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10分で忘れられても悲しくないよ!〜認知症のアレクサ活用術【3】

10分前のことさえも忘れるようになったmy母(84歳)は、これから先、一緒に過ごした時間の思い出を楽しむことができなくなるのか!?そんな危機をあの手この手で乗り越えたという記録です。

初めて忘れられた日は大ショック

My母(84歳)がアルツハイマー型認知症と診断されてから4年が経ちました。薬を飲んだか忘れた、から始まって、予定を忘れ、様々な出来事を忘れるようになりました。

最初にショックを受けたのは、2年前のこと。My母はかつて美容師だったので、若い頃の記憶を呼び覚ませば脳の刺激になるかもしれないという期待を込めて、my母宅に泊まったある夜にヘナの髪染めをやってもらいました。緑色の粘土のようなヘナ剤を私の頭上にべっとりと塗りたくり、「宇宙人みたいだね!」「ワレワレハ・・・」などとふざけて二人で大爆笑しました。翌朝「昨日は髪染めありがとうね!」と伝えると「え?覚えてないよ」と。脳の刺激どころか、あんなにも笑った記憶が一晩で消えるとは・・・
最初それはとても辛いことでした。この先、ずっとこのような調子で新しく過ごした思い出を共有できなくなるのかと。

日常生活にはもっと変化がありました。ご近所さまと話している姿を見かけたので「さっき◯◯さんとおしゃべりしていたね」と伝えても「そうかな?覚えてないね」と。その忘却の速度たるや!

その姿を見ているうちに感じたのですが、「覚えていない」というのは、要するに瞬時に過去が消え去り、「今」だけを伴っているのだということ。今視界に入るものの瞬間だけをまとって生きるようになったのだと解釈しました。
そのため少しずつ、「今しかないのだから当たり前」と受け取る側としても開き直れるようになってきました。

「感情の塊」も思い出のうち

その後に徐々に気がついたのですが、「今だけで生きている」とはいえ「過去はなかったこと」ではありません。はっきり思い出せないものの、「何か楽しかった気がする」という感覚はmy母の中に残っていることに気がつきました。
「なんか笑ったような気がするけど、夢かと思っていたよ」とよく言います。また同様に「何か不快だった気がする」という感情も残ります。

このように「感情の塊」みたいなものが残るとすれば、それは本人が言語化やビジュアル化できなくても「思い出」なのではないか。だから、my母が思い出の詳細を語れなくてもがっかりしなくてもいいのです。

「今」だけを生きていて、感情の塊は残る。

そのことに気が付いてからは、一緒に笑ったことがあったときに、my母の様子が明るければそれでよい、と思うようになりました。
それだけでもコミュニケーションに問題はなかったのです。が、あるとき使ってみたアレクサのある機能が、とてもよい効果をもたらしたのです!

アレクサで記憶を補完する

Echo Show(アレクサ)は、my母の視界に入るテーブルの上に常設してあり、既に登録写真がスライドショーになるように設定しています。なので、数秒おきにAmazon photoに格納してある画像がスライドショーで映ります。家族の写真、ペットの写真など、my母が大事にしていそうな画像を格納してありました。

移り変わる画像を見て、そうかこのスライドショー機能を使えばいいのか!と気がつきました。
ずばり、“その日に過ごした記憶を定着させる作戦”です。

一緒に過ごした日は数枚写真を撮ります。一緒に笑っていたり、店の背景がわかるなど、よいものを1枚、多くても2枚ほど選び、my母のiPhoneに自分のiPhoneから画像転送。新しい写真がAmazon photoに同期されているのを確認。そうすると、Echo Show(アレクサ)に自動転送されます。

My母宅を離れて1時間後くらいに帰宅し、電話をかけて「今帰ったよ!今日楽しかったね!」と伝えると「会っていたっけ?」との返事。ほらきた!と、すかさず「とりあえず、“アレクサ、写真見せて!”って言ってごらんよ」と伝えます。するとmy母が狐につままれたように「アレクサ!写真見せて!」と唱えます。1秒後、「ああ!!これは一緒に行ったね!」と歓喜の声が。大成功でした!

1日中、定席で座っていることが多いので、スライドショーの画像は頻繁にmy母の目に入ります。その効果で、1ヶ月前に親戚が訪ねてきたときのことも、まだ覚えています。親戚と写っている画像を表示させる前は「親戚来たっけ?」と言っていたのに、です。

冊子のアルバムよりこの機能の良いところは、本人の見る意志がなくても思い出が目に入ることにあります。アルバムを作って置いておくこともありましたが、そのうちアルバムを手に取らなくなります。「アルバムを手に取る」という行為を忘れるのです。だからこうして「視界に入るところに、思い出がひとつずつ現れる」というのは認知症のmy母にとって、とても便利な機能なのです。ほんと使えるなあアレクサ!

※my母が使っているのはEcho Show 8の第1世代です。
当時、第2世代を買おうとしたところプライムセールで安くなっていて、スペックの違いが気にならなかったため、ラッキーでした!




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