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生徒たち自身が想像以上の成長を生み出した探究授業の設計と結果を振り返る

代表の空田(そらた)です。ヤングダボスのOne Young World Japanの理事のお仕事で、福岡にある女子高の福岡雙葉高校にて半年間に及ぶ探究学習の授業を担当しましたが、彼女たちの成長に結構な衝撃を受けたので、プロジェクトの設計とその結果について振り返ります。

福岡雙葉高校は日本の名門校を紹介するTV番組「THE名門校」にも取り上げれられるような福岡を代表する私立女子高です。

今回担当したのはGlobal Leader(GL)コースの1年生約45人に対しての、2・3学期の探究学習の授業全8回+オフィスアワー6回(オンライン相談会)でした。※授業各回100分、オフィスアワー各回約90分

One Young World Japan(OYWJ)のメンバーとしては、プロデューサーをOYWJ理事でグローバルリーダー育成事業をされているCURIO Japanの今西さん、プログラムリードをOYWアンバサダーで次世代リーダー育成事業をされているMIRAIingの池上さん、そして全体設計とディレクターを空田が担当しました。

■授業が終わったときに私たちが感じたこと

2022年3月10日よく晴れた小春日和に、高校の大講堂で最終プレゼンテーション大会が行われました。テーマは「日本の若者の投票率をあげるには?」「日本に寄付文化を根付かせるには?」の2つのテーマいづれかについて10チームが日本語もしくは英語にてグループ発表を行いました。

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最終発表が終わり、理事長室でOYWJのメンバーと先生たちみんな「ここまで成長するとは、ほんと想像以上ですね!」と口を揃えて言っていました。プロジェクトの途中までは、コロナの影響やテストなどもあり、間に合うかすら不安なチームもありましたが、環境が整いチームの中で今取り組んでいることが自分事化し、火のついたときに自分たち自身でどんどん調べて学び、それをアクションに起こし、やりたいことを先生たちにどんどん伝えて、それを先生たちも応援する。この生徒発信のサイクルがぐるぐると回ると生徒たちの成長は非連続の成長をするんだなと実感しました。

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■授業設計で大切にした5つのこと

空田が代表をしているLiCで子どもたちと学びを創るときに大切にしていることが5つあります。「①試行錯誤と工夫」「②安全基地」「③大人の背中」「④多様な視点」「⑤コミュニティを育む」です。
今回の授業設計をこの5つ視点に沿って、下記にて整理していきます。

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①試行錯誤と工夫
内発的動機づけによる生徒たちの試行錯誤が生まれる環境を、私たちがどう設定していくかが、生徒たちの学びの促進に向けて大切と考えています。

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生徒たちが試行錯誤してでもやり抜きたいという憧れを設定できているか。
今回はヤングダボスOneYoungWorldの年次サミットに関連して世界初で開催されるStudentPitchへの登壇が優勝者に約束いたしました。
①-2 
半年という長い授業期間で、試行錯誤の連続に耐えうる答えの決まっていない大きな問いの設定になっているか。
今回の授業はアウトカムを「主体的に社会参加する志の土台を作る」と設定したため、「若者の投票率の向上」「日本に寄付文化を根付かせる」の2つの問いを設定しました。
また、問いへの足場と見通しを固めるために、授業ではフレームワークの提供と発表、オフィスアワーでは進捗の確認を実施するようにしました。
①ー3
試行錯誤と工夫が深まる仕組みになっているか。
グループワークによるプロジェクト型学習を取り入れ、ワークを各授業内で多く活用し、授業外でも少人数で質問や相談ができるオンラインオフィスアワーを各授業の合間に設定しました。   
①-4
試行錯誤を見える化し、継続をサポートできるツールがあるか?
授業の前後に個人・プロジェクト・チームの軸で記入できる目標シートを作成し活用しました。

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②安全基地
失敗がつきものの挑戦や試行錯誤に取り組むにも、まずは心理的に安心できる環境つまりは安全基地が必要です。
しかし、私たちは外部の人間のため、どうしても関係性を築くのがとても難しいの事実です。
そのため、この点に関しては、先生方に助けていただきました。生徒たちが「模擬選挙の案内をするのに校内放送を今日使いたい」や「市の選挙員会に話を聞きたい」などの要望を、常に大きな気持ちで受け止め、実現に向けて応援されていたのがとても印象的でした。
私たちとしては、そんな先生方と各授業の打合せだけでなく常に連絡を取り合い、状況をできるだけ把握することに努めました。

