老いなき世界が到来!?「LIFE SPAN」 要約・所感
おはようございます。本日はデビット・A・シンクレア著書のLIFE SPAN-老なき世界-を取り上げます。
ハーバード大学の世界的老化研究の権威が書かれ、世界20か国でベストセラーになり話題になった書籍です。「老化は病気である」これまでの医学の常識を覆す衝撃的な内容であるのがその理由です。
しかし、読み進めていくと先端医学的研究のもとしっかりとエビデンスがある事実が次々と登場し読者は納得させられていきます。ごく簡単にではありますが、以下の内容を3つに分けて説明していきたいと思います。
1. 老化は病気である
そう聞いて納得がいかないのも理解できます。本書を読む前はわたしもそうでした。しかし、病気とは
①体か衰える
②生活の質が下がる
③病的な異常がみられる と定義されます。
実は老化はこれをすべて満たしています。そうであるのに老化は病気でない思う理由は何か。それは、ほとんど全ての人が老化するからです。人は大半の人が患っていない状態で、一部の人が患っている状態を病気と捉えるようです。たしかに、多くの人が患う花粉症を病気と捉えている人は少ないのではないでしょうか。
仮に近い将来に老化のメカニズムが解明されて治療が確立し、多くの人が老いない世界が訪れ、一部の人だけが老化している状態となれば、人は老化が病気と捉える事でしょう。
現在、多くの人が病気と認識している、心臓病、糖尿病、がん、認知症も実は老化という病気が引き起こす合併症であるとしたら…街の総合病院に行けば、各診療科が細かく分かれ(循環器内科、糖尿病内科、脳神経内科等)それぞれが専門分野の治療を行っています。
もしかするとそれは老化という病気が進行し慢性化した合併症を対処療法的に治療しているに過ぎないかもしれません。より上流にある、そして諸悪の根源にあたる老化が治療出来るとすれば…未来の病院の姿は今とは全く異なる姿となっている可能性もあるでしょう。
2. 老化のメカニズム 細胞の外分化
では老化はどのようなメカニズムで起こるのでしょうか。本書ではそれをエピジェネティクス地形という概念で説明しています。エピゲノムとは細胞のアイデンティティをさします。
今一つの未分化の細胞(可塑性があり何にでもなれる)が山の頂上近くにあります。そこから転げ落ちていく過程で、山肌で区切られたコースを枝分かれしながら進んでいきます。これを細胞の分化といいます。
山のすそへつく頃には細胞の運命は定まっており、細胞は行き着いた先の器官でその役割を果たします。皮膚なら皮膚、爪なら爪と運命が決まった細胞に可塑性はありません。若いうちは山肌が深く(コースがしっかりしている)細胞のアイデンティティと機能が安定しています。
しかし、生きている中で様々な外的刺激つまりX線や紫外線といった有害な刺激、不健康な習慣、過度なストレスにさらされます。すると、地震による山肌の侵食によりコース壁が浅くなり、定まった位置で安定していた細胞がコースアウトして本来の運命器官から移動することが出てきます。
つまり、はじめは皮膚の細胞100%だった状態が、5%10%と爪の細胞が混ざってしまった状態になってしまいます。これを細胞の外分化といいます。皮膚に混ざった爪の細胞は皮膚取って代わることは出来ないので皮膚でゾンビ細胞化します。間違った細胞が間違った場所で働いてしまう、これが老化のメカニズムです。
つまり老化とは細胞の外分化とも言えます。ゾンビ化した細胞は分裂こそやめているが、そこに居座りサイトカインという小さなタンパク質を放出します。これが慢性炎症を引き起こし、いずれ心臓病や糖尿病、認知症といった病気を引き起こすのです。
3. 老化を遅らせる対策
では老化を遅らせる、つまり治療するにはどうすれば良いでしょうか。それはすなわち山肌を修復し際立たせ深く保ち続けることを意味します。具体的な方法はあとの4つになりますが、総じて言うと適度なストレス環境に身を置く事とされます。
詳しい説明は省略しますが、人間はストレス環境にさらされると細胞の遺伝子回路が生殖(分裂)から修復へとスイッチを切り替えます。これは生物の生存本能ともいえるサバイバル回路が働くためです。
最新の研究によるとこの時に同時に働くのがサーチュン遺伝子(長寿遺伝子)なのです。この長寿遺伝子は細胞の修復を調整します。このように適度なストレス環境が細胞を修復し若返らせることをホルミシスといいます。もともと、薄めた除草剤を撒くと雑草の成長が早まった事実から発見されたそうです。
本書では、具体的な方法として
①食べる量を減らす
②動物性タンパク質の摂取を控える
③運動をする
④暑さ寒さに体をさらす
と挙げられておりました。食事と運動による健康法については他に専門書が沢山ありますのでまた別の書籍の紹介機会に譲ります。④については他の本では、あまり聞く機会がないように思います。この点でいうと四季が豊かで暑さ寒さともに厳しい日本が世界一の長寿社会であるはこういった背景が理由としてはあるのかもしれないですね。
本書の中にはこの他に老化を治す治療薬のことも多くのページを割き詳しく書かれています。ただ今回はこの部分は取り上げません。個人的に先に挙げた対策のような自助努力で出来ることをまずはやり尽くす、そういった土台を築き上げる事が優先だと思っているからです。ただ何年先になるかは分かりませんが、その自助努力の上でも自分自身の老化が病気であると自覚するようになった時のために、正しい知識は付けておきたいと思います。
この本は医学書並みに分厚く読むのに多少の苦労は否めませんが、その分得られるモノも大きいと思います。皆さんも是非手にとって老ない体を手に入れてみてください。