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春のような温かさがいつもある学校に… 周りがどうであっても 〜心の宝物335

🌷吹きさらしの冬の廊下で

コロナ機の学校
遠い昭和の高度成長期、この町には、一気に労働人口が増えた時代がありました。その方たちが町に根を下ろし、やがて親となるころには、小さな町の小学校は、全国有数のマンモス小学校へと変貌します。
児童数の増加に対応するため、増築を繰り返したあとが、校舎や校地のあちこちに散見されます。三棟をつなげた構造の、中央の校舎である中舎1階の出口と、そこからつながる北側の北舎1階とは、1メートル近い段差がありました。
吹きさらしの土間から、長いスロープが設置されています。その土間から、スロープを経て、北舎へ入った廊下が、3年生の彼女のクラスの分担場所でした。

🌷周りがどうであっても

小柄で、口数も多くはありませんでしたが、ファイトの塊のような人でした。2歳年上のお兄さんは空手の上級者。兄弟そろって、強靭な意志の持ち主でした。

彼女の分担場所は、校舎内でも、とりわけ昼休みから掃除にかけては、異動する児童のメインの動線となり、極端に人通りが多くなります。
音楽が鳴り、がやがやとさざめきながら移動する子どもたちの足元で、彼女は既に掃除を始めています。
口元を引き結び、同じほど固く絞った雑巾で、床を磨き続けていきます。

傍らを通る子たちは、そんな彼女に気づき、気迫に触れた瞬間に、一様にそれまでおしゃべりしていた口をつぐみ、足早に掃除場所に急ぐのでした。

真冬の風と水の冷たさ、まだ休み時間であること、それに伴う、周りの子のリラックスしたざわめき。自分の心を、掃除に取り組むという方向に向けづらい条件が、これほどはっきりとあることも珍しい。時間まで何となく過ごし、チャイムと同時におずおずと始める。
私なら、そんな自分を選んでしまうかもしれない。

決して一過性の勢いでも、無邪気さでもない。
もうすでに、視界の先に、4年生への進級をとらえているあなたの背中からは、決然とした意志の力が伝わる。
あとでそこを通る誰かのために、その場所を一生懸命にきれいにする。
そんな君の姿は、今、君の横を通る誰かの心にも、勇気を届けている。
誰あろう、私もその一人です。
あなたの強靭さを尊敬します。

かけがえのないあなたへ
素敵なきらめきをありがとう
出会ってくれてありがとう
生まれてきてくれてありがとう
どうか、ありのままで
どうか、幸せで

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