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使える。香りのハナシ。
帰り道、ふと金木犀の香りを感じ、ココロが華やいでじんわりと暖かい気持ちになりました。秋も深まってきましたね。
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道端に漂う香りで四季を感じられるって豊なことだな~。と思いふけり…
香りへの好奇心がムクムクと沸いてきましたので、記事にしてみます。
この記事では、”香り”を理解しつつ、”香りの意義”を考えます。
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01)香りの認知【嗅覚と情動の関係】
香りを理解する上で、まずは嗅覚を捉えたいと思います。
『嗅覚』
においに刺激されて起こる感覚。揮発性物質または水溶性物質が嗅覚器官の感覚細胞に化学的刺激を与えることで生じる化学感覚。嗅感覚。嗅感。
嗅覚を説明した文献やサイトは数多くありますが、他の五感との違いを明確にするとしたら、脳内の情報処理が独特ということ。
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例えば、視覚と嗅覚の脳内における情報処理をざっくりと比べてみます。
▼視覚
情報を最初に知覚するのは「視床」
その後、理性を司る「大脳新皮質の後頭葉」で情報処理され
情報の種類別に「大脳皮質の頭頂葉・側頭葉」で行動変換。「大脳辺縁系の海馬」で情報記憶を行う。
▼嗅覚
情報を最初に知覚するのは感情を司る「大脳辺縁系の偏桃体」
その「偏桃体」で即時的に情動処理
その後、「偏桃体」→「視床」→「大脳新皮質の前頭葉」で香りの認知。「偏桃体」→「視床下部」で自立神経の調節を行う。
嗅覚以外の五感は、視覚のように「視床」→「大脳新皮質」の経路で、知覚→認知処理された後に行動や記憶に変換されます。
嗅覚は、最初に知覚した時点で直接的に情動処理され、その後に香りを認知するという順番。
この独特な情報処理により、嗅覚は本能直結の刺激と言われたりします。
香りが情動(感情)と、密接な関係であるのは明らかですね。
02)香りの研究【アロマコロジー】
香りによって、意識よりも先に感情反応が出たり、自律神経の調節を行うことが分かりました。
では、香りをうまく使えば、感情や自立神経を意図する方向へ導くことができるということです。
そのような研究全般を「アロマコロジー」と呼びます。
『アロマコロジー』
芳香心理学。香りが人の心理に与える、ストレス緩和、リラックス、眠気をさます、などの効果の研究。
近年のアロマコロジーの論文から、面白いものをご紹介します。
■脳への影響
香りが脳機能へ与える影響を「覚醒」と「鎮静」に区分したものがこちら。
朝と夜の香りを使い分けたら効果的かもしれませんね。
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■自律神経への影響
自立神経とは、意志によらず内臓の動きなどをコントロールしている神経のことですね。
自律神経系は、交感神経系(活動状態)と副交感神経(休息状態)で成り立っています。
コーヒーの香りの種類で、どちらの神経系へ有効に働くのか調べた研究がありました。
✓ ローストタイプコーヒーの香りでは、心拍数が減少(副交感神経系)
✓ バニラタイプコーヒーの香りでは、心拍数が増加(交感神経系)
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コーヒーの香りで自律神経へアプローチできるなら、これは試してみたい⤴
■痩身効果
香りによって、体内脂肪を分解しBMI数値が改善した研究もありました。
✓ グレープフルーツの香り:脂肪分解促進・体温上昇・摂食量減少
✓ キイチゴの香り:脂肪分解促進
✓ 金木犀の香り:摂食量減少
グレープフルーツのダイエット効果は有名ですが、飲用効果と捉えていました。香りでもその恩恵があるようです。
03)香りの意義とは
香りの認知的側面と実用性を理解した上で、最後に香りの意義を考えてみます。
先日、ノスタルジーの原理を記事にしました。
そこで、ノスタルジーのトリガーにも触れましたが、”香り”もトリガーになり得ると思うのです。
当時使っていた香水に触れた途端に、あのころの感情が蘇ることがあります。
先日、ドン・キホーテで学生時代に使っていた”ESCADA”を試してみて、強めのノスタルジーを体感しました。
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そう考えると、香りに”思い出”や”気持ち”を乗せて記憶できるということでしょう。
それは、自分にとっても相手にとっても。
例えば、大事なプレゼンやmtgがあるような、ONの場面で身にまとう香り。
家族やパートナーとの楽しむ日など、OFFの場面で身にまとう香り。
あらゆるコミュニケーションの場面で、香りを通して自分の存在を印象付けて、自分と、そして相手の記憶に残すことができるということ。
言い換えると、「香りはアイデンティティ」にもなる。
今回の思考では、こう結論付けたいと思います。
■あとがき
「香りに哲学を持つ人」
そういう人は、自分にも人にも気遣いを持って生きている印象があります。
私自身もそうありたい。
香りに対する哲学を少しづつ積み上げて、いつか人柄として香りが滲むような、そんなかっこいい人になっていきたいものです。
最後までお目通しいただき、ありがとうございました。
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