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車中泊で紙を巡る日本一周 - 紙が生まれる人・自然・風景に出会う旅 -


中心にある手書きの日本地図には、
旅で巡った約40軒の和紙工房と、約20軒の紙にまつわる場所やお店の名前が書かれています。

『車中泊で和紙を巡る日本一周 - 紙が生まれる人・自然・風景に出会う旅 -』

これは、私が2022年に決行した旅のタイトル。

より、心に響く手紙を紡ぐために、

より、ホンモノにこだわった自然に近いものを、
より、自分の心が動くものを、

探し、触れ、使い、届けたい。

そんな思いで日本一周が始まりました。

そして、お世話になっている高知県の和紙職人さんがおっしゃっていた、

自然素材を使うものづくりは、
自然に寄り添って風土にあった材料や技術が発達している。
だから、ものを見る以上にその土地の風景を感じることは大切。

という言葉を胸に、土地の風景を自分の肌で感じることと、技術だけでなく、職人さんの「生き方」や「深い想い」を聴くことを大切にした【紙の背景を知るための旅】でもありました。

人間国宝 ・岩野市兵衛さん|福井県越前市


沖縄の伝統和紙『芭蕉紙』を手掛ける安慶名清さん|沖縄県那覇市
夕日|沖縄県

和紙職人さんの工房だけでなく、「紙」にまつわるお店や工場、和紙を作るために必要なネリに使われる「トロロアオイ」を育てている農家さんのもとを訪れたりもしました。

全国で唯一「紙の神様」を祀っている岡太神社|福井県越前市
和紙をつくる際の『ネリ』に使われるトロロアオイを手掛ける田上さん|茨城県小美玉市

強い決意

真剣に和紙の世界に向き合うほど、その世界が直面している課題も強く感じていました。

「和紙の好きなところはどこですか?」
「和紙を残すために私ができることはなんでしょうか?」

敢えて、そんなシンプルかつ本質的な質問を、インタビューの最後に沢山の職人さんにお伺いしました。

上田手漉和紙工場|岡山県津山市
薩摩和紙製作所 和紙デザイナー 原口敬子さんの作品|鹿児島県鹿児島市

それぞれの職人さんの答えには共通して、自然であることの意味・手作業であることの意味、そして、その面白さが詰まっていました。

その答えを聞いたとき、私が改めて強く決心したことは、

正しい知識を学び、伝え、直感的に感じる魅力や感動を心を込め、届ける人になりたい。

紙が持つ背景を生かした奥行きのある作品を作りたい。
紙が伝えてくれるメッセージを知ってもらいたい。

“ホンモノ” にこだわった和紙の面白さと美しさを残したい。ということでした。

紙の垣根を越えて


日々の生活費は、道の駅でお得にお野菜をゲットしたり、宿泊費を車中泊にすることでやりくりしつつ、

その土地ならではの食や、美しい自然の景色を感じる場所、地元のおばあちゃん方との交流(銭湯での時間)など、今この瞬間にしか出会えない「人」と「景色」と「感動」に触れることをとにかく大切にした、日本を知るための旅でした。

そして、そのすべてが「紙が生まれる由縁」を伝えてくれるように感じていました。

手紙でしか予約が取れない宿『苫屋』|岩手県野田村
広瀬牧場にて削蹄シーン(牛の爪切り)|北海道帯広市
牛の目から流れる涙が印象的だった。
『バター餅』|秋田県北秋田市
個人的にとっても好きでした☺️

日本一周を決断する背景

「一気に回るという無茶なスタイルをとるよりも、十分な休息をとってエリアごとに期間を分けて旅をしたほうがいいんじゃないか。」というアドバイスをくださる方もいらっしゃいました。

