一緒に来たことが話題になってるよ/青春物語24
いつの間にかカラオケ大会になっていた。
101号室にて、購入したばかりのカラオケセットで毎晩みんなが歌っていると言う。
「いちご白書をもう一度」の前奏が流れてきた。
いつか君と行った 映画がまた来る
授業を抜け出して 二人で出かけた
君もみるだろうか「いちご白書」を
二人だけのメモリー どこかでもう一度
荒井由実 作詞・作曲
「古賀主任って結構、上手だね」
私は今歌っている古賀主任を見ながら、缶ビール片手にそう言った。
「なんかフォーク全盛期で育ったらしいよ」
天野ちゃんが笑いながらそう言った。
「なんか突然来ちゃって泊まらせてもらうのも図々しいよね」
「いいんじゃない?先輩も快くOKしてくれたんだし。それよりも永尾さんと来たことが話題になってるよ」
「やっぱり?」
「永尾さん、二人はどう言う関係だ!ってみんなに飲まされているもん」
「誤解されて悪かったな」
「でもさ、そんな事わかりきって一緒に来たんだから永尾さんも満更でもないんじゃない?」
泣きながら電話をかければ ばかな奴だとなだめてくれる
眠りたくない気分の夜は ものがたりを聞かせてくれる
わたしみんなきづいてしまった しあわせ芝居の舞台裏
電話してるのは私だけ あの人から来ることはない
中島みゆき 作詞・作曲
社内恋愛と言う萩原さんの彼女の青井さんが(しあわせ芝居)を歌い終わって、私たちの方へ来た。
「話がはずんでいるみたいね」
「うん、桜田ちゃんと会うのは久しぶりだから」
天野ちゃんがそう答えた。
「突然来て本当にすいません。しかも図々しく泊めてほしいだなんて」
「いえいえ。こんな事、滅多にないもんね。永尾くんと付き合ってるの?」
「違います、違います。仲良くしてもらってるだけです」
「最近、萩原さんに気になる子がいるって言ったらしいけど桜田さんのことかな?」
「まさか…同じ部署の人のことじゃないですか?」
私は頬が赤くなるのを自分でも感じた。
素肌に片袖 通しただけで 色とりどりに 脱ぎ散らかした
床にひろがる 絹の海
貴方を愛した はかなさで 私はひとつ 大人になった
ああ…夢一夜 一夜限りで醒めてく夢に 身をまかす
阿木燿子 作詞/ 南こうせつ 作曲
「夢一夜」が聞こえてきていた。
もう一人の同期、大川ちゃんが歌っていた。
「私も夢一夜かもしれない」
小さな声で私はそう呟いた。
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