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春のような温かさがいつもある学校に… 校長先生、わかったよ! 〜心の宝物254・255

🌷栗よりおいしい13里

山に囲まれた小さな学校
秋のある日の全校集会。校長の話の中で秋の風物として、焼き芋の話をしました。
近隣の牧場の方から肥料を提供していただいたおかげで、学校園のさつま芋畑はどうやら豊作。この年の「焼き芋大会」は、きっと楽しいものになることを話す流れで、何気なく、「さつま芋は、焼くと『じゅうさんり』という別の名前がつくのだよ」と話しました。

子どもたちはきょとんとしています。
その表情が愛らしく「その名前には、ちゃんと理由があるのです。誰か知っていますか」と問いました。誰の手も上がりません。知りたそうに眼を輝かせている子もたくさんいました。

「焼き芋大会のときにちゃんと説明します。このことも楽しみの一つにしてくれたらうれしいです」
少し長くなってしまったので、そう言って話を切り上げました。

🌷校長先生 わかったよ!

次の日の朝、いつものように児童玄関で、登校する子どもたちを迎えていました。
はじめは、2年生の彼でした。
私を見つけるが早いか、「校長先生、わかったよ!」としがみついてきました。
昨日の集会のことが、意識からすっかり抜け落ちていた私には、はじめは何のことかわかりませんでしたが、
「ほら、昨日の焼き芋のこと!」と目を輝かせる彼の笑顔で思い出しました。
「よし、分かった。では、今日の休み時間にきてください」と伝えました。
「わかった!」と言って、教室へかけていく彼の背中全体が笑っているようでした。

ところが、業間の休み時間、真っ先に校長室に来たのは5年生の彼でした。
「昨日の焼き芋の名前のことを家族に話したら、おじいちゃんが教えてくれました」
「わかった。もうすぐ2年生の彼も説明に来るから、一緒に聞いていいですか」
そんな話をしているうちに、校長室のドアがノックされました。

二人並んでソファに座り、2年生の彼から答えてもらいました。
「栗よりおいしいからじゅうさんりって言うんだよ。栗は9で、それより4多いから13だってお母さんが言ったよ」
「『栗よりうまい十三里』という言葉があるとおじいちゃんに聞きました。栗を漢字で9里と書きます。里は一里、二里の里です。それよりおいしいの「より」を4里と読んで9より4おいしいのだから足して13で十三里です」

それぞれの説明から伝わったのは、この言葉の由来よりも、探究心の旺盛さと、それを受け止めてくださるご家族の温かさでした。
2年生の彼は、好奇心旺盛で活力の塊のような人でした。
5年生の彼は思慮深く、自分のペースや考えを守る人でした。
二人とも、人間関係のしがらみを小器用に生きるタイプではなく、教室で楽しからぬ思いをすることもありました。

そんな彼らが、学校の話題を家でご家族に伝えている。それをご家族が受け止めてくださり、話し合いながら、それぞれに分かるように伝えてくださっている。笑顔、明るく、温かな食卓。勝手にそんな想像をして、うれしくて仕方なくなりました。

彼らが帰った後、早速お家の方に電話をして、彼らの探究心への敬意と、それを支えてくださっていることへのお礼をお伝えしました。私が想像した通りの、団らんだったことがわかりました。

どんなことにも関心をもって、疑問を解き明かそうとする心をどうか大事にしてください。
温かなご家族に、どうか感謝の気持ちをもってください。そうして、いつかあなた自身がご家族を支えてください。
よかったね。
私もとてもうれしかったよ。

そんな気持ちでお伝えしました。

かけがえのないあなたへ
素敵なきらめきをありがとう
出会ってくれてありがとう
生まれてきてくれてありがとう
どうか、ありのままで
どうか、幸せで

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