③大人の背中
私たちは、実際に社会で楽しんで活躍している大人たちと触れ合い、対話することで、生徒たちの学びはより深まると考えています。
OneYoungWorldが全世界に持つ13,000人以上のヤングリーダーのネットワークを活かしたアンバサダートークや、講師が持つ独自の繋がりを活かしたプレゼンテーション講座を実施しました。
・アンバサダートークvol.1
  WORLD ROAD共同創業者 市川太一氏
  WORLD ROAD共同創業者 平原衣文氏
・アンバサダートークvol.2
  mymizu共同創業者/一般社団法人Social Innovation Japan代表理事
  ルイスロビン敬氏
・プレゼンテーション講座
  外資系IT企業 長谷川圭介氏

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④多様な視点
生徒たちにはそれぞれ多様な特性・個性があり、学び方も様々です。
そのため、質問中心のアンバサダートークや、少人数で話せるオフィスアワーを実施いたしました。また、プロジェクトそのものを多様な視点で見取ることができるように、授業でフレームワークの提供と実践を取り入れました。

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⑤コミュニティを育む
これからの社会で、誰とも何とも繋がらずに生きていくことはほぼ不可能です。21世紀型スキルでも謳われているコミュニケーション力とコラボレーション力を学び、多様な人々とコミュニティを育むことが大切です。
そのため、グループで行うプロジェクト型学習を取り入れ、さらに生徒同士のピアフィードバックをする機会と時間を設けました。


■生徒のアンケートをもとに5つを振り返る

最終日のアンケートの一部回答を上記の5つのことに振り分けてみました。
※「②安全基地」については主に先生方が担ってくださったので省きます
※アンケート結果は満足度平均4.72点、成長を実感4.69点でした(5点満点)

①試行錯誤と工夫
・「長期間プロジェクトで、大変なことがあった反面、すごい達成感を味わうことができた」
・「どんどんチャレンジしたいという願望が生まれて実際に色々なことに挑戦しました」
・「最後まで諦めずに本気ですることができた」
・「一つのことを追求し取り組み続ける楽しみを知り前より継続的に取り組むことができるようになりました」
・「途中挫折しそうになりましたがやり抜くことができました」
・「行き詰ったら的確なアドバイスをいただけることのありがたさを実感」
・「単純な発表ではなく、社会のための活動を目標に発表したせいか、知識的にも大きく成長しました。

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③大人の背中
・「本当に楽しくて毎回の活動が本当に学ぶところだらけで、アンバサダートークでもうこういう考えがあったんだと知ることができました」
・「今西さんからご紹介いただいた『アイデアの力』をよんでみた」
・「専属の先生方から直々にアドバイスを頂くことで、更に考えが深まった」
・「いろんな人のプレゼンを聞いて学べることが多かったから」
・「プレゼンの仕方や言葉の作り方、調べ方など、将来に使える事を教えていただけました」

④多様な視点
・「いろんな考えに触れることができた」
・「一人ではつながることのない方から様々なことを学べた」
・「新しい視点を得ることが出来たから」
・「コンペは入賞することは叶わなかったけど、「負けた」のではなく「学べた」と思いました。そのような考え方ができたのも初めて」
・「色々な方のアンバサダートークも聞けて光栄でした」
・「今までになかった様々な視点から考えることができ、多くのことに気づくことができました。何より今までした活動の中で一番楽しかったです」

⑤コミュニティを育む
・「最初はどうなるか不安でしたが、最終的にはみんなで協力して自分たちの努力を精一杯だせた」
・「グループで活動することの難しさを痛感したと同時にグループでの役割などを考えるなど成長することが多かった」
・「メンバーと一緒に様々な活動をしながら実際に何かを達成して発表する時間がとても大事でよかったです」
・「今までのみんなの頑張り、努力が実って、今回のプレゼン発表を達成できたのが嬉しかった」
・「チームのみんなと力を合わせて最後までやり遂げることができた」

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■授業全体を振り返って

火のついた生徒たちの成長は大人の想像をはるかに高く、そして速く越えていくと痛感した授業でした。
冒頭にも少し記載しましたが、途中までは試験やコロナの影響などで少し心配をしていました。しかし、最終プレゼンテーション大会前のオフィスアワーでの発表を聞き、その心配が一気に吹き飛ぶくらいの成長を見せてくれた衝撃を今でも覚えています。
生徒たちの好奇心に寄り添い、環境さえきちんと整えれば、生徒たちは自分の力で学んでいくし、今の社会はそれを可能にしているんだなと思いました。
そして、本気で楽しんでいる大人との対話によって彼女たちは成長するのもとても実感できました。
やはり、オンラインだとしてもインタラクティブな関係は人の学びに本当に大切だなと改めて思いました。

そして最後に、今回この授業を一緒に作り上げてくださった、福岡雙葉高校の清水先生、都留先生、谷口先生、ありがとうございました。ご一緒できてとても楽しかったです。

※撮影時のみマスクを外しております。

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