才能は自力で作れる! ~書評 ぼくたちは習慣で、できている。~ その2
前回に引き続き、書評を続けていきます。本書を通して習慣を身に付けるノウハウを理解できます。いい習慣を身に付けたいと思っている方には大変おススメです。
実体験を通して”習慣を身に付けること”が、物事を継続して行う際に重要だと理解できました。
前回記事のあらすじ
才能とは、努力の継続から得たスキル、知識のことである。
新年の目標を達成する確率はわずか8%。
人間は本能的に、目先の利益を最優先し、将来起こる不利益、もしくは利益を過小評価してしまう。
その性質から、目標に向けて努力する過程で目前の誘惑に負けて挫折してしまう。
なので、人間は元来、コツコツ努力することに向いていない。
このあらすじを踏まえて、努力の継続のために"意志の強さ"がどれくらい必要なのか、本記事で解説していきます。
今回ご紹介の本ももちろん
佐々木 典士著「ぼくたちは習慣で、できている。」ワニブックス出版 です。下にアマゾンのリンクを張っておきます。
意志の強さ、意志力とは?
努力の継続に対して、”意志の強さ”がどのように影響を与えるのか理解する前に、”意志の強さ”が何なのかを理解する必要があります。意志の強さを測る実験として、有名なマシュマロ実験があります。
マシュマロ実験
園児に対して行われた有名な実験です。実験はこんな感じです。
テーブルにマシュマロが一個ある
A. 食べずに20分待てればもう一個マシュマロがもらえる
B. 20分待てずに食べてしまえば、その一個だけ。
待てた平均の時間は6分。2/3の園児が待てずにマシュマロを食べてしまったそうです。面白いのは、その後の追跡調査の結果です。長く待つことができた園児は日本でいうセンター試験のような試験の結果が、待てなかった園児と比較して200点近く高かったそうです。さらに、学生時代も充実しており、より高い収入の仕事に就けたそうです。健康状態もよく、薬物乱用のリスクも低かったそうです。
意志の強さを示した園児たちは、その後の人生も辛抱強く努力を続ける傾向があることが、この実験から分かります。
意志の強さは生まれつき?
マシュマロ実験で待てた園児は、生まれつき意志が強かったのか?実はそうでもないそうです。我慢するために”意志力”を使うそうなのです。この”意志力”の存在を明らかとするため、ラディッシュテストという実験が行われたそうです。大学生の被験者を集め、3つのグループに分けました。そして、それぞれ別の部屋に通されました。その部屋では
1. 部屋にクッキーが用意されている
2. 部屋にクッキーとラディッシュが用意されているが、クッキーを食べないように指示される
3. 何も用意されていない
この条件で部屋で待機してもらい、この後、さらに別の部屋に移ってパズルを解いてもらいます。このパズルは、絶対解けないようにできています。つまり、”答えが出ない中で、どれだけ粘れるか”を試されていたのです。すると1, 3のチームはギブアップまでに平均で20分粘った一方で、2のチームは平均で8分しか取り組むことができなかったのです。
結論として、クッキーを我慢するのに意志力を消費していて、パズルに取り組む忍耐がなくなっていたと考えられるのです。残業が続いた際に、浪費や飲酒量が増える体験をしたことはありませんか?ちなみに私は残業が込んでいた時期に、お酒の量が増え、よくラーメンを食べていました。また、そんな時は、些細な人の言動に対してイライラしてしまうものです。残業してまで仕事をこなしているときは、意志力で我慢して働いていることを裏付る行動なのでしょう。
この事実から、我慢すればするほど”意志力”がすり減る。RPGでいうところのMPのようなものだとも考えられます。しかし、これだけでは説明できない事例があるようです。それが以下の事例です。
やらないことで減る意志力もある
しかし、上記の意志力の消費だけでは説明できないことを著者自身が体験しているそうです。それは以下の通りです。
日課のジム通いができなかった→まぁいいや、ラーメンを食べてしまおう→ポテチも食べてしまうか→ダメ押しのアイスクリームも食べてしまおう。
