちの目を引きました。取組の輝きと願いが、彼のおかげで一層強く、周囲に伝わりました。
衛生面のことを考えれば、再考を促すべきだったかもしれない。
そこまですることはないと、言葉を選んで説明し、緩やかに、中止することに納得を得ることを、私はすべきだったかもしれない。
しかし、それよりも、君たちが創り出した新たな文化を大切にしたかった。仲間の姿に触発され、発想し、自分たちで話し合って、そうすると決めた値打ちある活動に水を差したくなかった。
新たな文化が音もなく、学校に根を広げていることが、君たちのおかげで目に見えた。その根からまた新たな文化が芽吹いている。やがて来る春、柔らかで温かい風を受けながら、美しい花が咲くのが目に見えるようです。
君たちの決と行動に、心から敬意と感謝を伝えたい。
ありがとう。
かけがえのないあなたへ
素敵なきらめきをありがとう
出会ってくれてありがとう
生まれてきてくれてありがとう
どうか、ありのままで
どうか、幸せで