7/14「サイエンスZERO」に訳書『悪魔の細菌』の原著者お二人が登場予定!
2024年7月14日放送のNHK「サイエンスZERO」に、訳書『悪魔の細菌 超多剤耐性菌から夫を救った科学者の戦い』(中央公論新社)の原著者ご夫婦が登場予定です。
番組情報
NHK サイエンスZERO
薬剤耐性菌への切り札!? 最新医療“ファージセラピー”
初回放送日:2024年7月14日
番組予告編
こちらの予告編には、妻ステフ(ステファニー・ストラスディー)さんの奮闘により生還した夫トム(トーマス・パターソン)さん(「パターソン症例」の患者ご本人)の姿が。
どんな本?『悪魔の細菌 超多剤耐性菌から夫を救った科学者の戦い』
概要・あらすじ
『悪魔の細菌』は、研究者である著者2人の実体験によるノンフィクション。
熟年再婚カップルのステフとトム。研究者として多忙な日々を過ごす中、待ち望んだ水入らずのエジプト旅行が夫トムの体調不良によって一転した。ウイルス感染症を研究していた2人は、「恐れるに値しない」はずだった細菌——アシネトバクター・バウマニ——の感染症当事者となる。
本の魅力①スリリングな展開の実話
本書はなんといっても、ページを繰る手が止まらない本。訳者である私は原書を人から紹介していただいた。私は英語の本を読むのがかなり遅いほうなのだが、一週間ノンストップで読み続けて読破してしまい、その勢いで出版社さんに企画を提案した。
原書を読んだ人々が小説だと誤解したほどのスリリングかつ劇的な展開は、「医療スリラー」とも評されるほど。
そのため、原書のタイトル末尾には「Memoir〔回顧録〕」の語が添えられ、カバー見返しや本文中には原著者たちの写真が満載された。謝辞に並ぶ数えきれないほどの人名も、この戦いが事実であったことをありありと物語る。
本の魅力②詳細&繊細な描写
専門家として公的に感染症に向き合っていた2人が、突如、感染症ときわめて個人的な戦いを強いられる。その過程は既存のルール、固定観念、文化の壁など、社会の枠組みとの闘いでもあった。
夫トムが昏睡状態に陥り、治療の手立ても尽きる中、妻ステフは「科学者の私」と「妻(=個人)の私」の間を彷徨いながら道を切り開く。
視覚的な記憶の細かさや、言葉から広がる連想など、妻ステフ(ステファニー・ストラスディーさん)の思考・文章の個性も本の魅力の一部になっている。
ファージ療法(ファージセラピー)って?
研究を通じてウイルスこそ真の敵だと感じていた妻ステフ。しかし、夫トムを死の淵へと追い込んだのはウイルスではなく細菌の感染症だった。
論文を読み漁り、「悪魔の細菌」への対抗策を探す中でステフが巡り合ったのは、なんと他でもない、敵であったはずのウイルスを使った治療法だった。
特定の細菌を宿主として増える「バクテリオファージ」と呼ばれるウイルス群の中から、夫トムの感染した多剤耐性菌を狙い撃ちするものを見つけ出し、夫の体内へと送り込む。この「毒をもって毒を制す」作戦こそ、過去に注目されながらさまざまな理由で忘れ去られていたファージ療法(ファージセラピー)である。
その後の展開&本の情報
パターソン症例とファージ応用研究
『悪魔の細菌』の副題は「超多剤耐性菌から夫を救った科学者の戦い」。妻の奮闘と国境・機関の壁を超えた人々の協力により、夫トム(トーマス・パターソンさん)は緊急承認の下りたファージ療法(ファージセラピー)を受け、死の淵から生還を果たす。
その症例は「パターソン症例(Patterson's Case)」として知られ、さまざまな分野から注目されている。
原著者のお一人、ステフ(ステファニー・ストラスディー)さんは、所属するカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)でバクテリオファージの応用研究センターiPATHの設立・運営に携わる。
また、日本でも研究チームや研究会が運営され、医学、獣医学、農学などの多分野で研究が進む。抗生物質に頼らない感染症治療・予防法として、家畜やペットの健康維持にも応用が見込まれている。
本の情報 『悪魔の細菌 超多剤耐性菌から夫を救った科学者の戦い』
『悪魔の細菌 超多剤耐性菌から夫を救った科学者の戦い』(中央公論新社)
ステファニー・ストラスディー&トーマス・パターソン著、テレサ・H・バーカー 執筆協力、坪子理美 訳
初版刊行日:2021/2/24
ISBN:978-4-12-005403-7