先ほどの事例から考えると少し矛盾が生じます。なぜなら彼は何かを我慢しているわけではありません。それどころか、やりたいことをやって意志力の節約をしているのですから。
このような矛盾をはらんだ”意志力”の決壊は、実は自己否定感からやってくるのだそうです。
我慢ができなかった/目標を達成できなかった時に、自己否定感を感じます。そしてこの自己否定感で人は不安を感じるそうです。この不安を感じるときに、人の意志は弱くなるのだそうです。この現象、科学的にはセロトニンの量で説明ができるそうです。
セロトニンが少ない=不安を感じる→目の前の報酬をとる
セロトニンが多い=安心感を持つ→将来の報酬を待つ
事実、追加で実施されたマシュマロテストでは、悲しい気持ち、楽しい気持ちで園児たちを待たせるなど条件を変えたそうですが、悲しい気持ちでは失敗し、一方で楽しい気持ちだと成功する確率が高かったのだそうです。
やるべきことをやらないと、自己否定感を感じ、そして不安を感じ、目先の報酬(つまり体に悪いことや無駄なこと)をとってしまう。そしてそれが自己否定感につながり・・・という悪循環に陥るのだとか。そうならないためにも、コツコツやることをこなして自己肯定をしながら、生きていきたいですね。
マシュマロ実験の結論、結果の成否は先天的なものか?
実は、マシュマロ実験の成否は、工夫次第で変わってくるそうです。事実、マシュマロをトレーで隠したり、注意をそらせたりすると、待てる時間が伸びたそうです。待てなかったほとんどのケースでは、マシュマロを見つめたり、においを嗅いだりと、マシュマロに注意を向けていたそうです。つまり、どれだけマシュマロから誘惑されたのかが成否を左右したらしいのです。なので、例えば、マシュマロを雲だと思ってみたり、これは偽物だと思ったりするだけで成功確率がぐっと上がるのだそうです。つまり、人間の意志は、生まれつき"強い"、"弱い"が決まっているのではなく、誘惑から気をそらす工夫によってコントロールができるということがわかります。
意思が強い人、実は誘惑されていなかっただけ!?
ドイツで行われた実験で、人が一日にどれだけ誘惑されているのかを以下のように調べたそうです。
1. 1日7回、被験者に持たせたポケベルを鳴らす
2. ポケベルが鳴った時に、自分がどんなことに誘惑されていたのかを報告してもらう。
誘惑の内容は例えば、"もっと寝たいけど起きなきゃ"、"遊びたいけど仕事しなきゃ"、"食べたいけど我慢しなきゃ"など様々だった。
結果、平均して被験者は一日に4時間、何らかの欲望に逆らっていたそうです。1日8時間寝るとすると、活動時間の1/4は何かに誘惑をされているわけです。非常に長い時間だと思いませんか?
そして、実験から”意志力が強いと思われていた人は、実は誘惑をされている時間や回数が少なかった”ということが分かったのです。
この結果から、誘惑(やるか、やらないかの葛藤をする)に悩まされないようにする簡単な方法は次の通りです。”やるか、やらないか”を自分の意思決定で決めるのではなく、”自動的にやるべき行為をやってしまう仕組み”を作ることです。やはり好ましい生活を続けるには、習慣を身に付けることが大切だということが言えるのです。
第1章 まとめ
1. 人には目の前の報酬を過大評価し、将来の報酬を過小評価してしまう。
2. マシュマロ実験で、最後までマシュマロを待てた幼稚園児は、将来的に収入や人望が高く、健康的な人生を送ることができていた。
3. 意志力は、何かをすれば減るものではない。自己否定感、不安などによって減る。
4. 意志力が必要とされる場面でも、自己肯定感が高ければ減らない
5. 意志力が強いと思われる人は、そもそも誘惑されていなかった
6. 誘惑を断ち切るには、意志の力を使わず、習慣というシステムを使うべき
次回の記事は、”習慣”とは何か、そしてその”習慣”が持つ力に関して解説していきます。意志が弱くて悩みがある方、習慣の力を身に付ければその悩みは克服できるのです。興味のある方は、次回もぜひ読んでみてください!