でも、純粋に「日本一周したい!」という想いと、時間的にもお金的にも、一気に回るのがベストである。という状況もあり、

「なぜ日本一周するのか」という目的を事前に何度も考え、はっきりと明確にしたうえで、

大学休学期間中に、日本一周というスタイルで工房を周ることを決意しました。

その背景には、「フランス紙留学」が控えていることも大きな理由としてありました。

クラウドファンディングで資金を集め、和紙を切り口とした「手紙書道展inパリ」を目指し、日本一周と同時に計画を進めていた渡仏。

海外に飛び立つ前に、

「日本のことをちゃんと知りたい。」という強い想いが、この旅の背中を押してくれました。

実際に、日本一周という形をとったからこそ、強く感じられたこともありました。

たとえば「和紙」の比較。

和紙は自然と手作業から生まれていく紙だからこそ、職人さんのお人柄や、その土地の雰囲気を、不思議なまでに “紙からも感じる” ことができます。

そのことが、日本一周という形をとったことで、より比較しやすく、より強く感じることができました。

『十文字和紙職人』佐々木清男さん|秋田県横手市
八女手漉すき和紙資料館|福岡県八女市

そして、旅を通して「紙」のこと以外にもたくさんのことを学びました。

車中泊で学んだあたりまえの有り難さ

生きるうえで大切なこと。

まず、車中泊を通して、当たり前の生活のありがたさを痛感しました。

雨の日には、屋根があるってありがたいと感じたり、ご飯をつくる際には、水道があるってありがたいと感じたりもしました。

北海道帯広市
山口県の道の駅にて車中飯
岩手県の道の駅にてお野菜をお得にゲット。丁寧な車中飯の日。

そして、人のぬくもりを感じました。

心穏やかにいられなくなったことも多くなってしまった現代社会。

悲しいニュースに胸が痛むこともあります。

ですが、

そんな時代だけれど、今の日本にはまだ、「あったかさ」が存在しています。愛に溢れた人がたくさんいます。

そして、

そのぬくもりに触れたとき、自分も人にも優しくなれる。

やっぱり「世界は鏡」なのだという、手紙を通して届けたい事の本質を実感したような旅でもありました。

熊本の銭湯で出会った方がお家に泊めてくださった。
あたたかいごはん、ふかふかの布団、
それがどれほど幸せなのかを身にしみて感じた。
ホルモンうどん「石川屋」|岡山県津山市
ここの雰囲気、とても好きだったな。
お家に招いてくださった方にお礼のお手紙をお渡し。|北海道
ご夫婦の生き方やお人柄が本当に素敵で、今でも心から尊敬しています。

心に刻んだ景色

この旅で、たくさんの景色に出会いました。


銀山温泉|山形県尾花沢市
江口だんご「笹団子」|新潟県長岡市


津軽藩ねぷた村

忘れてはいけない景色も、

東日本大震災・原子力災害伝承館
気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館
気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館にて
ふせんに想い残せるコーナーにて言葉を刻みました。

日本中にできた「また会いたい人」の存在も、

すべてが私の宝物になりました。

なによりも、私は日本のことが大好きになりました。日本ってすごい、と心から思いました。

新潟県南魚沼市

その心を持てたことが、この旅の一番の意義だと思っています。

そして、この学びとの、日本への誇りと愛を背負い、旅から3週間後、次なるチャレンジ「76日間のフランス紙留学」が始まりました。

フランス紙留学について : 原点は忘れられない後悔。「今」だからこそ成し遂げたい大学生の挑戦(現役大学生・手紙書道家  akina 2022/03/18 公開) - クラウドファンディング READYFOR

このクラウドファンディングは、日本一周をしながら進行。旅をしながら、車内でコメントを返し、発信を続け、闘い続けていました。

達成したのは、京都府綾部市で和紙職人さんのお話を聴いた直後。

あのときの感動は、忘れられません。

この記事は、日本一周のほんの一部を切り取ったもの。

この旅に関わってくれたすべての皆さんと、
それを見守ってくださっていたすべての皆さんに、

改めて、心より感謝申し上げます。

本当に、ありがとうございました。

この旅の記憶を糧に、これからも「日本っていいな」を胸に、歩み続けていきます。

手紙のヒト akina |手紙書道家




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