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初めてのバイト
僕は、バイトを自分で見つけたことに有頂天になっていた。
しかも、バイト先は家からも近く、毎日通る場所にあった。
前日は少しの不安とワクワク感で寝れなかった。
初日
「お願いします」
「今日から宜しくね」
やっぱり優しそうだ。
従業員の人たちにも紹介してもらって
「お、小さいなぁ~」
「頑張れよっ」
うん、みんなも気さくに接してくれる。
安心だ。
和菓子屋さんの裏方作業で最初は簡単な指示に従って箱を移動さすことをやった。
「あっちに運んで」
「はい」
重い・・・
「大丈夫かぁ?」
「は・・い」
フラフラしてる僕に周りは心配そうに見ていた。
多分、ひっくり返されたら大変だと思っていたんだ。
「あそこの棚に乗せてくれる?」
「はい・・」
しかし、僕の背では届かない。
「はは・・ごめんね、こっちでやるからいいよ」
「すみません・・」
落ち込む僕に
「慣れたら大丈夫だから」
僕は、さっきまでワクワクしていた思いが一気に薄れていくのが分かった。
不安をかき消されるかのように
「あ、それが終わったらこっちのを運んで」
「・・・」
とにかく僕にとって重くて重くて仕方がなかった。
バイトってこんなにも大変だったことを思い知らされた。
体力がない自分とチビの自分のコンプレックスが再び蘇ってきた気分だ。
高校に入って、毎日がやっと楽しいと思えるようになって、すっかり自分を見失ってしまっていた。
周りの心配そうな顔・・・
笑顔が引きつっているように見えた。
もしかして・・・
最悪な奴を雇ってしまったって思ってるかなぁ~
「お疲れさん」
「お疲れ様です」
僕は疲れと落ち込みで帰りの足取りは箱よりも重かった。
帰ったら聞かれるだろうな・・
「どうだった?」って
僕は、きっと
「うん、別に」って言うんだろうな・・
つづく