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恐れず。心を込めて。【実は人をモヤッとさせる 失言図鑑/失言研究所】

「え?
 これも言っちゃマズい?」

 言葉の地雷を踏まぬよう、この本を一読するのはいいかもしれない。でも、「恐れるだけでいいのかな?」
 今日は、そんなことも思った一冊をご紹介。

【実は人をモヤッとさせる 失言図鑑/失言研究所】

きっと誰でも経験あるはず・・・「そんなつもりでは・・・!」

 

私の身内の失敗談をひとつ・・・。


 親族が集まる酒の席。これからお客様をお迎えしようという少し前の時間に、親族のうちでもごくごく近しい3家族が集まって打ち合わせをしている。なんでも、その後の酒宴にお招きする方の中に、つい最近、離婚をされたAさんがいらっしゃるという。

「夫婦の話題には、絶対に触れるなよ」

「奥さんの話は、絶対にするなよ」

そんな打ち合わせをして、一同「よし。」と頷き合った。

やっちまったな、おい

 宴の席は数家族が集まり、それぞれが家族を伴ってきたため非常に賑やかに、そして和やかな時間を過ごしていた。男たちは酒も進み、笑い合う声も大きくなっている。そんな中、普段は行き来のない男性同士が隣り合った。親戚とは言え、ちょっと遠い間柄。酒を酌み交わしながら、なんとなく話題の糸口を探す。
 一人がご機嫌にそのきっかけを作った。

「Aさん、そのセーター、センスいっすな!!
 奥さんに選んでもらったんすか?」

 会話には加わっていないものの、なんとなくチラチラとその場を見つめる関係者たち。自分たちの会話も上の空になりつつ、男性二人の会話の行方を見守る。

 ・・・そう。
あれほど打ち合わせをした地雷を踏んでしまったのだ。踏んだのは私の父。

「Aさんだば、いっつもセンスいいもの!
 今日のセーターもいごど!(いいこと)」

 凍りつくような時が流れかけたその瞬間、すかさず気を利かせた叔母が笑顔で盛り上げ、地雷を踏んだ自覚のない父は満面の笑み。そしてセンスのいいセーターにスポットを当てる流れに乗ったAさんも、穏やかな笑顔で礼を言い、その場はことなきを得た。

・・・父よ・・・打ち合わせの場にいたんだよな・・・?

「こぼすなよ」と言われるとこぼす子供

 教育現場にいる友人に聞いたことがある。
「こぼすなよ」と言われると、子供はこぼす傾向にある。
脳は、否定する言葉を理解できない。だから、「こぼすなよ」と言われると、〝こぼす自分〟をイメージしてしまう。こぼしてはいけないのだとしたら、「こぼすなよ」ではなく、「気をつけてゆっくり食べようね」と言うのだ、と。

 否定する言葉を理解できないのは、子供に限ったことではない。それを踏まえると、示し合わせて酒宴に臨んだのに(酒が入っていたとはいえ)地雷を踏んでしまった父のような人には、「言うなよ」は難しかったのかもしれない。
 Aさん対策としては、「○○がご趣味だから、会話にはその要素を散りばめよう!」みたいな代替会話案などがあったら良かったのか・・・。


衝撃!「わかる!」も「たしかに!」も「なるほど!」も・・・!?

 
 それはほんの一例だったとして、日常には〝本人は良かれと思って言ったのに、裏目に出てしまう〟といった落とし穴はたくさん潜んでいる。常識的に話すことを心がけていれば、そうそうそんな場面には遭遇することはないだろう、と言葉を使った仕事をする私はたかを括ってこの本を開いた。

失言って、こんなにもあるのか・・・

 本書には、

  • あいづちの言葉

  • 日常会話の言葉

  • ほめる言葉

  • やさしさ・励ましの言葉

  • お願い・断りの言葉

  • 育児の言葉

  • 自虐の言葉

  • ジャッジする言葉

・・・といった具合に、8章に分けてたくさんの言葉が並んでいる。中には、「わざわざありがとうございます」とお礼を述べる言葉や、「〇〇してもよろしいでしょうか」とお伺いを立てる言葉、「わかります」と共感を表す言葉も、時と場合によっては〝失言〟になりうる可能性をはらんでいる・・・とある。

「・・・え!!良かれと思ったら違った!!」
といった地雷レベルではないにしろ、〝失言〟と捉えられかねない言葉もあるというのだ・・・!
怖い、怖すぎる・・・!

じゃあ、なんて言えばいいのよ

 言葉面だけを見ると悪意などかけらもない言葉でも、受け取り手のコンディションや会話の流れ、また時代によっても、その意味が変わる場合がある。その背景までを、〝失言例〟と共に説明してくれているのがこの図鑑だ。

  • 失言かも?の言葉

  • その言葉を発したシチュエーション

  • 「言い換えるならこっち!」

  • なぜ、失言になりうるのか?

安心して欲しい。全ての流れがわかれば、「ああ、それなら使わないよな、確かに・・・」と納得できるはず。納得できれば、みすみす地雷を踏むような事態には陥らないはずだ。「言い換えるならこっち!」という例が示してあるのもありがたい。言葉のマナーとして、また円滑なコミュニケーションを取るための言葉のコレクションとして、覚えておいて損はない言葉が並ぶ。

怯えてばかりいること勿れ

 世の中には、〝気遣いハラスメント〟なる言葉もあるという。相手を思い、失敗を恐れるあまりにコミュニケーションを極端に避けてしまう現象だそうだ。また〝一億総発信者時代〟とも言われるこの時代は、SNSの発達により誰でもが気軽に発信者になれる一方で、発信した言葉が思わぬ方向に一人歩きをし〝炎上〟や、場合によっては訴訟事案にまで発展するようなこともある。
 だからこそ、こういった言葉の図鑑を頼りにする人も多いことだろう。もちろん私もその一人であることには間違いない。(特に、『5章/お願い・断り』の言い換え例は本当に実践したい言葉ばかりだった)

 言葉には、想いがセットになっていて欲しいと思う。どんなに気の利いた言葉でも、耳障りのいい言葉でも、「こう言っとけばいいっしょ」みたいな扱いは透けて見えると思うし、空っぽの言葉で相手の心に届けられるものは少ないと思う。
 逆に、時に「それは言ってほしくない」と思われるような言葉でも、相手の心に届けられるものはあるはずだ。なぜその言葉を相手に届けたいと思ったのか?その想いがあれば・・・、そしてその伝え方(いつ言うのか?どういう状況で言うのか?どのタイミングで言うのか?など)にも、相手を尊重する想いがあれば、相手を不快にさせないようにと必要以上にビクビクすることはないと思うのだ。

 親しき仲にも礼儀あり

という言葉がある。
(昔の人って、本当に真理を突いているな、とも思うし、人間の悩みの根っこは意外とどの時代でも変わらないのでは?とも思う)
それは、親しくない仲にも礼儀さえ忘れなければ、言葉尻一つを捉えて騒ぎ立てられるようなことにはならない、とも捉えられると思う。


失言図鑑。

全体がこのような構成になっている。さすが、〝図鑑〟!!


この本を参考にするのなら、右のページにある「失言になりうる言葉」例を丸暗記しても意味がない。その隣のページにある、「なぜ、この言葉が失言に早変わりしてしまうのか?」を説いた解説を読む方が有効である。
 

 




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