(#25)凍結肩における痛みと可動域の関係—麻酔前後の変化を探る
【是非こんな方に読んでほしい】
凍結肩(フローズンショルダー)の治療に関わる医療従事者、理学療法士、整形外科医。また、肩の痛みと可動域に関する理解を深めたい方や、凍結肩におけるリハビリテーションや治療の効果を評価したい方に有用な内容です。
【論文内の肯定的な意見】
麻酔を用いた肩の可動域(ROM)の変化が明確に示され、痛みと筋収縮が可動域制限に与える影響を評価できる。
麻酔後の可動域の改善に基づくリハビリテーションの導入が、効果的である可能性を示唆している。
【論文内の否定的な意見】
麻酔を使用しない場合、痛みによる可動域の評価が困難であり、臨床現場でのROM測定の標準化が難しい。
本研究は麻酔を使用した比較的短期的な評価に限られており、長期的な効果や予後に関するデータは不足している。
論文の要約
Background
凍結肩(フローズンショルダー)は、肩の痛みと可動域制限を特徴とする筋骨格疾患であり、発症率は3〜5%と報告されています。主な原因は、肩関節包周囲の滑膜炎と線維化で、多方向にわたる可動域の制限が見られます。凍結肩の診断や治療においては、痛みの評価とROMの評価が重要ですが、痛みや筋収縮により正確なROMの測定が難しい場合があります。本研究では、麻酔を使用して肩のROMを測定し、痛みや筋収縮が可動域に与える影響を調査しました。
【過去の報告】
- 全身麻酔下で肩の可動域が著しく改善したことを報告(Hollmann L et al.,2018)。
- 凍結肩におけるROMと肩関節の構造的要因との関連を調査しましたが、痛みとの関連性は見出せませんでした(De Baets L et al.,2020)。
Method
本研究は、54人の凍結肩患者(男性17人、女性37人、平均年齢55.6歳)を対象に実施されました。平均罹患期間は6.6ヶ月でした。凍結肩の診断基準は、患側の肩関節外旋(ER)の可動域が健側の50%未満であることとしました。外傷、手術歴、炎症性疾患を持つ患者は除外されました。全患者は、超音波ガイド下での頚神経根ブロックを受け、麻酔効果を確認した後、麻酔前後のROM(前方屈曲、外転、外旋)を測定しました。
【頸神経根ブロックの具体的な部位】
本研究における頸神経根ブロックは、C5およびC6神経根をターゲットとしています。超音波ガイド下で、この部位に局所麻酔薬(ロピバカイン、1%リドカイン、正常生理食塩水の合計10mLずつ)を注射し、肩関節周辺の痛みと筋収縮を抑えるためのブロックを行いました。これにより、麻酔後に肩の可動域(ROM)が改善されるかどうかを評価しました
Results
麻酔後のROMは、麻酔前よりも前方屈曲で21.8度、外転で29.7度、外旋で12.1度向上しました(すべてP < .001)。また、痛みの強さとROMの変化(DROM)には有意な相関が見られ、特に夜間の痛みが強いほど、麻酔後のROMの改善が大きいことが示されました。さらに、罹患期間が長いほど外旋のROM改善が小さいことがわかりました。
【夜間時痛との相関】
夜間時痛は、麻酔前後のROM変化(DROM)と有意に相関していることが示されています。特に、夜間の痛みが強い患者ほど、麻酔後の前方屈曲(FF)、外転(AD)、外旋(ER)の可動域が大きく改善されることが確認されました。具体的には、以下のような相関が見られました。
・前方屈曲(FF):r = 0.51, P < .001
・外転(AD):r = 0.45, P < .001
・外旋(ER):r = 0.39, P = .004
これにより、夜間の痛みが強いほど、筋収縮や痛みによる可動域制限が顕著であり、麻酔後のROMの改善幅が大きくなることが示唆されています。
Conculusion
本研究は、凍結肩患者における痛みと筋収縮が可動域制限に大きく影響していることを示しています。特に、麻酔を用いることで筋収縮と痛みを除去し、正確な可動域評価が可能になります。治療の一環として、痛みを軽減した後に物理療法を行うことが推奨されます。
限界点
本研究は麻酔による短期的な可動域の変化に焦点を当てており、長期的な効果については不明。
痛みとROMに影響を与える他の要因(心理的要因や関節の構造的変化)については調査されていない。
麻酔なしでの正確なROM測定の難しさが残る。
読者が得られるポイント
麻酔後の可動域評価に基づく治療計画の有用性。
痛みが可動域制限に与える影響の理解。
凍結肩の罹患期間に基づいた治療アプローチの重要性。
ブログの要約には間違いや個人的な解釈が含まれる可能性があります。
論文の詳細が気になる方、もっと詳しく知りたい方は、是非論文を一読ください。