サイクルロードレースの魅力
「サイクルロードレースの観戦が好きだ」と一口に言ってもいろいろな観戦の仕方がある。世界のトッププロが集う国際ロードレースにおいてはトップ選手による高いパフォーマンス、白熱のレースが好きという人もいるだろう。またひいきにしている選手、チームにフォーカスした応援、楽しみ方というのもあるだろう。
僕にとっての観戦の楽しみとはなんだろう。そう聞かれたら僕は「景色と暮らし」と答える。自転車ロードレースは1日のレース距離が200kmを越すものも多く、その日数もグランツアーと呼ばれるレースでは最長3週間にもおよび、毎日平均で150kmほどの距離を100人を超える自転車の集団が、平均時速40km近い速度で走り抜けていく。その様子は固定カメラよりも、バイクの車載カメラ、ヘリコプターなどにより世界へ中継される。
僕はそこに映る世界各国の街や人や暮らし、そして風景を見るのが好きだ。凄まじい速度で走る自転車の集団は街からスタートし、平野を抜け街から街へ、そして山岳エリアから街へと風景を変えていく。海外でのレースは平均して5時間ほどワンウェイに近い形で移動を繰り返していくため、その鮮やかな自転車の集団が駆け抜けるその国の、街の風景や郊外の景色を観ているだけで楽しい。
同じヨーロッパと言ってもイタリア、スペイン、フランス、そしてベルギーやオランダ、それぞれ町や家の有り様、周辺の畑で育てられている作物にも違いがある。やはりそこにはそこにしかない文化にや風土に基づいた暮らしがある。観光旅行で行くことはない様な片田舎の小さな街に、その日、自転車レースがやってくる。その瞬間はあっという間にすごい速度で通りずぎて行く自転車の集団の速度に熱狂し、人々は声援を送りながら、そこに暮らす人たちは街を飾り、喜びや楽しさを様々な形にして表す。それは多分、選手達、世界中で観戦してくれる人たちへの「敬意」であり「おもてなし」であり、自分たちの暮らす場所への「誇り」であり「喜び」なのだ。
ロードレース観戦は長く真剣に観戦しようと思えば根気がいる。もちろん勝負所に差し掛かったレースは面白い。けれど僕が楽しみにしているのはそうした自分が訪れることがない、僕の知らない世界の広さと、そこに暮らす人たちのあり様なのだ。世界は本当に広く、そこにはヨーロッパであれ、日本であれ、多様な人が暮らしており、その暮らしはとてもユニークで、豊な文化と誇りによって支えられている。
一昨日からルーマニアで走る中根英登選手の活躍を通じ、僕はこれまで見ることのなかった、「ルーマニア=お城?ドラキュラ?」くらいしか知ることのなかったその土地の暮らしを擬似体験し、そこにあるであろう空気を想像する。それはとても、広い世界に対する僕の興味と好奇心をくすぐり、満たしてくれる。
そんな世界の広さとユニークさを知るためのきっかけとして僕にとってのサイクルロードレースは存在する。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?